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「始まりは。」

初投稿です。拙作ですが、宜しければお付き合い下さい。







…………………


………ァ……ぁ、ぁぁぁぁぁぁあ……




ーーー何かの音、いや誰かの声が聞こえる。

耳を澄ますとそれはとても近く、そして赤子の泣き声であった。


ーーあれ、ーー僕、何してたんだっけーー確か、今日は仕事の筈じゃーーー



何か考えようとしても、思考は靄に包まれ纏まらず、不明瞭だ。

そしてとにかく自身を襲う空腹感と奪われていく体温に急激に恐怖を感じ、余計に"喉から声を張り上げた"


目の前、というより幕に覆われたような暗闇の中、必死に身体を動かそうともがく。

ここは、何処。怖い、嫌だ、僕はどうしてしまったんだろう。誰か、助けて………


恐怖と混乱が自身を襲い、心はぐちゃぐちゃだった。

半ば錯乱状態になりながら、もがき続けていると突然、何かの足音が耳に届いた。

それは自分に向かってきているようで段々と大きくなる。


そして僕のすぐ側で止まったかと思うと、何かが幕越しに触れてきた。

と、思った時には急に視界いっぱいに広がった光に堪らず、目をぎゅっと閉じる。


訳も分からぬまま、何者かが自身を"抱き上げる"急な浮遊感に恐ろし過ぎて声も止まってしまった。


「おぉ、こんな所で寒かっただろう。もう大丈夫だよ」


心中大混乱の中聞こえた、安心させるような深く落ち着いた声音にそっと瞼を上げてみる。

初めは焦点の合わなかった視界が徐々に慣れてくると目の前の黒っぽい影は段々と人のシルエットを形作っていった。

そして完全に焦点が合う頃には、それは白髪混じりの髪と豊かな髭を蓄えた壮年の男性だと分かった。


え……この人僕のこと、抱き上げた??

確かに僕は日本人の平均的な身長で、この人は欧米風な顔立ちで体格があるかもしれないけれど軽々と、だよ???


未だ大混乱な頭の中、隅っこにいたやけに冷静な自分自身が警鐘を鳴らしているのにいい加減気が付いてしまった。



…………僕、もしかして赤ん坊になってる?!!?!?





◇◇◇◇◇




………改めて状況を確認しよう。


あの後僕を拾った男性の手により、こじんまりとした煉瓦作りの温かみのある家へと運ばれ、ふわふわなタオルケットに包まれた後、口元に綿布を含まされた。それが乳の匂いだと分かった途端、自分でも驚く程勢いよく飲み始めた。

途轍もない空腹を自覚していた分、余計に美味しく感じました。えぇ。


そして現在は、お世話を一通り済ませて貰い、これまた温かみのあるロッキングチェアの前に簡易的なベビーベッドを用意され、お休みの時間となっている、らしい。


おしめ?えぇ、取り替えられました。齢27歳にして(今は赤ん坊だけど)下のお世話をして頂く事になるとは思いませんでしたよ……

そういえば、おしめを取り替える時、神妙な顔をされました。

見ず知らずの方におしめ替えまでして頂いて本当、申し訳ない……


気を取り直して今いる簡易型ベビーベッド、手編みの大きな籠にふわふわタオルケットを敷いてあるだけなので、なんとか頑張れば部屋の様子が見えると思うんだ。


という事で、薄暗い部屋の中身体を動かそうとしてみたのだけど、これがなかなか上手くいかない。

思考がハッキリしている事から赤ん坊とは言え脳はしっかり機能しているみたいなのだけれど、いかんせん身体が思ったように動かない。


う〜ん、脳から手足までの神経系がまだ未発達なのかな?単純に運動するだけの筋肉がないからかもしれない…

というかこれ、完全にアレだよね。赤ん坊になってる事から察するに、僕は一度死んでしまって生まれ変わってしまったのでは……


ん〜…最後に覚えている記憶…曖昧だな。思い出そうとすると途端に靄がかるように思考が散漫になってしまう。

これは、もしかしたらあまりに辛い事をフラッシュバックしないよう、脳がブレーキを掛けているのかもしれない。


よし、今はこの身体の事を知っていこう。

助けて貰った?とはいえ、知らない場所に今は一人なのだ。何が出来る、出来ないかを把握しておかないと。

体のパーツ、筋肉などにも意識を向け隅々まで自分なりにこの身体を知ろうとしているとふと、自分の中を何かキラキラしたものが流れている感覚に気が付く。


目を閉じ意識を"それ"に集中させると、身体の中を無数に巡る流れのようなものを感じ取れる。

これ、血液の循環に似てるな。

キラキラしたものは何色にも煌めく光の粒のようで、絶えず流れ続けているイメージが頭の中に浮かぶ。いや、頭の中に"視えている"


何だろうこれ?分からないけど、優しい光だと思う。夜空の星を集めて流れているみたいな…天の川が実際に流れたらこんな感じなんだろうか。

………いや、それはもういよいよ宇宙レベルの終わりだな。

地球なんて滅んでるわ。





なんて馬鹿な事を考えていると突然、僕の周囲に光が集まり始めた。



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