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「その真名は。」




ーーーー愛し子の呼び掛けに3つの輝きは応える。

自らはあの子の為に存在しているのだと、知っているから。


ーーーー慈悲深きかの御方から姿と役目を与えられた時ーーあの子の事を識った時、護ると決めた。


か弱く、傷付きながらも、抗い、必死に強くあろうとした尊い子。

決して与えられたものは多く無かったが、それでも持っているものを大事にしようと慈しみ続けた愛しい子。


自分たちの側で笑うその姿に、側で見守り続けられる事に深く感謝した。与えられた尊き役目以上に、自分たち自身があの子の側に居たいと思えた。


ーーーあぁ、あの子が呼んでいる。行かなければ。ーー




◇◇◇◇◇




僕の呼び掛けに部屋の中に見慣れた3つの光が現れる。

それぞれ、浅緑、碧、琥珀に輝きながら姿を形作っていく。


やがて光が収まる頃にはーーーー



ーーーーー「くぅ〜」



耳に聞き慣れた可愛らしい声が届くと、ロッキングチェアを囲むように、いつもの3匹がそこには居た。


良かった、来てくれた。これで来なかったら、どうしようかと思っちゃった……

事前に3匹に伝えておけば良かったとちょっぴり心の中で反省しつつ改めて義父さんを見る。



ーー義父さんは呆然と3匹を見つめ、固まっていた。


……うん。まぁ、そうですよね。

突然、目の前に光が溢れてそこから生き物が現れたら何じゃこりゃ!?ってなるよね。


そういえば、僕も最初は宇宙人襲来かと……

なんて回想に浸っていると、義父さんがゆっくりと動き始める。そしてロッキングチェアから立ち上がると徐に片膝をつき、頭を垂れた。


「これは……何という事でしょう。貴方様方は、聖霊様でお間違いないでしょうか?」


そう言うと、3匹は三者三様に肯定を表す。


ん??なんか思ってたのと様子が違う。

義父さんはどうしてこんなに畏まって皆んなに接しているんだろう??

可愛くて親切で優しい、ちょっと不思議な子達なだけだよ??


魔法やら加護がある位だから、聖霊って割とポピュラーな存在かと思ってたんだけど………

義父さんの反応を見るにそんな事は無いようだ。


どうしよう……実はこの子達、めちゃくちゃ偉い存在でしたとかあり得る?会わせない方が良かったかな。

とにかく、この子達を呼んだ目的を果たさなくちゃ。

義父さんの髭にそっと触れて意識を僕に向けて貰う。


「…聖霊様、暫しお待ち下さい。どうしたんだいノア?」


お、こっちを向いてくれた。

僕は3匹を指さした後、僕を指差し、あぅあぅと声を出す。

皆んなは、僕が、呼んだんですよ。


始めは分からなかったようで、困惑した表情を浮かべていた義父さんだったが、次第に僕の言いたい事が分かったようで目を見開いた。


「何と……では、聖霊様はノアの……」


よし、伝わった。

そこから僕は自身に鑑定を掛けあのステータス画面を表示する。

その様子に義父さんはまた驚いた様子だったけど、そのまま画面を下にスワイプさせ問題の箇所を見えるようにした。


ん?義父さんの側からだと読めないのかな。

腕の中でもぞもぞと身体を返そうとすると、それに気付いたらしい義父さんが向きを変えてくれる。


良かった、これで見て貰えるかな。

僕は"未契約"と書かれた欄を指さしそれから3匹を示した。

義父さんは興味深そうに鑑定画面を眺めると僕の示す箇所に目を遣り、困ったように3匹を見つめた。


「成る程………貴方様方はこの子の元に遣わされたのですね。それで契約が結ばれず、力が十分に発揮出来ないという事でしょうか?」


3匹はまた肯定を示す。

これで聞きたい事は伝わったね。

しかし、義父さんの反応は芳しくない。


「ふむ……私も神殿の知人より聞いた逸話程度しか分からない為、力になれるかどうか……」


そんな……義父さんでも分からないか……八方塞がりな状況にどうしようと不安が心を満たし始める。

そうしたら、後は誰に聞けば………赤ん坊の姿だと物を調べるにも色々と不便だし、義父さんの様子を見るに、この子達の存在はおおっぴらにしない方が良さそうな気がする。


「……そういえば、かの愛し子様であるクラウス様は2体の聖霊様をお連れだったとか……確か、お名前はバルドル様、ヘイムダル様だったと………」



………ん?…………………………



……………………それだぁぁあ!!!!!


思わず、赤ちゃん特有の甲高い声を上げてしまい、近くで聞いてしまった義父さんがビクッとする。


あぁ、義父さんごめんなさい態とじゃないの!

あわあわと手を義父さんの耳に当てながらさっき聞いた言葉を頭の中で繰り返す。



ーーお名前は、バルドル様、ヘイムダル様だったとーーーー



そう!名前!!どうして今まで気が付かなかったんだろう。

僕、友達の名前すら知らないじゃないか!!

この子達は喋れないし、僕も言葉を喋れないから名前で呼ぶ必要性が無かったとはいえ……!


そういえば、頭の中で勝手に九尾やら鳶さんやら金魚先生って呼んでただけだった!!

なんだこのネーミングセンスは!!!

人間に対して「人さん」って呼んでるような物じゃないか!!


慌てて3匹を見るとそれはもう凄い喜びようだった。

漸く一番伝えたい事が伝わった。とーーそんな気持ちが伝わってくるようだ。


なるほど、成る程。つまりはあれか。

名前がなかったから未契約状態だったのか。

始めから名前があるなら、この子達は何らかの方法でそれを伝えてくれる筈。

つまり、契約っていうのは名前を付ければ良いのか。


義父さんにあぅあぅと感謝の気持ちを伝えると義父さんは伝わったのか伝わってないのか、にこやかに微笑んでくれた。



今更ながら、グレイヴスさんの読解力に自分で書きながら脱帽しています。ノアの事、自分以上に分かってるかもしれない……

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