泣きそうな女の子
ああ、あったかいなあ。
身体中の疲れが溶けていく。
そういえば、小さな頃に
眠い。寝よう。寝て、明日は何しよう。
いや死ぬんだ。そう。死ぬ。
おやすみなさい。
おやすみなさい、なんて言うのはいつぶりだろうか。
俺はただうとうとするのに任せて眠った。
起きて______________
いつもの叩き起こすようなアラームの音は聞こえてこない。
死んだのかな。
でもどうして意識があるんだ。どうして物事を考えられる?
あの世があるのか。
嫌だ。生きてるのが嫌だから死んだのに、あの世があるなんて最悪だ。永遠に眠らせてくれ。
ねえ____________
________死なないで________
_____嫌だ_______くん________目を覚ましてよぉ______
目が覚めるとあちこちに真っ赤な飛沫が壁についていて、それで、ぬるい湯船はどす黒い血で染まっていた。
そして気持ち悪い。眠たい。吐きそうだ。
考えるのがめんどくさくて俺はただぼうっとした。
目の前に映るのはそれで、次に見えたのは女の人の顔。
顔が間近にあって、平常なら驚いていたろうけれど、めんどくさい。
短い髪をしたその女の子は、可愛い顔をしていたけれど、泣きそうな顔で、しかも悲しそうな顔をしていて、クシャクシャで台無しだ。
誰なんだろ、この人。
「......れ?」
俺は尋ねてみる。
多分、何にも伝わってないだろう。
彼女はただ安堵した顔で、俺に抱きついてきた。
ぎゅっと、離さないように、俺は抱きしめられた。
彼女の体温が俺の身体中に伝わってくる。
後のことはよく覚えてない。
気がついたら俺は病院のベッドの上にいた。