表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【4人の家族編】
24/108

「穏やかな休日。」




ーーー夢を見ている。

水の中を揺蕩うように揺らぐ思考の中、段々と視界に写る色が見えた。


ーーそれは曼珠沙華だった。

光溢れる田んぼの隅で見事な程大きな花弁を広げ静かに風に揺れている。それは紅色の絨毯となり涼やかな空気の中、田んぼの縁を見事に彩っていた。


沢山の花が鮮やかな紅色を纏う中一つだけ違う曼珠沙華がいた。無垢な白色をしたその花は、けれど周りとは違うものだった。



どうして、一つだけ違うのだろう?


どうして、自分だけ。



けれど、その問いに答える返事は()()だった。




◇◇◇◇◇




ーー目の縁から涙が一粒零れ落ちる。

何か哀しい夢を見ていた気がするが、それが何か思い出せない。重く沈む思考を振り払うように頭を振ると隣に眠る人が身じろぐ気配がした。


其方へ顔を向けると目覚めたらしい義兄(あに)ーーインディルがまだ寝惚けた瞳で僕を視界に入れた。その様子を見て僕は目元を拭き、微笑む。


「おはよう、お兄ちゃん」


「…おはよう、ノア」


義兄と二人、連れ立って部屋から出る。

彼が家族として家に来た日以来、僕は彼の部屋で夜を過ごすようになっていた。

義父さんとの添い寝を卒業したと思ったら今度は義兄との共寝だ。そうでなくても聖霊の皆んなに赤ん坊の頃、夜は側に居てもらっていたので今世は一人で寝る事がないかもしれない。


そんな聖霊である皆んなが僕が部屋を出たと同時に光に包まれながら姿を現した。ふわふわの尻尾を揺らしながら地に降り立ったカホちゃんが、


「くぅ〜」


と朝の挨拶をしてくれる。

ハレくんは翼を広げて下降するとインディルの肩へ止まり彼のふわふわの髪を柔く突いた。

ナギちゃんが水の球を操りながら僕の頬へ近付くと、ちゅ、と可愛らしくおはようのキスをしてくれる。

そうして今日も一日が始まったーーーー


義兄と二人手を繋いで洗面台に来ると彼が踏み台を用意して僕が洗面台を使えるようにしてくれた。お礼を言い魔石で出した冷たい水でばしゃばしゃと顔を洗う。


タオルで顔を拭くと彼が髪を梳かしてくれた。僕は踏み台に乗ったまま今度は彼の髪を纏め始める。

丁寧に毎日洗いふわふわになった栗色の髪は前髪が長くて目元が隠れてしまう為、僕がお願いしてピンで前髪を上げてくれるようになった。

毎朝、彼の前髪を纏めるのは僕の役目だ。


櫛で丁寧に髪を梳かした後、前髪をかき上げ目にかからないようにピンで止める。すると先程まで隠れていた彼の顔が露わになった。


子供にしては大きな体格の彼だがその顔は年相応に幼い。

まぁ家族以外の人には無表情で接する事が多いから、やっぱり実年齢より上に見えるらしいが……


歳と言えば、8〜9歳に見える彼だが実はまだ6歳らしい。

本当に大人びて見えると言うか……これで僕と2歳しか変わらないってマジですか……



僕の体格は少しは背が高い方だとは思うが、前世の日本人の子供とほぼ変わらないと思う。

……何だか複雑だ。


義兄は小さいと頭を撫でやすいし、抱っこしやすいと言っていた。あと可愛い、とも…。


僕は未だ性差があまり見られない容姿をしている。

男の子と言われればそうだし、女の子だと言われればそう見える。位の顔立ちだ。

一応、髪型や服装は動き易いように男の子に見えるものにしていた。


以前スーザンさんが男女両方の服を用意してくれたのだけれどスカートがまたフリフリの物だったのです……

もっと可愛い子が着れば似合うと思うけれど……僕は、なぁ……


………僕は、どちらの性になるのだろうか。

いや、どちらの性になりたいのだろうか。


4歳だからまだ胸の発達は見られない。

でも二次性徴を迎えたら流石にどちらかの性が顕著に現れてくるだろう。

その時、僕はどちらを選んでいるのだろうか。




◇◇◇◇◇




今日は義父さんがお休みなので義兄と二人、勉強を見て貰える日だ。僕は前世で一応学業は終えている身だし、聖霊の皆んなにこの世界の歴史や文化は最低限教わっているがそれでも知らない事の方が圧倒的に多い。


それは義兄も同じで今は一緒に文字を学んでいた。

僕も本は読めるし言葉も伝わるけれど、勝手に日本語に変換されるのでこの世界の言語を覚えた訳じゃない。なのでしっかり文字を書けるように練習中だ。


「インディル、ゆっくりで良いから丁寧に書いてみなさい。

言葉や文字は誰かに伝える為に発展したものだ。お前の字を読んで喜んだり、逆に貶されたりする要因にもなるものだよ」


「…俺が字を覚えても喜ぶ人は居ないと思う」


「え?何で?僕、字を覚えたら義父さんとお兄ちゃんに手紙を書こうと思ってたよ。

返事、楽しみにしてたんだけど……」


「……書く。返事書けるようにするから、絶対」


「うん!楽しみにしてるね」


そんな僕達のやり取りを微笑ましく見守ってくれる義父さん。

ダイニングテーブルに広がるのは美味しい食事ではなく、教本や紙ばかりだったが子供達は夢中でテーブルに向かっていたーーーー



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ