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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
102/108

「危険な鬼ごっこ。」




此方を見据える鋭い瞳は怒りに燃えている。

ググググ、という独特な声を上げ身体の向きを此方へ変えて………


「リコ!!そこから逃げろ!!!」


ハインツさんの声に素早く反応した僕達はヒラリと目の前へ飛ぶ。

義兄に抱えられた僕は咄嗟に守護の加護と浮遊魔法を展開し着地の衝撃を和らげた。


直後、先程居た場所へ放たれる無数の触手。濁る闇色をしたそれは鞭のように撓り何かを捉えようと空を描く。空気を舐めるような動きをする触手にゾッとして視線を逸らす。


もし寸刻遅れていたら………想像して血の気が引いた。


しかもまだ危険は直ぐそこに迫っている。防音と隠密の魔法を解き、手早く互いを繋ぐロープを切ると僕は改めて守護と身体強化の加護を掛けた。


どうやら相手は此方を本格的に狙う事にしたらしい。ピリピリと肌を走る緊張感に身体が強張りそうになるも、そんな場合ではないと腿を抓り自身を叱咤する。

汗で滑る手に短剣を握らせると、同じく長剣を鞘から抜いた義兄と一瞬視線を交わし、僕達は駆けた。


加速魔法でスローモーションに見える視界の端、夥しい数の触手が迫っているのが見え背中に冷たい汗が流れる。

強張る顔で前を向くと、森の奥へ懸命に足を働かせた。


一瞬の間、見る事が出来たイライザさんは森の方を指差していた。其方へ進めという指示だ。

ルイスさんも僕達の姿を確認した途端、何事かを僕達へ叫んでいた。


逃げろと言ったのかもしれないが、触手が枝の間を縫うように追い立ててくる為、枝木の折られる音に遮られて聞こえなかった。

兎に角やるべき事は分かった。僕と義兄の二手に分かれてペリュトンの意識を森の方へ誘導させる。


そして絶対に、何が何でも捕まってはならない。


森へ来る前に教わった動きを思い起こし、アスレチックを駆けるように僕達はジグザグに進む。緊張と恐怖に普段よりも早く息が上がるのを感じ、内心舌打ちする。

一定の距離を保って同じ方向へ走る義兄は僕の事を気にして距離を広げようとしない。


このままだと彼も危険だ。何とかしないと……

あの触手思っていた以上に執拗だ。何か僕達を狙う理由がある?思い出せ……ペリュトンの特性は……


目の前の倒木を越えようとして転びそうになりながらなんとか前へ身体を進める。


一拍遅れて転んでいただろう箇所に触手が群になって押し寄せているのを視界の端に捉え、額を汗が流れる。背後に迫る闇の魔力と破壊の音に心臓が嫌な音を立てた。

瞼に掛かる汗を瞬きで散らすと僕は考えを巡らせる。


ペリュトン……ペリュトンは……光属性に惹かれる習性を持つ。だから先輩方は松明しか使わず光の魔道具を光源として使わなかった。

光属性の魔力が有りそうなイライザさんはそもそも探知されないよう、常に何かしらの妨害を施している。


そしてそんな中、光の魔力を使って、しかも辺りに魔力を放出した僕は??格好の的だ。

そして加速魔法を張った義兄も同様だ。彼の身体には僕の光の魔力が巡っている。


恐らくあの触手は武器であり、あの魔物のセンサーなのだろう。空を探る動きをしていたのは光の魔力の残滓を感じ取っていたから。


そこまで考えると僕は亜空間からあるものを取り出し義兄へ向かい叫ぶ。


「触手を撹乱させたい!スイッチ出来る??!」


「分かった」


木々の隙間を縫い互いのタイミングを合わせると僕と義兄は距離を縮める。

互いが手の届く距離、そして束の間交点を結びまた離れて行くと、僕は手の中のそれらを背後に向かって投げ込んだ。

深い闇の中、月明かりを受け僅かに光るそれはビー玉大の硝子の塊。


僕の魔力で練り上げて作った硝子球に光を灯すと更に浮遊魔法で思い切り上に上がるように魔力を込めた。


グングン上がる眩い硝子球を追い掛けて進路を変える触手の群れ。

此方を追う数より硝子球を追う触手が殆どとなった時、僕は足を止めて全力で守護の加護を張った。

加速魔法により遅く感じる筈の触手達が次々迫り、見えない壁にぶつかるように押し合い潰れひしゃげる。


横へ視線を向けると、僕が止まった事に気付いた義兄が素早い動きで触手の波を抜け僕の側へ駆け寄って来るのが見えた。


お兄ちゃんの背に触手が迫っている!

危ないと感じた僕は咄嗟に守護の加護の全てを義兄へ掛けーーー



ーーーバリンという嫌な感覚が脳へ届いた後、僕の身体は宙へ浮いた。



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