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勇者の名前は『魔王』でよろしいですか?▼  作者: 毒の徒華
第3章 戦争を回避してください。▼

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1号から50号までいるようです。▼




【メギド 魔機械族の町】


 実際に来たことはなかったが、魔機械族の町は相当に技術や文明が発達しており、まるで別世界にいるようだった。

 四角く白い高層の建物が規則正しく並んでいる。


 それが家なのかなんなのかまでは分からない。


「これは魔王様、どのようなご用件でしょうか」


 魔族の楽園にいた35号よりも流暢に話す魔機械族だった。

 それに、35号よりも限りなく人間の姿に近い。


 当人曰く50号とのこと。


 一見したら人間だと言われても気づかない程の技術で人間にふんしているが、人間よりも高い知性と理性を感じる存在だ。


 魔機械族は1号から10号までがセンジュが作ったものらしく、1号は流石初期型ということもあり、あまり知能は高くなく定型的な文言しか喋らない。


 魔機械族は全員で50号までで作られており、それを超える魔機械族は作らないとのこと。

 理由は、数が増える分に使うエネルギーが増える上、壊れた魔機械族の修理をしながら50体で十分この町は足りているとのこと。


 50号が最も人間に近い存在らしい。

 皮膚に傷がつけば血が出るし、痛みも感じるとのこと。


 そこまで人間に近づける必要があるのかどうか分からないが、生命体モデルとして人間の姿が適しているそう。


 人間に敵対しないために人間に近い姿をとっているとか。

 虫や動物の「擬態」に近いものらしい。


「センジュから要望のあった空間転移魔法の負荷を軽減させるポーションの出来具合を確認しに来た」

「そちらでしたら量産体制が整い、既にご希望の個数お作りすることが可能です」

「それはいつでも作れるものなのか?」

「はい。原料の植物も量産可能ですので、いくらでも」


 この短期間で素晴らしい成果だ。

 是非魔王城で雇用したい。


 だが、魔機械族はこの場所であまり他の種族と関わらず生活するようにセンジュからプログラムされているらしい。


 過ぎたる力は世界の均衡きんこうを破壊しかねないという考えが根本にあるようで、過度に他種族には干渉しないように生活しているとのこと。


「ふむ。欲張って持って行っても荷物になってしまうしな。いくつかはほしいが」

嵩張かさばらない注射タイプなら飲むタイプよりも少量で済みますし、即効性がありますよ。多少副作用もありますが」

「副作用とは?」

「理屈としては身体の負担を急激に回復させるわけですから、寿命がわずかに縮みますね」


 寿命が縮むと聞いて私は嫌悪感が全面に出る。


「そのわずかとはどのくらいだ」

「魔王様の場合は3日程度、人間の方の場合は個人差がございますが1か月程度は寿命が縮みます」


 なんだ、3日程度かと私は拍子抜けした。


 だが人間の場合は1か月と、かなり寿命が削れる。

 人間の平均寿命を考えると1か月はかなり多い。


「飲むタイプの方は徐々に身体に作用する分、それほどの負担はありません。ただ作用が始まるまで少し時間がかかりますね。魔王様の場合は数十秒、人間の場合は個人差がございますが30分から1時間程度はかかります」


 数十秒程度で飲む方が作用してくるのなら、寿命を縮めてまでわざわざ注射タイプの方を使う必要性はない。


 と、思いたいが転移先にて急に襲われる可能性もある。

 敵陣の真ん中に転移するつもりはないが、周囲でも先が危険な状況であるときも十分考えられる。


「では注射タイプ3つ、飲むタイプ3つ程もらおうか」

「かしこまりました。すぐに準備いたしますので少々お待ちください」


 魔機械族の町は他の町と全く異なる。

 異文明と言っても過言ではない。


 いくつもの機械が何もかも自動で動いている。


 50号が腕についている腕輪のようなものを操作すると、機械が動き出して原料の倉庫のような場所から原料が選別され、移動用機械が自動でポーション製造工程の機械にいれられてそれを見ている内にポーションが出来上がった。


 ものの数分の出来事だった。


 注射器も見たことのない筒状のものを3つ渡された。


「使い方は皮膚のどこでも構わないので押し当て、ボタンを押せば注射されます。環境に配慮した素材で作られておりますので、注射器はそのまま放棄していただければ自然にかえります」

「凄い技術だな。魔機械族全員、魔王城で働かないか?」

「ありがたいお話ですが、センジュ様から我々は独立したコミュニティで生活していくようにというプログラムを書き込まれておりますので」


 やはり誘いには乗ってこないか。

 機械は命令に忠実らしいが、センジュの意思を忠実に守っている。


「センジュが魔王城に来るように言ったとしてもか?」

「左様です。いくら我々の始祖をお作りになったセンジュ様のご要望でも、我々は独立して生活していくことを選択します」

「だが、センジュの頼みでこのポーションを作ったのだろう?」

「はい。他種族の生活の補助をする程度の事は致します。それに、これは私たちが独自で制作したものではなく、センジュ様が作ったものを量産する程度の事でしたので、問題ないと判断しました」


 魔法式を組み込んで動くようにしている機械が自ら判断を下せるということは、やはりこれは単なる機械に留まらず一つの生命であると感じる。


「50号の型で全て統一すればもっと効率的なのではないか?」

「魔王様、我々は効率的な生活を目指しておりますが、1号から私50号まではそれぞれの個性を尊重して生活しております。全員が私では多様性が失われてしまいます」

「1号は50号の事を羨ましいなどとは思わないのか?」

「“感情”は我々にはございませんので、そういった考えには至りません」


 人間に近く作られている50号ですら、感情は持っていないという。


 ただ、自己防衛プログラムがあるので脅威対象者は排除するという機能はついているらしい。


「定期的に魔王城にこのポーションを輸入したいのだが」

「はい。かしこまりました。手配しておきます」

「代金は取らないのか?」

「我々は金銭を必要としておりませんので、問題ありません」

「人間が魔機械族を利用しようとしそうだけどな」

「人間族とは一定の距離をとるように指示されております」


 この高度文明を人間が盗もうとしても、それは不可能だろう。

 私が見ても容易には技術を理解できない。

 私に容易に理解できないものなら、人間は更に理解できないないはずだ。


 目的のものは回収したので、私は悪魔族の元へと行くことにした。


「また要望があったらくる」

「またのお越しをお待ちしております」


 50号は丁寧に頭を下げ、空間転移魔法で移動する私を見送った。




 ***





【メギド 悪魔族の町付近】


 悪魔族の町は魔王城から北西の一番端のエータの町の更に北西に存在する。


 天使族が天空を好むのとは対照的に、悪魔族は地下を好み地下に町を作って生活している。

 悪魔族の町の上には目印などはなく、森の中のいくつかある洞窟を下っていくと地下通路に出て、その迷路のような地下通路を抜けるとやっと悪魔族の町に辿り着く。


 と、センジュに聞いたことがあるが実際にここへ来るのは初めてだ。


 エータの町の近くに空間転移してきたところ、私はすかさず飲む方のポーションを一つ飲んだ。

 数十秒でポーションの効果が効いてきて身体が楽になった。


 ポーションの容器を捨てても自然にかえるそうだが、痕跡を残したくなかった私は容器をその場に捨てずに持ったまま移動することにした。


 まずは洞窟探しをしなければいけない。


 森は相当広い。

 分かりやすい場所に悪魔族の町の入り口があるとは思えない。


 だが、私は空間探知の魔法が使えるので探す手間はなく、一瞬でいくつかの洞窟の場所が分かった。


 見張りがいる洞窟もあるが、いない洞窟もある。


 恐らく見張りがいない洞窟の先の迷路は行き止まりになっている……と見せかけて本当の入り口という可能性もあるが、悪魔族の頂点に立つ私がこそこそとそんな見張りのいないところから行く必要はない。


 見張りが1番多いところから堂々と入る事にする。


 クロが怪我をして帰ってきたことを考えると、私は歓迎されないであろう。


 悪魔族も私の配下をあのような状態にして無事で済むとは思っているわけではないはず。


 奴らは私の家来のクロを攻撃し追い返し、私の顔に泥を塗った。

 十分に後悔させてやろうではないか。




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