二人の視線が痛い…。
今回少し短いです。
朝が来た。
昨晩はマイヤーに背中を流してもらい、
色々吹っ切れた勢いに身を任せ……、
「おはようございます、ハヤト様♡」
隣で寝ていたルヴォーグがキスをねだってくる。
……まぁ、そういうワケだ。
「おはよう、ルヴォーグ。」
ルヴォーグの求めに応えようとすると、
ーコンコンー
ドアが鳴る。
「…どうした?」
「お食事のご用意が出来ました。」
リッツァの声。
この抜群のタイミングはマイヤーの手配だろう。
「ふんがぁぁぁっっ!!!」
ルヴォーグがキレている。
「ほら、行くぞ。」
俺を煩わせないでくれ。これからもっとヒドく煩わしい事になるんだから。
暗澹たる思いで重い足を引き釣り、回廊型の屋敷の中を遠回りして、食堂に着いた。
マイヤーが食堂の前で待っている。
「おはようございます、ご主人様」
「おはよう、マイヤー……彼女たちは…?」
「既に席に御付きです。」
「そうか……。」
先に食べているよう、言っておくべきだった。
食堂の扉の前で立ち止まっている俺の背後から、
「昨晩の勢いはどうされました?」
「そうですよ、ご主人様。あんなに激しかったじゃないですか♡」
マイヤーとルヴォークが囁く。
『クソッ!なるようになれだっ!!』
俺は扉を開ける。
「「おはようございます、ご主人様っ」」
リッツァとカーニャだ。
二人は道祖と神前の側で給仕している。
「おはよう。……ふ、二人もおはよう。」
道祖と神前にも挨拶する。
「おっ、おはよう!」
「……おはよう。」
神前は普通だったが、道祖は下を向いたまま、小さく返す。
「では、いただこうか。二人もどうぞ。」
俺も席に着き、二人に食事を勧める。
「あぁ、いただこうっ!」
「……いただきます。」
「高御座、昨夜もそうだったが、食事は地球とあまり変わらないんだな。」
「そうだな、そのベーコンは俺が以前召喚された時にもあったな。」
「牛の肉を塩漬けにし、燻した物です。」
料理担当の[ヴァロカ]、牛人族が説明してくれる。
乳牛を思わせる巨大なバストと、
程よく肉付きの良い体型が、作る料理のレベルを表している。
これ、絶対美味しい料理作る体型やん!って感じだ。
しかし、牛人族が牛肉料理を作る様は、理解していても少しシュールだ。
「ご主人様にはそちらのソーセージの作り方をお教えいただきました。」
「あぁ、そうだったな。ソーセージは無かったな。」
「お前、よく作り方知ってたな。」
「料理番組はよく見てたし、複雑でもないしな。
下味を付けたひき肉と香草を腸に詰めて、燻すだけだから、ベーコンと一緒に作れるし。」
得意げに説明していると、
「ひき肉にした動物のその腸に詰めるとか、初めてお聞きした時はご主人様は蛮族かと思いました。」
「ちょっと引きました。」
カーニャとリッツァがヒソヒソと。
「おい、聞こえてるぞ。」
「「すいませんっ!」」
「ソーセージ美味しいだろっ?!」
「「はい、美味しいですっ!」」
まったく。他人の食文化は尊重すべきだ。
ふと道祖を見ると、食事には未だ手を付けられていない。
「道祖様、お口に合いませんでしたか?」
心配したヴァロカが声を掛ける。
「ごめんなさい、そうじゃないの……。」
「道祖……。」
俺が声を掛けると、
「ごめんなさいっ食欲がなくてっ!失礼しますっ!」
立ち上がり、部屋へ向かう。
オロオロするリッツァに、
「食事を持って行ってやってくれ。」
「か、畏まりました。」
食事をお盆に乗せ、急いで道祖を追う。
神前は……まだ食事中だった。
「追っかけて行くかと思ったが……。」
「食事中だからな。」
「はは、そうだな。ゆっくり楽しんでくれ。」
「それに……。」
ベーコンステーキを大きな口に放り込み、
「道祖抜きで(モゴ)話した(グチャ)かったんだ(クチャ)」
ゴクリ、と飲み込む。
俺を見る神前の視線が痛い。
「……食いながら喋るな。」
精一杯の強がりで神前に返す。
つづく