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勇者の名前は『魔王』でよろしいですか?▼  作者: 毒の徒華
第3章 戦争を回避してください。▼

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カナンは必死に食らいついている。▼




【メギド 魔王城 蓮花の部屋】


 紙に血を垂らすと別の文章が浮かび上がってくる事が分かったが、血が乾いていくと徐々にその文字は薄れていってしまった。


 再び血をつけても二度は文字は浮かび上がってこない。


 その文字が見れるのは1度きりだ。


 なので、私は一度全ての書類をゴルゴタから遠ざけた。

 ゴルゴタの近くにあってはまた血を垂らしかねない。


 ここはセンジュや蓮花、ライリー全員が揃ってから始めた方がいい。


「なんでこんな面倒な仕掛けにしたかねぇ……?」

「三神が実在する以上は神殺しなど禁忌中の禁忌だ。このくらい用心していても驚きはしない」


 ただ、発現する条件が分からない。

 ゴルゴタの血でそうなったが、血でなければいけないのか、水でもいいのか、その辺りは不明確だ。


 下手に魔法で解析しようとして失敗したら目も当てられない為、実際に隠し文字が顕現けんげんしたゴルゴタの血を使うという堅実な方法を取ることにした。


「人間が神を作ったというのはどういう意味だ?」

「それがマジって信憑性あんのかぁ?」

「それは分からないな。呪われた町の住民が何故そんな情報を持っているのかも疑問だ」

「キヒャヒャッ……三神の逆鱗に触れて滅ぼされるような連中だからなぁ? あの町の異形と言葉が通じれば――――」


 ゴルゴタがそこまで言ったところで、私はすぐにあることを思い出した。


 ――蓮花の言っていたダイブが使えたら……


 だが、蓮花は今回復魔法が使えない。

 ダイブの技術を信用している訳ではないが、何か他の方法はないか。


 異形の者を人間に戻すのは死神が張っているから無理だ。

 だが、記憶をのぞくのはセーフか。


 蓮花の記憶の転写の技術の応用でなんとかならないのか。


 駄目だ。

 蓮花頼みが過ぎる。


 あるいはライリーなら蓮花から教わって記憶の転写魔法の応用魔法ができるか?


 ただ、あの呪われた町から異形の者を連れ出して無事で済むのかどうかも怪しい。

 サティアは外にいるが、それはなるべくしてなっただけで呪われた町の異形は町ごと呪われている。


 本来であれば入ることもはばかられる場所だ。

 入るのも憚られるなら出るのも憚られるという理屈も十分考えられる。


 実際に異形の者たちはあの呪われた町から出ようとしない。

 あの場所から出られない限りは、ライリーも当然入れないし対処のしようがない。


 ――そもそも今の私はあの場所に近づけないしな……


「あの町の異形の者を連れ出せるかどうか試したいが、失敗した時の損失が大きすぎる」

「んあ? 連れ出してどうすんだよ」

「蓮花の記憶の転写魔法の応用でなんとかできないかと思ってな。蓮花が無理ならライリーだ」

「ヒャハハハハハッ、結局兄貴も蓮花ちゃん頼みじゃねぇかよ。みっともねぇなぁ……キヒヒヒヒ……」

「馬鹿を言うな。使うものはなんでも使う。それで戦争が避けられるなら安いものだ」


 私とゴルゴタが話をしている最中、扉をノックする音が聞こえた。

 センジュかと一瞬思ったが、情けない声で「入ってもいいでしょうか」と言っている声を聞いて、それがカナンだったとすぐに分かった。


「カナンに何をさせているんだ?」

「さぁ? 無茶ぶりじゃね」

「はぁ……入れ」

「失礼します!!」


 私は久々にカナンを見たが、相当にやつれているように見えた。

 相当にカナンは酷使されているのだろう。


 蓮花の奴隷ということはゴルゴタからも過剰な要求をされていることは明白。


 ただ、前の死んだような表情ではなく多少活き活きしている様子であった。


「蓮花ちゃんが命令した魔法式、使えるようになったのかぁ? キヒヒヒ」

「す、すみません! できませんでした……もっと時間をください! ……あれ、蓮花様は……?」

「あぁ? できませんでしたじゃねぇよ。ざけんなクソガキ。やる気がねぇならさっさと出てけ」

「やる気はあります! 雑用でもなんでもやりますから、ここに置いてください!」


 必死にゴルゴタに頭を下げるカナンを見ていて本当に不憫に感じた。

 本当に言葉の通り雑用を散々させられているのだろう。


 それで回復魔法士の能力が上がる訳でもないのになんとしてでも蓮花に気に入られようと邁進まいしんしている様子。


「まだやってるのかカナン。諦めて帰ったらどうだ」

「諦めません! 絶対蓮花様から回復魔法を教えていただいて――――」

「うぜぇなぁ……教えてもらうなんて態度でいることが気に入らねぇ……人殺しはてめぇに手取り足取り指導してやるような時間はねぇんだよ。ぶち殺すぞクソガキ」

「す、すみません! 見て勉強させていただきます!」


 カナンが必死になっている最中、ライリーを連れて蓮花が戻ってきた。


「お疲れ様です!」

「……」


 腰から90度のお辞儀をしているカナンを蓮花は無視して相手すらしない。


「あれ、書類が随分綺麗に揃えられてますけど……」

「この書面、血に反応して別の文字が浮かんでくることが分かった。ただし1度だけだ。ゴルゴタの血がつかないように綺麗にまとめておいた」

「…………」


 蓮花は私がわざわざ綺麗に揃えた書類の山を見て嫌そうな顔をした。


「一応、私に分かりやすいように並べてあったんですけど」

「そうだろうなとは思ったが手遅れになる前に緊急避難した。また我々で解読するのだからそんな険しい顔をするな」

「お、俺も手伝わせていただけるんですか!?」


 空気が読めないカナンが話に割って入ってくるが、蓮花はその辺にあったどうでも良いような紙にその辺に転がっているペンでカリカリと魔法式を書いてカナンに押し付ける。


「鬱陶しいからその魔法式の練習でもしてて。庭の人間数人なら使っていいから」


 あくまでカナンはこの部屋から追い出したい様子。

 カナンは少し残念そうな表情をしたが、この場にいたいとごねてもゴルゴタか蓮花に殺されるのがオチだとわきまえているのか、「ありがとうございます!」と言って出て行った。


「また無茶な魔法式を……栄養剤を作るのでさえやっとの彼には無理だよ」

「無理を承知で振ってるんですよ。センジュさんも一緒に解読手伝っていただけませんか? 結構難航しそうなので」

「わたくしでお役に立てるなら尽力いたします」


 全員揃ったところで私は先ほどあった事象の説明をした。

 ゴルゴタの血で隠し文字が浮かび上がった事。

 そこに書かれていた事。


 神が人間を作ったのではなく、人間が神を作ったという文言が書かれていた事。

 神殺しの方法について書かれている可能性がある事。


「呪われた町の連中から記憶をなんとか読み取れないか?」

「今は解呪の力が発揮できないので私は無理ですね。ライリーは?」

「呪われた町の呪いを防ぎながら他の魔法を使うのはかなり難易度が高い。無理だ」

「情けないな。暗部の司令官なのだろう?」

「それとこれは全然関係ない。得手不得手があるし、蓮花の才能を私の才能と比較しないでほしいものだね。先に言っておくけどあそこの町の異形の者はあの町から出せないよ。出した瞬間に身体が崩れ始める」


 やはり出せないか……


 そう上手くはいかないものだ。

 だが、この膨大な資料に他のヒントが沢山あるはずだ。


 それが解読できれば何とかなる。


「まずは表面の書面の解読をしっかりする必要がある。血に浸しては読めなくなってしまうからな」

「今からするんですか? 皆さんそれぞれ疲れているようなので明日にしませんか? 恐らく書類の量からしても相当集中しなければできないと思いますし。私もまだ本調子ではないので早めに休みたいです」


 ここまできてまた蓮花はマイペースで我儘を言っている。


 1日でも早く三神の情報を掴みたいが、山積みになっている書類は相当な量がある。

 私もそれを見て気持ちが萎える部分があるのも事実だ。


「ライリーは地下牢で休んでたから元気だよね?」

「……まず食事くらいさせて欲しいものだけどね」

「けっ、温情で生かしてやってるだけの身分で随分偉そうだなぁオイ」

「まぁまぁ、皆様お食事にして明日から本腰を入れて解読いたしましょう。メギドお坊ちゃまは入浴もされたいでしょうし」


 全くその通りだ。

 私はゆっくり湯船に浸かって疲れと汚れを落としたい。


「わたくしが料理をご用意いたしますので、皆様食堂にまいりましょう」


 センジュの言葉でその場は丸く収まり、私たちは食堂に向かうことになった。




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