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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
103/108

「柱。」




守護の加護が破られた一寸後、義兄の手が僕の身体を引き寄せ、辛くも攻撃を逃れた。

次に脚力を活かして空へ跳ねた義兄は僕を抱えたまま木々の隙間に出来た坂へ飛び込んだ。


視界の先の地面が予想より遠くにあり、驚いた僕は彼にぎゅうとしがみつく。坂である事を理解していたのだろう義兄に素早く頭を抱えられ、引き寄せられる形で二人斜面をゴロゴロと転がって行く。


視界がぐるぐると回り脳が揺さぶられる。次々当たる土と藪を、腹に力を込めて必死に耐えた。




やがて身体を襲う揺れが収まると僕は目を開け眼前の身体から手を離す。すぐさま義兄の安否を確認しようと顔を上げると、大丈夫、と手で制され一先ず自身の身体を確認した。


枝や岩が積もる地面に強か身体を打ちつけたが、幸い義兄に掛けた守護の範囲内だった為、痛みは酷くない。

身体強化もアドレナリン分泌に一役買っているのだろう。打撲しただろう箇所は痛まず何処かを捻った様子もない。


次いで上を見遣ると、遅い筈の景色が瞬きの間に闇一色に塗り替えられていた。

しつこく後を追って来た触手は頭の上を真っ直ぐに伸びて行くが、探る為なのか数本が早くも此方へ伸びて来ている。


僕達は素早く立ち上がるとそれぞれに対処を始めた。義兄は軽い動きで剣を振るうと次々に触手を切り落とし、僕も風刃を作り近付くものから順に刻んでいく。

そして近くに居る触手を粗方退けた所で僕は広がった景色の先、空中へ意識を移した。


ーーそこには恐ろしい光景が広がっていた。


月明かり以外頼るものの無い夜空を、更に黒く染めるかのように大量の触手が空を覆っている。

地面から伸びる濁ったソレは、大小幾つかの束となり森を突き破る柱と化していた。


エンタシスの如くそれぞれに絡み合う触手の中央からは微かに僕の魔力が感じ取れる………発光させた硝子球があの柱の中心にあるのだ。

僕の魔力を食い尽くそうと貪欲に触手が重なり合い縋り付いている。


その光景を見て僕は一度深く息を吸い込むとゆっくりと吐き出し、そしてしっかりと見据えた。…よし、やるぞ。


ーー僕は魔力を練り上げ一気に回転させた。

硝子球から次々放たれた風刃が柱の中心部から触手を蝕み始める。既に光の魔力を食い荒らされた後だった硝子球には浮遊魔法で大量に込めた風の魔力が残っている。


より早く、より強く。重なりびくともしない触手をも切り裂く鎌鼬となるように。集中してイメージを込めると鋭さを増したそれは柱を内側から壊し始めた。


触手も突然の反撃に虚を突かれたようだが、寸刻の後に持ち直す。

抵抗を試みて切れた端から新たなものを次々に伸ばし襲い掛かっていた。硝子球(ご馳走)を奪い返そうと束になり押し寄せるが、辿り着いた先から鎌鼬は粉々に粉砕していく。

増援の勢いがなくなるのは直ぐだった。


ーー鎌鼬が空に君臨して数分後。次第に柱は震えるように不規則にうねったかと思うと、遂には形を保てなくなりバラバラと中心から崩壊を始めた。


森へ降り注ぐ黒の雨に、守護の加護を張り遣り過ごす。

鎌鼬に柱がなくなるまで留まるように魔力を加えると視界がぐらり、と揺れて頭が傾ぐ。

ボトボトと落ちる意思の消えたそれを力無く見下ろしながら僕は震え始めた身体に鞭打ち義兄の側へ足を引き摺った。


ペリュトンの攻撃手段を大きく削いだが、まだ脅威が過ぎた訳ではない。相手が回復すればまた次の手を出して来るかもしれないのだ。

気を緩めたら終わり、と疲れを訴える脳を無視し探索魔法を展開して…………


直後、緊張の糸が切れた僕は義兄に身体を引き起こされた。

周囲の気配と遠くから届く音とで義兄も状況を理解したらしい。細く深く吐いた息が僕の耳朶を掠める。


このまま二人して倒れてしまいたいが、まだやるべき事が山積みだ。みっともなく震える手を一度握り締めて弛緩させると意識して深呼吸を繰り返す。


バクバクと鳴る心臓を理性で従わせると、同じように意識を切り替えた義兄に礼を言い身体を離した。

……これからの事をしなくては。


改めてこれまでの動きを客観的に捉えてみれば僕達は非常に不味い状況にある。

(罰則覚悟とは言え)無断で部屋を離れ外壁に居た上に、逃げろという指示に()()()魔物に近付くような動き方をした。


きっと今頃、砦付近の先輩方は躍起になって僕達の安否を探っているだろう。

戦力に数えられない見習いがあれ程の魔物に狙われて無事で済む可能性は低い。


可能性は低いが最悪、せめて遺体だけでも見つけようと動いてくれる筈だ。

発煙筒代わりの光源を空へ上げたのでそれを標に捜索が行われるだろう。少なくとも光が打ち上げられた間は生きていたと判断して貰える。

丁度柱の残骸が一列に並んでいるから想定以上に見つけられ易くもなっていた。


此方の生存に気付かれる前にどのように生き延びて、どの程度怪我を負っているかの調()()をしないと。

割とギリギリな戦いではあったけれど、かと言って絶対にペリュトン相手に善戦して見せた。とか評価されてはいけないのです。

何故って?今回、有能な義兄が一人でやったとは思えない程度には僕の痕跡が至る所に散らばっているから。


何より今後の後始末に追われてこれからの遠征予定を狂わす訳にはいかなかった。

僕の能力は可能な限り隠した上で、無能(お荷物)でない事を証明しなければならない。

そこの塩梅を細かく詰めていこう。


という訳で………ふむ、先ずは身体をどうにかしないと動くに動けないか。


手始めに僕と義兄の状況を鑑定の加護で一通り確認する。

鑑定の加護は知りたいと思う情報をイメージすれば都度載せてくれるから本当に有難い。プライバシー皆無になっちゃうから使い方には要注意だけどね。要人は妨害・工作必須らしいし。


んん……えぇと、僕に掛かっている加護と魔法効果は………


認識阻害魔法×2、魔力探知不可の妨害魔法、義兄のゴニョゴニョを消す隠蔽魔法、鑑定画面を捏造しているカモフラージュの魔法、身体強化の加護はまだ残ってて………守護の加護は壊されててないか。後、加速魔法はさっき効果が切れたみたい。また掛けておこう。


義兄は身体強化とガチガチな守護の加護、普段から身に付けている組紐御守りの幸運の加護が掛かっている。


よし、ここは治癒の加護の出番だね。

表面の打撲痕や薄ら付いた切り傷はそのままに直ぐ下の筋組織の修復、脳を始め末端までの血液循環、リンパ管系の循環を一つずつ整えた後、体内のインスリン量を抑え運動で酷使した身体にエネルギーを巡らせる。


足りなくなったエネルギーは……ポーションで代用しよう。甘い果実水と蜂蜜多めにしておいたライネル先生特製ポーションを亜空間から取り出して手早く糖とビタミン、薬草に含まれる豊富なミネラルを補給すると、念の為口の中は浄化の加護でポーションを飲んだ形跡を消す。


回復した脳と身体(表面上はボロボロ)を動きに支障がないか確かめた後、僕達は手分けして周囲の状況を確認した。


うわぁ〜………ペリュトンって凄いね………

何がって環境への影響が。

先程降った黒いウネウネもとい、触手片が地面の至る所に染みを作り草花を潰している。


……僕は加速魔法が無かったらこれの速さについて行けてなかった。相手にしている魔物の恐ろしさを再認識して地面に落ちる濁った闇色を見つめた。

闇の魔力たっぷりなソレが今更ながら動かないかちょっと怖くなる。………もう暫くウネウネするものは見たくないかも……


あ、これ僕とお兄ちゃんで切った触手かな?

周りの景色を見回した所で必死過ぎた頭は覚えていないけれど、この切断面と大きさはお兄ちゃんの剣筋だ。

ならこっちのギリギリ、よく見れば切り方の違う欠片は僕の切ったものか。


…………念の為、僕の分は亜空間に放り込もう。

僕が使った魔法は光の球と鎌鼬だけです。ウン。

あと守護の加護で不自然にポッカリ空いてる綺麗な地面にその辺の触手を塗して………よし。高威力の魔法を使った後に悠長に加護を張るなんて器用な事はしていませんよ〜。


僕そこそこしか魔力ないからね(棒読み)


そこまでの証拠隠滅を終えると、周囲を確認すると言い、この場を離れていた義兄が丁度戻って来た。手の中に丸い何かを転がしてる。


傍で見せて貰うとそれは僕の投げた硝子球だった。ひぃふぅみぃ………全部で6個投げた筈だからこれで全部だね。態々拾って来てくれたんだ。ありがとうお兄ちゃん、助かったよ。


見る者が見たら分かるだろう、魔法によって変形させたそれ。

魔法の扱いに長けた、そして同じような訓練をした事がある者ならこれが如何に集中力と繊細な魔力操作が求められるモノか分かってしまう。

例えば現役槍水仙級のイライザさん(聖女)。或いは魔法を使わずとも魔力の純度を見極められるハインツさん(ギデオン)。危険な森の監視を任される程、洞察力と判断力に長けたルイスさん(防人)、とかね。


手渡された証拠(ソレ)を確かに亜空間へ仕舞い、大人達の動向を確かめた僕達は漸くドサリとその場に座り込んだ。

人心地着いて身体をふかふかの地面に預けていたが、ほんの少し間を置いてやり忘れていた事に気付いた僕はハッとなる。


そうだ。大事な事を忘れてた!



ーー最後に僕は胸の前で手を組みきゅうと目を閉じると、神様・仏様・星母神様!!と唱えながら幸運の加護をこれでもかと僕達へ盛ったーーー



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