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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
105/108

「明くる森、行進。」


本当にお久し振りです。

今も読み続けて下さっている皆様、本当にありがとうございます。

別作品の前書きでも書きましたが、ちまちま浮かんだ文章は書き溜めておりますのでこれからも忙しい日々の合間に投稿出来るように頑張っていきたいと思います。





「各自荷物確認は終えたか?」


「「「「はい」」」」


「よし、この時間なら当初の予定から大幅にズレちゃいない。

今日は進行ペースを上げる事になるがしっかり着いて来い。」


ハインツさんの言葉に皆んな揃って頷く。

すっかり日の昇った明くる森には夜明け前に起きた戦闘など感じさせない朝の清涼な空気が流れていた。


外壁前で地図を広げ道程の説明を受けている僕達の背後には、早朝から働いていた筈なのに活気溢れる大人達がガヤガヤと話す声が響いている。

説教を受け、そして身支度を進めている間に触手片を回収してくれていた先輩の冒険者達が一同に集い、こうして見送りをしてくれているのだ。


「いや〜出立時間に遅れなくて本当に良かった。見習い達、此処に戻って来るの楽しみに待ってるからな!」


地図とイライザさんの手にある懐中時計とを眺めながらカディスさんが明るく笑う。

昨夜、僕達の面倒を見てくれたカディスさんは気の良い親戚のお兄さんかと思う程めちゃくちゃ親切な方だった。


触手片回収も協力して下さったそうなので、こっそり幸運の加護を掛けておきました。

優しい先輩方に良い事ありますように。


「はい!貴重な素材を沢山土産に持って来ますね!」


エミが力強く返事を返すとカディスさんは嬉しそうに彼の頭を撫でる。

ふふ、子供扱いされてエミはちょっと不服そうな顔だけど先輩に目を掛けて貰えるって長所の一つだと思うよ。


よし、僕達の後始末をしてくれた先輩方の為にも、張り切ってるエミの為にも絶対貴重で、そして美味しい物を採って来るぞ……!


決意を胸に頭の中でこの先出現する獣と魔物の種類を思い出していると、ジャックが何度目か分からない言葉を掛けて来た。


「二人共、本当に体調は大丈夫か?」


「うん。ルイスさんにちゃんと診て貰ったし、イライザさんから治癒の加護も掛けて貰っちゃったから」


「ここまで元気に生きてるのが奇跡だって言われてたぞ………無茶すんじゃねぇよ」


「うん……エミも心配掛けてごめんなさい」


「本当に。ディランもリコの事が心配なら下手に連れ出さずに砦内から出ないように言えば良かったんだ。

先ず自分がしっかり実力を付けなきゃ守りたいものも守れないだろ」


「……此奴は俺より平気で無茶をするから連れて行く方がお互いの為だと思ったんだ。

次からはそうする」


僕の性格を分かりきってる義兄の事だから大人しく僕が待ってるとは思ってないだろうけどね。でも、今は安全な練習でも聖霊の皆んなに守られている環境でもない。

これからはより慎重に。


声を掛けようとしたその時、手元の懐中時計を見ていたハインツさんが冒険者達へ向けて声を張り上げた。


「そろそろ出立する!」




◇◇◇◇◇




「じゃあな!皆んな無事に帰って来いよ〜!」


「ハインツさ〜ん!!見習いの事、宜しく頼みますよ!!」


「おう!!」


「行ってきます!」


「ありがとうございました!!」


先輩達の声援を背に受けながら僕達は歩き始める。祈りを捧げていたルイスさんが穏やかな笑みで僕達を見守ってくれているのが見えた。


笑顔でそれぞれに手を振ると、緊張と期待を胸に前を向く。

中継ポイントをぐるりと囲む外壁の、重厚な門を抜ければ夜明け振りの自然が僕達を迎え入れた。


昨日より足に馴染んだブーツが柔らかな地面に僅かに沈み、足跡を残しながら前へ進んで行く。

悠然と先陣を切るヴァイスデーゲンの綺麗な毛並みを見つめながら僕達はこの先の道程に心躍らせていた。


今日の目標地点は浅層の入口、光の森と呼ばれるポイントだ。

僕達はこのまま北へ進みながら途中合流する川を横切って北西へ進路を変える。

最終目標である闇の森が北西にあり、比較的安全なルートである明くる森を通過する間になるべく目的地へ近付いておきたいからだ。


樹海は国境からユーヴァロン山脈まで広がる広大な未開拓エリア。

明くる森を始めとした表層を北上して行くに連れ浅層、中層、深層と呼ばれ、最後に最奥層であるユーヴァロン山脈が聳え立つ。


樹海は奥へ進む程、危険地帯となる。魔物との戦闘もこの先増えるだろう。

そう言うハインツさんの声は厳格だった。

僕達が挑むのは豊かでいて多くの危険を孕む生態系を内包した大自然。

古くから定期的な討伐や採集で冒険者や騎士団が足を踏み入れているとは言え、基本的には人の手の入っていない生活領域外だ。

今でこそある程度のルートは確立されているが、そこまでには多くの犠牲や困難が付きものだったと聞いている。


ここを進む人々は皆、本能的な恐怖と探究心とを併せ持ちながらもその先に戴く霊峰を仰ぎ歩み続けたのだ。

今、その敷かれずの道に僕達の足跡も加わると思うと言葉にならない思いが胸に満ちた。


改めてこれからへの不安が過ぎる僕の胸元で、ルイスさんが渡してくれたペンデュラムが朝日を受けて柔らかく光った。

この先の行く末を見守るかのようにそっと寄り添ってくれるそれに視線を向ける。


水晶の中に淡い緑色と魔石の欠片を内包したそれは災いから身を守ってくれる御守りとして古くから作られている物だそうだ。

クラウス原石がそうと呼ばれる以前から作られていた物らしい。


人工水晶の技術が古くからあるのも凄いけれど、魔石がどういう特性を持っているか詳しく分からなかった時代に作られたというのも驚きだ。

これは言わば、今日当たり前に普及している魔道具の旧世代だ。

経験則から有効であると気付いて作成したのだろうけれど、これを作った人は余程の知恵者だったと思う。


僕の持っているペンデュラムには微量の風の魔力が含まれている。

ペンデュラムに呼応するかのように午前の光指す明るい道程には優しい風が吹いていた。

その中を僕達は風を従えるシルフのように滑らかに進んで行く。


ニ時間ほど黙々と歩き続けた所で先頭に居たイライザさんから小休憩の指示が出た。

辺りの警戒を順に行いながら各々水分補給と現在地の確認を行う。魔石の魔力残量はまだまだ大丈夫だ。

子供の足に森の道は過酷だが、頑丈なブーツと冒険心を武器に再び前へ歩き出す。


砦を出発して三時間も経過すると辺りは違った景色を見せた。

始めは木々の間隔が広く踏み固められた平らな道を歩いていたが、進むにつれて木々の間隔が狭くなり足元には薮が見え隠れして来た。時折伸びている枝葉を折りながら前へ進む。


日光より木陰の占める範囲が殆どとなった頃、目の前が明るくなり僕達は第一の目的地へ辿り着いた。


目の前をサラサラと音を立てて川が流れている。

浅い川は流れも緩く、目を凝らしてみると小さな魚が泳いでいるのも見てとれた。

辺りは丸く滑らかな石が広がり、視界も広い。


目視出来る範囲に魔物も獣も居ないのを確認したハインツさんが食事にするぞと荷を下ろした。


「簡単な昼飯にする。また直ぐに出立するから焚き木はなしだ。

日持ちの短い携帯食から口にしててくれ。

俺は水質の確認をして来る」


「「はい」」


そう言い川の上流へ向かうハインツさんの背を見送り、僕達は荷物を手早く広げる。

魔力節約の為に一旦、魔石の動力を切ると荷物の影に隠れて索敵を行った。


……今の所、辺りに魔物はいないみたい。

鹿と猪がちらほら居るけど、此方の匂いと音に気付いてるから近寄って来ることは無さそう。


念の為気付かれていないか皆んなの様子を確認すると、川縁へ行きヴァイスデーゲンを休ませているイライザさんは地図を広げているようだ。

太陽の位置を見た後に懐中時計を懐から取り出して確認している。


義兄は川辺の見方を教えると言われてハインツさんについて行っている。

念の為魔道具の紐を縛り直すと、僕は荷物の整理をしていたエミとジャックへ近寄り声を掛けた。

皆んなで携帯食を口に入れながら調子を聞いていく。


「お疲れ様。道が荒くなっていたけど足は痛くない?」


「おぅ大丈夫だ。リコこそ身体は大丈夫か?

今日の道なら荷物くらい持ってやれるから疲れたら言えよ」


「ありがとうエミ。ジャックも足元を気にしてたみたいだけど何かあったの?」


「いや、それがズボンがちょっと短いみたいで………動いてる内にブーツからはみ出そうで気になったんだ。替えのズボンもこれと一緒に用意して貰った物だから多分履き替えても意味がないんだよな。

ズボンが捲れて草で切っても嫌だから紐で固定しておくよ」


「あぁ、本当だ。足を曲げると丈が足りなくなっちゃうね。

ちょっと待ってて。ディルの替えのズボンを貸して貰えないか聞いてみるから」


「いや、そこまでしなくて大丈夫だ。

そうしたらディランが困るだろうし、これくらいなら何とでもなる」


「ん〜そしたらちょっと待ってね………」


そう言って僕は荷物の詰まった鞄の中から取り出すフリをして亜空間へ手を伸ばす。

薄い生地の布を二つ取り出すとそれをジャックへ手渡した。


「良ければこれ使って?ズボンの裾に重なるくらいで紐で固定すれば肌が剥き出しにならないと思うから」


「あぁ、ありがとう。そしたらこれ使わせて貰うよ」


布を渡すついでに家でこっそり作っていた干し果物も二人にお裾分けする。

前世の枇杷に似た品種があったので試しにドライフルーツにしたものだ。

生の状態だとほんのり花の香りがしたのだけれど、今は殆ど感じない。

中継地点で頂いた茹で卵のサンドと持って来た塩漬け肉を少し取り出して食べていた二人は甘味を貰ってありがとう、と喜んでくれた。


今日は卵があったから良いけど、タンパク質と糖質、塩分に偏ってる気がするなぁ。

保存食は直ぐエネルギーになる物を中心に作られているから、文字通り食い繋ぐ意味としては合理的な物なのだけど。

何処かでミネラルとビタミンも取らないと免疫に影響が出るかもしれないな……


二人に掛けた身体強化と守護の加護が消えていないのをこっそり確認しながらこの先の食事事情に思いを馳せた。


………単純に家で作るようなご飯が食べたくなっちゃっただけとも言えるけど。

ここが平和な日本の川辺なら今頃バーベキューか魚の塩焼きをしようと思えるのに。

あぁ、鉄板で焼いた焼きそばが食べたいなぁ…………


シンプルなご飯を頂いている今、しみじみと思った。




お読み頂き、ありがとうございました。

次の投稿も気長にお待ち頂けますと幸いです。

それでは次のお話まで、また。


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