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勇者の名前は『魔王』でよろしいですか?▼  作者: 毒の徒華
第3章 戦争を回避してください。▼

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何が目的ですか?▼




【メギド 魔王城 蓮花の部屋】


 ゴルゴタらが帰ってくるなり私に対して避難轟々《ひなんごうごう》であった。


 ゴルゴタもセンジュも私を責めた。

 何故アザレアらを逃がしたのかと。


 死神がアザレアたちを逃がしたことをあっけなくバラしてしまったらしい。


 ゴルゴタから手が出なかったのは幸いだと言える。

 私の腕の一本や二本千切られてもおかしくない状況だった。


 蓮花は「メギドさんの判断で仕方なく……」とかなんとか言って全て私の責任にしたようだ。

 ライリーも同様にゴルゴタとセンジュに睨まれて委縮していた。


 ――この女……


 蓮花に対して文句を言いたかったが、今文句を言われているのは私の方だ。


「エレモフィラがサティアの件を蓮花の代わりに解決すると言ったから、取引として逃がしてやった」


 それ以上説明することがない。

 私も無条件に善良な気持ちで奴らを逃がした訳ではない。


「お前たちに取引の話をしても応じないと思ったのでな。私の判断だ」

「ふざけんなよクソ兄貴!」


 ゴルゴタは私を掴みあげたが、すぐに乱暴に手を放した。


「けっ……死神様からありがたーい話を聞いてきてやったぜぇ……? 記憶消去に協力してやってもいいってよぉ……」

「何!? 奴が協力するというのか?」


 私は死神は協力しないと思っていただけに、かなり驚いた。


 だが、簡単に了承した訳ではないだろう。

 何か条件を出してきたはずだ。


「交換条件としてあのクソ勇者らをぶっ殺せってよ」

「アザレアらをか……?」


 神の加護がない状態でもアザレアらは十分に実力があるように見えた。

 蓮花とゴルゴタが不意打ちで捉えることができたらしいが、正面から戦った場合はかなりの強敵のはず。


 ――相変わらず嫌な条件を出してくるな


「その場合、サティアさんの件は白紙になります。どうしても死神はサティアさんを元の姿に戻すのは許さないようです」


 ――やはりサティアの件は見逃さないか……


 その話を聞いた後にセンジュの顔を見るが、やはり暗い表情をしている。

 もう少しで手が届きそうなところでいつも手が届かない。


「……とりあえず、死神に聞いた話を私たちに聞かせてもらおうか」


 そこからセンジュ、蓮花、ゴルゴタが聞いてきた死神からの話を聞いた。




 ***




【メギド 魔王城 蓮花の部屋】


「信じられん……」


 聞けば聞くほど死神との話は信じられないことばかりだった。


 偶然の一致とはいえ、蓮花を魔人化させた際にゴルゴタの身体を使ったことが功を奏した事も、それに対してあっけなく死神が降参するような態度を取ったことも。


 サティアの件に手を出そうとしたらゴルゴタを徹底的に苦しめるというのは、ただの死神の脅しだった。

 推測するに、元々『死神の咎』を身体に取り込んでいるゴルゴタは死神の力が及ばないらしい。


 それもフリの可能性もあるが、センジュの話と死神の話を聞いた印象を合わせて考えれば騙している訳でもないだろう。


 だが、ゴルゴタや蓮花が死神にどういった有効打があるのかは不明。


 身体を壊してしまっても死神は概念だ。


 身体を壊しても死神は別に困るほどの事はない……とも考えられるが、わざわざ長年センジュに身体を提供させているところを考えると、実態を持たなければ死神とて無事に済まないのではないか。


 代替案としてアザレアらを始末することが条件。

 サティアの件は振出しに戻った。


 だが、極大魔方陣でサティアを消し去るという方法はまだ試していない。


 死神は極大魔方陣の事を何も言及していなかったが、それは失敗するから言及しなかったのか、それとも死神にとっても不確定な要素だから言及しなかったのか……


「センジュ、もう少し別の方法を探してみる。私としてはこの女を死神に差し出すのが手っ取り早いのだがな」

「駄目だ。ぶち殺すぞクソ兄貴」

「だから別の方法を探すと言っているだろう」


 とは言ったものの、別の方法など簡単に見つかる訳がない。

 これは資料などがない分、蓮花やライリーだけではなく私も考えなければならない。


 だが、その場合は死神が関与してくる可能性も十分に考えられる。


 それをどう回避していくのか。


 とはいえ、私の冴えわたっている頭脳でまずは死神からの譲歩を得た。

 この調子で今までの経緯から必要な情報を引き抜いて再構築し、この状況を打開したい。


 ――だが、弱体化した神と魔神を剣で殺すというのはどういうことだ。奴らは今身体を持っていないという話だったが


 それにどこにいるのかすら分からない。


 だが、特定の状況の際に出てくることもある程度推測が立てられる。


 神は魔族が人間を殺したとき、勇者の血筋の者に干渉してくる。

 魔神は悪魔族が別世界に行こうとしたときに干渉してくると予想は立てられる。


 それにはまず、悪魔族にどのように、いつ実行する予定なのか確認する必要がある。


 それまでに私たちはアザレアたちを始末しなければならない。

 そして三神を捕縛しようとした魔法式の完成もさせなければいけない。


 どの程度猶予のある話なのか分からないが、そう悠長に構えている場合ではなさそうだ。


「センジュとゴルゴタと蓮花は悪魔族の元へ行って詳細を聞いてきてくれ。私はアザレアたちに話をつけに行く。あまり猶予のある話でもなさそうだ。ライリーは三神捕縛式の完成を急げ」

「あぁ!? 俺様達に命令できる立場かよてめぇ!」


 ゴルゴタはまだ怒っているようで私の胸倉を掴みあげて威嚇してくる。


「今、1番無駄のない作戦だ。悪魔族が別世界にいつ行くのか分からないが魔神が干渉してくる可能性が高い以上、その好機を逃すべきではない」

「采配が間違ってるぜぇ……俺様達がクソ勇者どもの始末に行く。悪魔族が嘘をついてるかどうかてめぇしか分からねぇからなぁ……ジジイと俺様と人殺しでクソ勇者を始末しに行けば憂さ晴らしもできるしぃ? キヒヒヒヒヒ……」

「駄目だ。神が干渉してくる可能性がある。ましてアザレアは以前の真の勇者の器だであり、危険だ。始末するなら魔族の我々がするのではなく、自決させるしかない」


 自決させるとしても、アザレア、イベリス、エレモフィラはいいとして、ウツギが問題だ。


 ウツギは記憶を切除してしまった。


 私が話をしたとしてもウツギが理解するとは思えない。

 一緒に帰ったイザヤとかいう奴がそれを許す訳がないし、どうしたものか。


「ライリー、お前ならウツギを始末できるか?」

「……できるとは思うけど、私は捕縛魔法の完成を急げって言ってなかった?」

「両方やれ」

「無茶苦茶言うね……できなくもないけど……」


 ライリーは暗部司令官として私とゴルゴタ、蓮花と同等に戦えるほどの実力がある。

 ウツギやイザヤがどの程度のものなのか分からないが、ライリーが相手なら問題ないはずだ。


「心配している訳ではないが、ぬかるなよ。間違って始末されるようなことにならないようにな」

「忘れてもらっては困るな。私は暗部司令官だ……ったからね」


 もうライリーは私たち側……というか、蓮花についた。


 そこが怖いところでもある。

 蓮花が右と言えば右、左と言えば左にライリーもゴルゴタも動いてしまう。


 結局、蓮花は弟の蘇生以外に何を望んでいる?


 今はゴルゴタと馴れ合っているが、何を考えているのかは未だに分からない。


 魔人化して今は大人しくしているが、今後この女はどうするつもりなんだ。

 人間を滅ぼすという目的がない今、何を目的にゴルゴタに従う?


 不確定要素は排除しておきたかったので、私は蓮花に問うた。


「蓮花」

「なんですか?」

「お前、今何が目的でここにいるんだ?」

「…………」


 目的を聞いた私の方を見て蓮花は少し考えるように頭をかたむけて考えていた。


「……楽しいから? サティアさんの件もなんとかしたいですし、三神の件もなんとかしたいですし。他にすることもないですから」

「お前はそんな慈善事業家じゃないだろう。だが嘘ではなさそうだな。暇つぶしでこんな危険な事をして楽しんでいるのか」


 嘘を言っている訳ではないのに全く信用できない。


「暇つぶしなんて随分聞こえが悪いですね。ですが、正直に言って他に何をしたらいいか分からないのは本当です。死刑になる身でしたからね。先の事なんて考えてませんでしたよ」

「兄貴ぃ……蓮花ちゃんにつっかかるなよ。そんなにコイツの事が怖ぇのかぁ? ヒャハハハハッ」


 ゴルゴタは蓮花の肩に腕を乗せながら私を見て挑発しながら笑っている。


「あぁ、恐ろしいな。狡猾こうかつに立ち回るお前がいつ私の敵側になるのかと思うとゾッとする」

「今のところ魔族に恨みもないですし、特に何もないですよ」

「いつまでもそうならいいがな」


 今のところ敵意のない様子の蓮花を確認したところで、私は采配を考え直す。


 ――高位悪魔族は狡猾だ。平然と嘘をつく。ここは嘘が見抜ける私が行った方がいいか


 だが、アザレアらの件もある。

 ゴルゴタと蓮花とセンジュの手が空くのは勿体ない。


 蓮花は半分魔族になったのでウツギを殺しに行かせる訳にはいかない。


「私、少し確認したいことがあるので席を外してもいいですか」

「ンだよ、確認したいことって」

「呪われた町の資料、もう少し調べてみようと思うんです。持ってきた資料だけではなく、町へ行って直に調べ直したいんですよね。あれが全てという訳でもなさそうですし」

「あーあー、クソ兄貴が俺様に向かってあれも駄目これも駄目って言うから、俺様も呪われた町行ってみるかぁ……」

「でしたら、わたくしも同行いたします。よろしいでしょうかメギドお坊ちゃま」


 それも手だ。

 琉鬼が運びきれていない資料もまだ沢山あるだろう。


 今はとにかく情報が欲しい。


「私はアザレアらのところに行った後、悪魔族のところに言って様子を見てくる。その前に魔機械族のところへ行って量産される予定のポーションを受け取ってくる。ライリーはシータの町へ行ってウツギの様子を見て来い」

「はいはい……人使いが荒いね」


 ゴルゴタはあまり納得していなそうだったが、一先ひとまずのやるべきことが決まった。


 私は魔機械族の町へと向かうことにした。




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