「光の訪問者。」
わわわ、何これ!?
驚いて手足をパタパタさせながら咄嗟に声を出そうと喉に力を込める。
だが、出たのはあぅあぅという情けない声のみ。くぅっっ言葉すら出せないこの状況が恨めしい…!
そうこうしている内に眩く光が僕を取り囲むように籠の周りに集まったかと思うと、段々と集約していった。
やがて光は浅緑、碧、琥珀色の3つに輝きながら各々姿を形作っていく。
え、何これ宇宙人襲来??!赤ん坊になっただけで衝撃なのにこんなファンタジーな事、一遍に起こるものなの???!
ーーー「くぅ〜」
ーーーー初めに聞こえたのはそんな声だった。
光が収まる頃には、"3つ"は3匹の生き物へと姿を変えていた。
これは…鳶?あ、こっちは金魚だ。このモフモフは…狐、かな?
それぞれ、浅緑が鳶、碧色が金魚、琥珀色が狐へと変わり籠を取り囲んでいた。
……正直、生き物大好きな僕にとってとても素晴らしい光景なのだけれど…光から現れたよね、この動物たち。
突然の出来事に心中大混乱Part2な僕を静かに見つめてくる3匹。
すると、さっき聞こえた声の主だろう狐がそっと顔を近づけて来た。
んん!?待って、僕食べても美味しくないよ!!(多分)生まれて数ヶ月しか経ってないのにもう命の危機?!!?
享年0歳とか本当笑えない!!いや、本当に…!!!
恐怖と諦念にギュッと目を閉じると頬に温かく濡れた感触が。
恐る恐る目を開けると、そこにはドアップな狐の顔があった。
狐は頬をペロペロと舐めると鼻先をくっ付けてまた「くぅ〜」と可愛らしい声を上げた。
こ、これは…僕、生きてる…?パクッと美味しく食べられたりしない??
頬に流れる涙を綺麗に舐め取ってくれた狐は籠の中にするりと入ってくると僕を包むように寄り添ってくれた。
わぁ、尻尾ふわふわしてる…!この子尻尾が1、2……9本ある。九尾って初めて見た。
よく見ると鳶も金魚も襲ってくる気配はない。というか今気付いたけど、金魚は水の球に入って宙に浮いてる……ひらひら揺れる尾びれがとても綺麗だ。紅白の斑模様にスッキリしたフォルムは……コメットっていう種類に似ているかも。
そして鳶は猛禽類だけあって一番恐怖を感じたけれど、よくよく見ればその瞳は優しい。
金色に輝く力強い瞳なのに優しさが伝わってくる。
3匹は各々、僕を見て嬉しそうに声を上げたり跳ねたり舐めたりしてくれた。
なんだか好意を示してくれているみたいだ。その事に気付いて、安堵が胸を満たした。
良かった……食べられる訳じゃなかったんだ。
襲われないと分かるとこの子達への好奇心が湧いてきた。僕に懐いてくれているみたいだけど触っても良いのかな…?
そっと狐の尻尾に触れると、狐は目を細めて受け入れてくれた。
んん〜…っ ふわふわ尻尾気持ちいい〜〜!
ずっと触っていたいかも…
両手で優しく感触を楽しんでいると狐は他の尻尾も揺らしてみせる。
ゆらゆら目の前で揺れる尻尾に思わず、手を伸ばして追いかけてしまう。
そうして暫く遊んで貰っていると次第に眠気が襲ってきた。
身体を心地良い睡魔が襲う。素直に睡魔に従えば、呆気なく僕の身体は眠りへと落ちていった。