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「この世界は。」




一頻り泣いた後、まだぐずぐずと鼻を鳴らす僕を辛抱強くあやしてくれていた義父さんはロッキングチェアに座りながら聖霊達に順番に視線を向けると徐に口を開いた。


「聖霊様方がこの子に遣わされたという事は、この子は愛し子だという事でしょう。

もしこれが真ならば神殿へ伝えるべき吉報なのでしょうが……」


その言葉に途端、張り詰める空気。

その空気の重さに思わず、ヒックと声が漏れる。僕の声に気付いた聖霊達はすぐに空気を和らげるが、義父さんはごくりと唾を飲み込んだ。


「……それは望まない。とのお考えでしょうか?……この子にとって最良の選択ではない、と」


コクコクと頷く皆んな。…神殿とはどんな所なのだろう?

分からないけれど義父さんやスーザンさんと離れるような事にはなりたくない。

義父さんは浅く息を吐くと、言葉を紡ぐ。


「……正直な所、私は私自身の責務を放棄しようとしています。

この子の事を思えば、神殿に保護して貰うのが一番この子の道が開けると考えています。

けれど、この世界にとって実に150年ぶりとなる愛し子の誕生です。

……この子にとって、今の神殿は足枷となってしまうでしょう。

それに漸く家族になれたばかりなのに、また家族を失う悲しみを私はもう経験したくない……。

………この子と出逢えた事は星母神様のお導きだと考えて宜しいのでしょうか?」


義父さんの言葉を静かに聞き、最後の言葉にゆっくりと肯定を示す皆んな。その仕草に今日初めての安堵の表情を浮かべる義父さん。

そっか……この世界の神様が義父さんと出逢えるようにしてくれてたんだ。


その事にじわじわと嬉しさが胸に沁み渡る。

聖霊の皆んなや義父さんに出逢わせてくれたこの世界の神様に感謝の気持ちが芽生える。


会った事も、見た事もない神様。

僕にこんなにも素敵な家族と友達に出逢わせてくれて、本当にありがとうございます。


まだ、向こうの世界に遺してきたものへの思慕も未練も断ち切れてはいないけれど……それでも、この世界でまた生きようと思えた。

その切っ掛けを作ってくれたのが、この世界の神様ならこの世界に生まれてくる事が出来て、本当に良かったと思う。


「では、この事はこの場限りの秘密と致しましょう。私の口からは決して他言致しますまい。」


義父さんのその言葉に皆んなは頷くと、僕に近付いてきた。

金魚、いや詩凪が近付いてきて僕の頬に吸い付いてくる。

ゆらゆらと綺麗な尾びれを靡かせながら、ウルウルの瞳を一心に此方へ向けてくれる。

鳶さん改め、御晴義もロッキングチェアの手摺りに降り立つと、嘴ですりすりと僕の頬に触れてくれた。

九尾の永華穂はぴょんと義父さんの膝に乗ると、僕の瞼をぺろぺろと舐める。

ふふ、擽ったい。


初夏の木漏れ日溢れる家の中、そこには幼子を大事そうに抱える一人の男の姿と、それを見守る3匹の聖霊達の姿があったーーーー



お読み頂き、ありがとうございます。


ここまでで、幼児期編は終わりとなります。

次回からは新編、あの子達が出てくるよ(誰)

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