ただいま 2
「これはっ、、、!」
「すごいね、、、、。」
屋敷に入った二人がクロークで屋敷の素晴らしさに息をのむ。
広いクロークに高い天井、そこに吊られた巨大なシャンデリア。
正面の大階段にはクロークから立派な赤絨毯が続き、
その正面大階段の踊り場には色鮮やかなステンドグラスが輝く。
玄関の両脇には大きく綺麗に磨かれた重厚なドアが。
その奥へ長い廊下が続き、多くのドアが覗く。その先は多くの部屋を有する左右の棟へと続く。
「ちょっとしたホテルのフロントね、、、。」
「さっきも言ったが、王城ほどじゃないけど、不自由はないと思うよ。」
「おまえ、もう、こんなん、大金持ちじゃないか、、、。」
神前、オマエなんだその感想は、アホの子じゃないんだから、、、。
「リッツァ、カーニャ。」
「「はいっ!」」
返事をしながら二人の少女が駆け寄ってくる。
[リッツァ]は狐人族の女の子。
マイヤーと同じメイド服の少女で、メイドカチューシャの脇に尖った耳が生えている。
細いキツネ目をさらに細くしてニコニコ。俺との再会を喜んでくれているようだ。
太くフサフサの尻尾もフリフリ揺れ、喜びを表している。
もう一人の少女は犬人族の[カーニャ]。
こちらは警備部門と兼任のため、軍服とメイド服を足したような服を着ている。
頭にはカチューシャではなく制帽が乗り、
両脇の半立ち耳がピクピクしている。
無表情を装っているが口の端がプルプル、笑うのを我慢しているようだ。
尻尾もピクピクして、振るのを必死で止めている。
「「おかえりなさいませ、ご主人様。」」
リッツァが最敬礼、カーニャが挙手式敬礼で挨拶してくる。
「二人とも大きくなったな!最後に会ったのが9歳だったから、、、。」
「12になりましたっ!」
「お約束通り、これでお手付きにし」
「ふっ二人にはっ!客人の世話係を頼むっ!!!!」
我ながら怪しかったか?
カーニャが言い終わる前に二人に指示を出す。
道祖たちの方をちらりと見ると、二人はまだ屋敷の内装に夢中で、
こちらの会話は耳に届いてないようだった。
危うく大惨事になる所だった、、、、。
「「………?」」
しかし、俺の狼狽ぶりをカーニャ達は理解出来ず固まっている。
「あー、えっとだな!」
「リッツァ、カーニャ、ご主人様はお客様のお世話係をお命じです。」
取り乱した俺にマイヤーが助け舟を出してくれる。
「「畏まりましたっ!」」
二人は各々の礼で拝命を表し、
「お客様。」
「お部屋をご用意しております。」
「「どうぞこちらへ。」」
「あ、あぁ、ありがとう。」
「ありがとうございます。高御座くん、、、。」
「疲れただろう?少し部屋で休んで、それから食事にしよう。」
屋敷の立派さと、異世界で初めて俺から離れる事に、少し緊張気味の二人に笑いかける。
左の棟の客室に向かう道祖たちの背中を見送り、
俺がカーニャたちにしようとしている事を誤魔化せた事に安堵する。
「ふーっ」
胸を撫で下ろしていると、
「いつまで誤魔化されるおつもりですか?」
「えっ?」
背後からのマイヤーの問いに振返る。
マイヤーが厳しい目で俺を見つめる。
うぅ、マイヤーさんマジクールビューティー。
問いの意味をはかりかねていると、
「いえ、出過ぎた事を申しました。」
マイヤーが頭を下げる。
「いや、気にするな?」
会話は終わらされ、問いの真意はわからずじまいになった。
「俺も一旦自室へ行こう。」
「では、私が御供いたします。」
挙手式敬礼をしながら供を申し出たのは、
カーニャと同じく軍服風のメイド服の[ルヴォーク]、
狼人族で警備部の長で、先程門から玄関まで先導してくれたのは彼女だ。
政務はマイヤーに任せて地球に帰ったのだが、このルヴォークには軍務を任せていた。
狼人族特有の引き締まった身体が軍服風メイド服によく似合う。
カーニャのフレアスカートとは違い、こちらは膝丈のタイトスカートだ。
鍛えられたふくらはぎと締まった足首に、黒いピンヒールが映える。
全体的に筋肉質ではあるが、小玉スイカ程のバストと引き締まったウエストが、
女性らしさを感じさせる。
キツめの印象を与える整った顔立ちと、制帽の脇のピン!と立った大きな耳が、
服の上からでもわかる肉体美鍛と相まって、精悍さを際立たせる。
「では頼もうかな。」
「はっ!」
ルヴォークの後ろを歩き、自室へ向かった。
つづく