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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【4人の家族編】
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「少し、冷たい日。」




今日は朝から雨が降り続いていて、秋の空気を一層冷たくしていた。スーザンさん家の娘さんが昨日から風邪をひいているらしく暫くお休みを取る事になった。

こんな日は家に篭り静かに読書をするか、聖霊の皆んなと勉強するに限る。


僕は家事をさっさと終わらせてしまおうと外の簡易型洗濯機の所まで向かう。

雨位なら守護の加護を自分を起点に範囲指定して掛けられるので濡れる事はないのだけれど、外に出る以上何処で誰に見られるか分からない。


僕は裏口へ行くと傘をさして外へ出た。

でも庭に出る度魔法や加護を制限しないといけないのは面倒だな。


この間光と闇の複合魔法で自身を透明化する事に成功したし、今度認識阻害やカモフラージュの方法がないか、聖霊達と練習してみよう。

そんな事を考えながら洗濯した後、家に戻り火と風の複合魔法で乾燥させ、畳んでチェストに仕舞う。


掃除も今日は風魔法で埃を纏めた後、宙に浮かせ火魔法でボッと燃やしてしまう。

燃えた後の灰を暖炉に入れ、最後に部屋を回り浄化の加護を掛けていく。


よし、これで大丈夫。


お昼は適当にパンを食べれば良いから夕食の準備を先に進めてしまおうか。

今日はスーザンさんが居ない為、手の込んだものや品数多くは作れない。


まだ、1人だと失敗が不安なんだよね。


味付けに関してスーザンさんは分量じゃなくて感覚で伝えてくるから、舌が肥えている訳じゃない自分には丁度良い匙加減というのがイマイチ分からない。


前世で冷めた惣菜やらカップ麺やらレトルトカレーやら食べてたツケが今回って来た感じだ。


……少しは、料理に興味を持てば良かったな。

あの頃はそれよりも日々に一杯いっぱいで料理する体力も気力も湧かなかった。


…前世を思い出して、胸の裡に澱が滲む。

前世の事を考えるとまだまだ後悔や残して来た人達への思慕が癒える事はない。


皆んな……ちゃんと、幸せかな。大変な事があっても笑っていられていると良いな。


もう、皆んなには二度と会えない。その事を未だ受け止め切れていない自分が居る。

目を閉じあの頃を思い出す。

只々不器用で苦手な事が多くて、日々に息苦しさを感じていた皆んなは互いが互いの大切な友人であり、仲間だった。


…もう皆んな、孤独になっていないと信じたい。




◇◇◇◇◇




ーー鍋でぐつぐつとスープが煮える音がする。

野菜と香草が溶け込んだ良い匂いがキッチンに広がる。

外では未だ秋雨が降りしきり周囲の物音を閉ざしていた。


ホワイトノイズだったっけ?

まるで自分1人だけこの町に居るみたいだ。

いや、違うな。3匹と1人だ。


隣に浮かぶ金魚に視線を向け、ふふふと笑う。

ナギちゃんは尾びれをたなびかせ僕の頬にキスをしてくれた。


僕の足元ではふさふさの綺麗な9本の尻尾に顔を埋めたカホちゃんがすぅすぅと眠りに就いている。

寒いのか尻尾に包まるようにハレくんも翼を閉じて身を寄せていた。


もふもふのお団子だ……可愛いなぁ、僕も埋まりたい。

赤ん坊の頃にその尻尾を独占していた僕はその居心地の良さを身を持って知っている。


けれど穏やかに眠っている2匹を起こすのは忍びなく思い、そっと火と風の魔法で周囲を温かくしておいた。


さて、スープを煮込んでいる内にもう一つ作っておこう。

僕は保冷の効いた戸棚の中からお肉を2人分取り出す。


これはスーザンさんが昨日漬け込んでおいてくれていたラム肉だ。

臭み消しに唐辛子、パプリカ、キャラウェイシード、シナモン、ローズマリー、タイム、ニンニク、塩胡椒などの香辛料と

肉質を柔らかくする為、すり下ろした玉ねぎを加え漬け込んでおいたものだ。


明日のお昼に食べましょうね。と言ってくれていたがスーザンさんは来られなかった為、今日の夕食に使わせて貰う事にした。香辛料の配合は身体強化の加護でしっかり頭に入れておいたから、また新しく作っておこう。


火の魔石がセットされた竈にフライパンを乗せる。すると魔石から火が出現しフライパンが熱されていく。

そこにオリーブオイルを垂らし、段々と温まって来たらラム肉を香辛料ごと焼いていく。

今度はジュージューという肉の焼ける音と匂いがキッチンに広がっていった。


ん〜、良い匂い。義父さんと食べるのが楽しみだ。

早くも夕食が待ち遠しくなりながらも、こんがり焼けたお肉をお皿によそう。


一緒に焼いていたキノコやパプリカも彩り良く添えたら僕は光と闇の魔力を練り上げた。


途端、パッと消えるお皿。

僕が作り出した亜空間に飛ばされたのだ。


これも聖霊の皆んなとの練習の成果だ。四○元ポケットみたいに色々と収納出来る大容量の空間があれば色々と便利だと思ったのだ。


これがあれば小さな身体の僕でも実質沢山の物を運んで行けるし、最近腰を辛そうにしている義父さんに重たい荷物を持って貰う必要もない。


この世界の創造神話の中で光と闇がまず空間を作り出したという話があった事を思い出しひたすら四次元ポケット、四次元ポケットとイメージしながらこの二つの魔力を弄くり回したのだ。


空気がグニャッとした感覚が魔力越しに伝わった時にはやらかした……と思ったけど無事に亜空間を作り出せて良かった。

いや、もう、あの何とも言えない空間が捻じれるような感覚は経験したくない……


柔らかな内臓がぐにゅっと変な方向に曲がって潰れるような、そんな嫌な感覚だったのだ。


そこから空間が広がった時はコレ使って大丈夫なのかと考えて戦々恐々としたよ……


それなのにそこに平気な顔してハレくんが顔突っ込んだ時は思わず悲鳴をあげました……えぇ……

……ハレくんの首と胴が離れる事態にならなくて本当に良かった…


そんな事を思い出して、思わずブルリと身体を寒気が襲う。

ナギちゃんを呼んで足元のカホちゃん達に寄り添うように寝転がる。

ふかふかの尻尾に包まれると同時に肌を伝わる暖かさに自然、身体の力が抜け、アヒル座りしたハレくんの胸元に顔を寄せる。


ふふ、ぬくぬくだ。ハレくんの羽根も柔らかくて気持ち良い。



心地良い温もりに包まれながら、段々と僕の意識は夢の中へと落ちていった。



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