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勇者の名前は『魔王』でよろしいですか?▼  作者: 毒の徒華
第3章 戦争を回避してください。▼

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呪われた町の資料の解読をしています。▼




【メギド 魔王城 蓮花の部屋の前】


 私が蓮花の部屋の前までくると、そこにはセンジュがいた。


「おかえりなさいませメギドお坊ちゃま」

「早いなセンジュ」

「ええ、空間転移魔法で戻ってまいりましたので」


 センジュの身体なら空間転移魔法の負荷も関係ないだろう。


「センジュからもらったこのポーション、かなり利便性がいい。量産したい」

「そうおっしゃると思いまして、魔機械族に量産の依頼をしてまいりました。我々で量産するのはいささか手間がかかりますので」

「材料は限度があるだろう?」

「材料も魔機械族が管理するのですぐに量産が可能です」


 直接関りがあったのは魔族の楽園の35号だけだが、あの文明の発展具合から見て量産も可能なのだろう。


「それは助かる。それで、蓮花とゴルゴタの様子はどうだ?」

「今集中していらっしゃるようです。庭に置いてあった資料の解読解析をしているらしいです」

「そうか。集中しているなら今はいい」


 集中しているところを阻害してしまうと解読進行が遅れてしまう。


 それに、あの書類を解呪してから解読しているのかどうかも分からない。

 私の死の花に干渉してしまっては困る。


 ……と、なると私ができることはなんだろうか。


 龍族の元に行って釘は刺してきた。

 蓮花は研究資料を解読している様子。

 アザレアは婚約者を見つけたし、エレモフィラにはじまりの勇者の骨を解析してもらっている。


 クロが悪魔族のところに行ったのを確認したい気持ちもあるが、こんな余裕ができたときこそゆっくりと優雅に風呂にでも入って――――


 ガチャリ。


「メギドさん、今いいですか?」


 私がこれから羽根を伸ばしてゆっくり風呂にでも入ろうかとしているところに、蓮花が顔を扉から出した。


 なんとタイミングの悪い。


 私とセンジュの話声が聞こえたから私に話しかけてきたのだろう。


「貴方が再三私に解析しろと言ってきた呪われた町から回収してきた資料についてのことです」


 そう厭味いやみたっぷりに言われてしまっては「断る」とは言いづらい。


「私は呪われた書類に近づけない」

「解呪はなんとかしてあるので近づいても大丈夫です。どうぞ」


 蓮花の部屋に入ると相変わらずぐちゃぐちゃになっていた。

 書類も筆記用具も。


 実験用の人間がいないだけまだマシだ。


 ゴルゴタは解析作業に飽きているのか、蓮花のベッドで横になって退屈そうにしていた。

 私の方を一瞥いちべつすると、嫌そうに身体を起こしてベッドに腰掛けるような姿勢をとる。


「それで、どうだった?」

「全ては解析できていませんが、死神を捕縛しようとした際に使われたと思われる魔法式が書かれている紙がありました」


 蓮花はその紙を紙の山の中から引っ張り出して手渡してきた。


 その魔法式を見た私の感想だが……複雑すぎて一瞬では理解ができなかった。

 一瞬で全ては理解できなかったが、ところどころ荒っぽいところがあるのは見受けられる。


 これでは失敗しても仕方がないなという印象だ。


 慌てて作ったような、そんな魔法式。


 死神が直に警告に来たのだから焦って作ったというのも無理からぬ話だとは思う。


「それを見て、三神捕縛は可能かと思いますか?」

「……まだ読み切れていないから何とも言えないが、雑な部分を訂正すれば可能性はあるかもな」

「私は捕縛よりも消滅させる方がいいと思います」


 何を言っているのか。

 捕縛すらできるかどうか分からないのに消滅させるなど、机上の空論もいいところだ。


「ザっと見てみましたが、永遠に捕縛することはできないと思います。そんな都合のいいことは無理かと」

「それもそうだな」

「ですが使い道はあります。永遠に捕縛は無理でも、一時的に動きを封じることができれば有用性はあるかもしれません」


 蓮花が淡々と話している間、ゴルゴタは書類の数枚を取って確認していたが、ポイッとその辺に投げ捨ててカリッ……カリッ……と自分の指を嚙んでいた。


「兄貴も手伝えよ。俺はもう飽きた」

「真面目にやれ」

「頭脳労働は兄貴の担当だろ。地下牢のライリーとかいうクソ野郎を連れてくる」


 まだゴルゴタとセンジュはアザレアらが地下牢にいると思っている。

 だが、逃げた痕跡は残しておいた。


 逃げたと知ったらセンジュとゴルゴタはどう出るだろうか。


 特にセンジュはすぐにでも始末したいと言っていたほどだ。

 ゴルゴタもアザレアらを探しに行ってしまうかもしれない。


 だが、今は奴らには重要な役割がある。

 だから始末されたら困る。


「私が連れてきますよ。私が連れてきた方が献身的について来ると思いますし。ずっと座っていたので少し身体を動かしてきます」


 ゴルゴタが地下に行くのを阻止するべく、自然に蓮花が自分で行くと言い出した。


「あっそ。俺様も行く」

「お前は待て。龍族のところに行っていた話を詳しく聞かせてもらう」

「あぁ? だりぃ」

「すぐ戻りますから、兄弟水入らずでお話しください」


 ゴルゴタの返事を待たずして蓮花はスタスタと部屋から出て行った。


 今は良くてもずっとは隠し通すことはできない。

 いずれはバレてしまうだろう。


 だが、今バレなければまだいい。


 ――とはいえ、ゴルゴタもセンジュも感が鋭いからな……上手く隠し通せればいいが


「龍族の町に行ってきた。随分派手に暴れたようだな。そこら中に血が飛び散って岩場も相当崩れていたぞ」

「ヒャハハハハッ、ざまぁみやがれってんだ」

「笑い事じゃない。何故そんなことをした?」

「兄貴も分かるだろ? 親父に会ったときに無性にムカついたからだ……俺様たちは死んだお袋の最初のガキの代わりの存在なんだって話しただろぉ……? ンなこと分かっちまったらブチ切れるのも無理ないだろ……キヒヒヒ……兄貴だって親父に会った時ムカついたんじゃねぇのかぁ……?」


 否定はできない。

 私も蘭柳に会った際には苛立ちを覚えたものだ。


 かといって暴力を振るうことはなかった。

 だが、物理的な暴力は振るわなかったが言葉の暴力を振るったのは否定できない。


 結局、言語か有形力かの違いだけで私とゴルゴタの反応はそれほど変わらないのは事実だ。


「血の繋がりなんてどうでもいい。お袋とどうだったのかもなぁ……でもよぉ、今更父親面されんのはスゲー頭に来たぜ」

「私もそう思わないわけではなかったがな」

「だろぉ? キヒヒヒ……だから、俺様はてめぇとは何の関係もねぇって証として大暴れしてきてやった。ヒャハハハハッ」


 アガルタがゴルゴタの事をどう思っているのかは私は知らない。


 だが、センジュの話を聞く限りでは少なからず大切に思っていたのではないか。


 龍族の町に行った時にアガルタには会っていないが、会って来ればよかっただろうか。

 しかし、ゴルゴタに殺されかけ、仲間も半殺しにされ、兄弟だと分かっている私に会わせる顔はないだろう。


「まぁ、結果としてレインの探していたノエルが見つかったし、白羽根の元から脱したから不幸中の幸いだな」

「どこが幸いなんだよ。俺様は2回もぶっ殺されたぜぇ……? なんだってんだよあの女……」

「爆発物のようなものだ。刺激しなければその辺りにいるひ弱な人間と変わらない」

「ちっ……気に入らねぇ……」


 ガリッ……ガリッ……


 ゴルゴタの指からは血が滴り落ちる。


 それはいつものことだったが、その血が呪われた町の書面に落ちると紙に反応があった。

 表面的なインクで書かれている事柄とは全く違う内容が浮かび上がってきた。


「見ろ。血に反応して別の文字が浮かび上がってきた」

「あぁ?」


 ゴルゴタの血がついている部分はほんの少しだったが、断片的に読み取れる部分にはこう書かれていた。


「――――は、人間を作っ――――では――――」


「――――神殺しの――――は――――」


 ()()()だと……?


 私は垂れたゴルゴタの血を指で広げて読める範囲を拡大した。


「神は、人間を作ったのではない。人間が神を作ったのだ」


 確かにその書面にはそう書かれていた。




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