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勇者の名前は『魔王』でよろしいですか?▼  作者: 毒の徒華
第2章 人喰いアギエラの復活を阻止してください。▼
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イベント:国王を退けてください。▼




 広間で魔王と国王の前代未聞の一騎打ちが始まろうとしていた。


 とはいえ、普通に戦ったとしたら力量の差的に国王が簡単にメギドが勝ってしまう。


 だからメギドに目隠しをし、攻撃をしない、魔法を使わない、ただひたすら国王の攻撃を3分間かわすだけというハンデをつけた。


 メギドは仁王立ちをして立っていて、指を何度かトントン……とせわしなく動かしている。


「さっさと始めろ」


 戦いに適した格好というものがある。


 国王は豪奢な服から動きやすそうな格闘技へと着替え、準備万端という様子だ。


 メギドは目隠しの布の色に合わせて服を着替えた……が、その恰好はあまりにも戦いに向いている格好とは言えない。

 華美なフリルのついている動きにくそうな服だった。

 動きやすさよりもファッション性を優先している。


 ――そんな服着て……また「汚れた」とか言って怒り出すんじゃないだろうな……


「メギド。本当にその恰好でいいのか? もっとこう……適した格好ってもんがあるんじゃないのか?」

「私の溢れ出る魅力を存分に引き出すのに、この服装は十分適しているだろう」

「ちげーよ! 魅力を引き出すとかじゃなくて! これから戦うんだからさ、戦いに適した格好だよ!」

「やれやれ……これだからモヤシは華がなくて困る」

「モヤシじゃねぇ! 俺はタ・カ・シ! それにモヤシだって花咲くぞ!」

「そういう話じゃないだろう。だが、お前は頭の中に花が咲いているようだな」

「なんだとぉおお!?」


 俺たちが言い合っているうちに、国王は広間に簡易的に作られた土俵の中に入った。

 半径5メートルほどの円の中、メギドは国王の攻撃を避けなければならない。


「始めようじゃないか」


 ジャリッ……


 国王は手に剣を持っていた。

 地面に刃の部分を引きずり、そして振り上げて切っ先をメギドに向けて宣戦布告ともとれる行為をする。


 ――これが一国の王のやることか?


 魔族と人類の全面戦争になってしまいかねない粗暴な行為だ。


 それに、剣をよく見ると、玩具や稽古用の摸造刀などではない。

 戦いに使う殺傷能力のある剣だ。

 剣の刃がギラリと光を反射して煌めいた。


「お、おい! なんで真剣を使うんだよ! 模造刀とかでいいだろ!」

「真剣を使ったらいけないというルールはなかったはずだ」


 ニヤニヤしながら国王は言う。


 国を代表するものとして、俺たち人間の代表者がこれでは恥ずかしい。

 正々堂々という意識はこの国王にはないのだろうか。


「そんなのルールに出すまでもなく駄目に決まってるだろうが! メギドが怪我したらどうすんだよ!」

「おいモヤシ、私がこんな奴の剣を受けるとわずかでも思うのか? 私は真剣で構わないぞ」


 メルはレインを抱きかかえながら不安そうな表情でメギドの方を見ていた。


「まおうさま……本当に大丈夫ですか? 目隠しまでしているのに……」

「問題ない。心配するな。大したハンデでもないだろう」

「でも、下手したら殺されちゃうよ? 向こうは殺す気満々みたいだし」


 国王はブンッ……ブンッ! と剣を振って感触を確かめている様子だった。


 レインは国王の方を向くと鋭い目つきで睨みつけた。

 子供とは思えないほどの強い殺気を放っている。


「いいだろう。始めようではないか」


 俺たちが不安な面持ちで見送る中、メギドは国王と同じ土俵の中に入っていった。


「審判はこちらから2人、そちらから2人出して攻撃が当たったかどうかの判定をしてもらおうか」

「そうか。では、このモヤシと佐藤を審判とする。おい、お前たち。しっかりと見ているように」

「あぁ。しっかり見てるぜ。絶対負けるなよ。あと俺はタカシな」

「当然だ」


 俺と佐藤がメギドたちを挟んで円の0度地点と180度地点にそれぞれが立ってスタンバイした。

 国王側の審判も同じように位置につく。


 時間を計るようの砂時計を審判が見える位置に置いた。


「それでは国王様対、魔王様の試合を始めます。ルールを確認します。国王様が3分以内に魔王様に一撃を入れることができたら、国王様の勝利。魔王様側は国王様に攻撃行為を行わない、魔法の使用は禁止、作成した円の中から出たら無条件に負け。これで両者よろしいですね?」

「“一撃”というのは、剣を使用する以上は私が出血を伴う怪我をしたらという捉え方でいいのか? 服をかすめただけで“当たった”と言いがかりをつけられては困るからな」

「それでいいでしょう。他に確認しておくことはありますか?」

「まぁ、それでいいだろう。後は特に確認することはない」

「分かりました。それでは始めます。両者、構え……」


 国王は剣を構え、メギドに向けた。

 明らかに殺意を抱いており、あわよくばメギドを殺すつもりという意気込みが伝わってくる。


 それに対してメギドは、これから戦うという恰好には見えないような服を着て悠々と腕を組んでいた。


 ――本当に大丈夫か……? あんな格好で……


 負けた時に「動きにくい服だったから負けた」などと言い訳をするのではないかと不安に思う。


「始めっ!」


 審判の合図とともに砂時計はひっくり返された。


 それと同時に国王はメギドに対して容赦なく切りかかった。

 メギドは腕を組んだまま縦振りを素早く横に身をかわす。


 国王が横振りをすれば後ろに下がり、簡単にメギドは剣をかわした。


 どれだけ剣をメギドに向けようとも、服にかすりもしなかった。


 その様子を見ていて、周りを取り囲んでいた町民や家臣、勇者たちは驚きのあまりに送っていた声援が途切れる。


「魔王は目隠ししてるし……見えてないんだよな……?」

「本当に見えていないのか? 明らかに見えているような動きだが……いや、見えていてもなかなかあの動きはできないぞ……」


 メギドの目の布はしっかりと目を隠していて、見えている様子はない。


 恐らくメギドは周囲の音を聞いて、目で見なくても王の位置や剣の位置を把握できるのだろう。


 確かに初めて見た人は驚いても仕方がない。

 俺も改めてメギドの軽い身のこなしを見て驚いている。


 いつもすぐに「疲れた」と言って俺の上に乗るくせに。


「まおうさま頑張ってくださいー!」


 隣でメルは一生懸命メギドを応援していた。


 その間にもメギドはずっと国王の剣を避け続けている。

 まだ国王が剣を振るい始めて30秒程度だが、国王の動きはすぐに鈍くなってきていた。


「なぜ当たらない……!? 見えているのか!? 卑怯な手を使っているのか!? おい審判! これは魔法を使っているのではないか!?」

「魔法ではない。お前の振る剣の間抜けな風切り音や、お前の聞き苦しい息遣い、空気の振動を感じれば視覚として見えていなくても避けるのはそれほど難しいことではない」

「おのれ……ハメおったな……!」

「相手の力量を見定められないお前が悪いだろう」


 国王は激怒して力任せに剣を振りぬくが、メギドに少しもかすりもしない。

 あんなに当たり判定の大きい服を着ているのにもかかわらず、服にすらその剣は当たることはなかった。


「はぁ……はぁ……うぉおおおおっ!!」

「うるさい。黙って剣を振れ。ただでさえ息遣いが粗いのが聞き苦しくて仕方がないのだから」

「うるさいっ!」


 1分程度が経過したが、もう後の2分は見るまでもないような惨憺さんたんたる状態だ。


 こういう勝負の場合、メギドが一瞬の不意を突かれて危うい状態になるが「それでも最後はメギドが勝つ!」……のような展開で「お互い良い勝負だった」と和解するというテンプレートな流れがあるだろう。


 が……、この勝負にはまったく華がない。

 ただただみっともない泥仕合だ。


 唯一華があるとしたらそれはメギドの言っていた通り、その衣装だ。


 まるで闘牛士が闘牛をしているようだ。

 衣服がわざとらしくはためいて、牛(国王)を軽やかにいなす。


 もはや国王はメギドの玩具に成り下がっていた。


「はぁ……もう十分だろう。続けていれば当たるということもないぞ。飽きた。つくづく時間の無駄に思う。私の生きている時間の3分をお前に割かれていることに対して憤りすら感じてきた」

「黙れっ!! 散々目隠しの布ごときに時間を割いておいて!」


 その国王の意見はもっともだと俺は思う。


 目隠しの布を選ぶのに時間がかかったことには俺も納得ができない。

 目元を隠すのだから自分では見えないのに……。


 国王はもう初めの勢いもなく、周囲の人も国王を懸命に応援していたが徐々に声が小さくなってきた。


 周りの人々も明らかな実力の差に諦めが混じっている様子だ。


「おーい、メギド」


 俺は国王を玩具にしているメギドに対して話しかけた。


 周囲の声にかき消される程度の声量で呼んだつもりだったが、俺の声が聞こえたようで「なんだ?」とメギドは俺の近場に降り立った。


 国王は疲れ切ったように膝に手をついて肩で息をしている。

 少しばかり休憩のようだった。


 国王に聞こえない程度の小声でメギドに言う。


「全力で叩きのめしてにしてやるな。少し華をもたせてやれよ。和解ができる程度にさ……そっちのほうが交渉もスムーズだろ? ちょっと惜しい演出をしてやるんだよ」

「馬鹿を言うな。華を持つのは常に私だ。あいつにはその辺の雑草でも持たせておけ」

「物理的な話じゃなくてだな……」

「何を話している!? お前の相手は私だっ!!!」


 国王は一時の休憩が終わったのか、怒りに任せて剣を突き出した。

 メギドがそれを避けた瞬間、剣は勢いよく俺の腹めがけて振りぬかれた。


 ――え……


 俺は国王が突き出す剣がやけにハッキリ見えた。

 こういうときはゆっくりに見えるものだと思っていたが、別段ゆっくりには見えなかった。


 ――刺さる……!


 俺は避けることもできずに、そのまま何もできない状態のままだった。


 あと3mm。


 あと3mm以上剣が前に突き出されていたら、俺の腹に突き刺さっていた。


「なっ……」


 俺に剣が刺さらなかったのは、メギドは国王の剣を指先で挟んで完璧に止めていたからだ。

 俺は口を半開きにしてメギドの方を見つめるしかなかった。


「おい、審判。部外者に攻撃するのはありなのか? 私のしもべが負傷する所だったぞ」


 国王はメギドに掴まれた剣をなんとか抜こうとするが、びくともしない。

 全力で引っ張ったり押したりしているが、数ミリすらも動く気配がなかった。


「結果として当たっていないのでセーフとさせていただきます」

「そういう問題ではないだろう。私が止めたから当たらなかっただけだ。私が止めなかったら刺さっていた。勢いとしても、死んでもおかしくないほどであった」

「だとしても事故ですし……悪意を持って当てようとしたわけではないと思いますので……」


 審判は必死に国王の顔色をうかがいながら、一生懸命メギドに対して釈明をする。


「事故で済ませられるか。おい、お前。お前はどう思うんだ?」


 メギドは国王に向かって剣を掴んだまま問う。

 先ほどまでふざけていたようにあしらっていたメギドだが、なんだか怒っているようだった。


「私のしもべに対して剣が当たりそうになったことに対して、何か言うべきことがあるのではないか?」

「おい……っ! 放せっ……!!」

「お前が放したらどうだ? 無様に剣を何度も振って、これだけハンデがあっても少しも当たりはしない。みっともないと思わないのか? 少しでも勝算があると思ったことを恥ずかしいと思わないのか?」


 衆人環視の中、剣を押さえられたままの国王はメギドに説教されていた。


 そんなメギドの叱責の声などまったく国王には届かなかった。

 ついに国王はびくともしない剣から手を離し、拳で殴り掛かった。


 無様に拳は宙を掻き、やはりメギドを捕えることは出来ない。


 メギドは持っていた剣を人のいない場外の方へと投げ捨てた。


「おい、私の質問に答えろ。未遂に終わったが、あのモヤシに剣が当たりそうになったことについて何か言うべきことがあるのではないかと聞いているのだ」

「武器を振り回して避ける相手に当てようとしている以上、事故はつきものだ! 死ななかったのだから儲けたと思え!」

「それは……本気で言っているのか?」

「そうだ!」


 パァン!!


 国王は次の瞬間、はじけるような音と共に空中に一回転しながら舞った。

 受け身を取ることもなく、地面にあっけなく倒れる。


 国王本人も、周囲の人々も何が起こったのかすぐには解らなかっただろう。


「え……」

「もうよい。こんなろくでなしに教えてもらう事など何一つない。本当に時間の無駄だったようだな。民を守ろうとしない王など、やめてしまえ」


 メギドが国王に向かって平手打ちをしたから、国王は宙を舞った。


「………………」


 国王は左頬が痛いのか、頬を押さえながら身体を半分起こして涙目になっている。今にも泣きだしそうな情けない顔をしていた。


 恐らく、身体が浮くほどの平手打ちを受けたのは初めてのはずだ。

 俺だって体が浮くほどの平手打ちをされたことはない。


「は……反則! 魔王様の攻撃行為を確認! よってこの勝負、国王様の勝ち!」


 我に返った審判が国王の勝利を宣言する。


 明らかなルール違反があったことは否定する余地もない。

 俺も佐藤も何も言えずに黙って呆然としていた。


 周囲から歓声は上がらなかった。

 全員が唖然として涙目になっている国王を見ている。


「おい、お前たち。ここは不愉快だ。下品がうつる。さっさと出るぞ」

「お……おう……」


 メギドはさっさと土俵から出た。

 わざとらしく髪の毛を払って見せる。


「魔道具は……いらないの……か?」

「こんなやつが触った物を触ったら、指先から腐っていくわ」

「でも、今……本人叩いたよね? その理論で行くと、もうメギドの手腐ってるかも」

「一刻も早く手を洗いたい。汚い物を触ってしまった。水と石鹸をすぐに持ってこい」


 メギドが散々悪態をついている中、国王は半ば泣きながら周囲の人間に大声で命令し始めた。


「こいつらを殺せ!!!」


 ――こ、殺せ……!?


 流石に試合とはいえ、国王に手を挙げたのはまずかった。


 それに、攻撃をしないというルールを提示したのはこっちだ。

 それを率先してこちらが破ってしまうのは、やはり大問題だったろう。


 俺は魔王の一派として処刑されるのだと覚悟した。


 ――……って……あれ……?


 国王がそう言ったが、誰もそれを実行しようとしなかった。

 誰もが近場にいる者同士と目を合わせ、暗い表情をしている。


「何をしている! さっさとしろ!! この私に手をあげたのだぞ! ルールを堂々と破るこやつらは信用できない! 魔族と人間の全面戦争だ!!」

「お待ちください国王様」


 もう1人の審判が激高している国王に向かって声をかけた。


「この勝負、魔王様の勝ちです」

「なに!? 明らかなルール違反があっただろう!?」

「確かに平手打ちをして攻撃するのはルール違反です」

「なら私の勝ちだろう!?」

「いえ、それは()()()()()()です」

「どういうことだ?」

「つまり、3分は魔王様が平手打ちをする前に終わっていたのですよ。よって、魔王様の勝ちです」

「なんだと!?」


 俺はすでに落ち切っている砂時計を見た。

 自分が死ぬかどうかの瀬戸際だったので、俺は見ていなかったので実際はどうなのか解らなかった。


「俺も見ていました。確かに数秒の差ではありましたが、魔王様が手をあげたのは砂時計の砂が落ち切った後でした」


 佐藤もそう証言する。


「俺も見た」

「私も見たわ」


 審判ではない取り巻きの人も口々にそう証言した。


「そんなこと!! もう関係ない!!! 勝敗などどうでもいいだろう!? 私に手を挙げたのだぞ!!!」


 喚いている国王を勇者たちは腕を持って担ぐように立たせた。

 国王の左頬はすでに腫れてきていて、ただでさえパンパンの顔が更に膨らんでしまっている。


「行け! 勇者たち! 魔王を殺すのだ!!」

「…………国王様、申し訳ございません。従えません」

「は……?」


 従者は全員が国王から目を背ける。

 誰も国王の目を見ようとしない。


「国王様、国民を大切に思っていない国王様に、もうついて行くことができません」


 その一言に国王はポカンと間抜けな表情で従者の顔を見て、何度か目をしばたかせている。

 他の家臣も躊躇っている様子はあったが、国王に向かって口を開いた。


「目を覚ましてください、国王様! 人類の危機なのですよ!」

「魔王様は人類を救おうとしてくれているんです! 協力して人類を救いましょう!」


 家臣からも、町民からも怒りの声が飛ぶ。


「人類の存亡がかかっているこんな状況ですし、他の者たちもそう思っています。国王様は自分のことばかりで、周りの人のことなんて少しもお考えじゃないではないですか」

「それがなんだというのだ! 私が常に一番だ! 私を守るのが何よりも優先される事項だろう!?」

「…………“雪丸”、“塩”、国王様を一時的にこの町の牢に入れてください」


 そう呼ばれた勇者2人、剣士と格闘家は国王の腕を2人で掴んだ。


「お、おい! 放せ! 無礼者!! 打ち首に処すぞ! こんなことをして、無事に済むと思うな!! 私は一国の王だぞ! おい! 聞いているのか!?」

「少し、頭を冷やしてください」


 喚いている国王は引きずられながら退場していった。

 国王の家臣も国王に頭を下げてそれを見送る。


「魔王様、数々の無礼、申し訳ございませんでした」

「謝罪の気持ちがあるなら、すぐに石鹸を持ってこい」

「石鹸ですか……? はい。少々お待ちください」


 男は石鹸を町民から貸してもらえるように呼びかけを始めた。

 すると、町民が次々と「うちのを使ってください」と自宅に駆け込んでいった。


 メギドが嫌そうに、国王を平手打ちした方の手を見つめていた。

 一刻も早く手を洗いたい様子だ。


「その……メギド、ありがとうな」

「礼を言われるようなことをした覚えはない」

「お前が剣を止めてくれなかったら俺、死んでたかもしれない……死ぬかも知れなかったっていう実感は……まだないけど……」

「髪飾りの付属品とは言え、私の所有物だからな。勝手に壊されたら困るというだけだ」

「俺が本体だ! つーか、お前な、そういうのなんて言うか知ってるか? ツンデレっていうんだ――――へぶっ!」


 バシャン。


 メギドは魔法でわざわざ俺に水をぶっかけた。

 正面からかけられたので、俺はむせた。


「げほっ……げほっごほっ……お前な……俺に水かけんな……暴力反対!」

「お前が調子に乗っているのが悪い。それに、水をかけるのは暴力じゃない。水やりだ」

「俺は植物じゃねぇ!」

「モヤシは適度な水やりが大切だ」

「だ・か・ら! タ・カ・シ!! 人間なの!」


 俺たちが言い合いをしている間に、沢山の人が石鹸を持ってきてくれた。

 メギドはそれを使って丁寧に手を洗っていた。


 そして、いつでもメギドが手を洗えるように、石鹸を常に持ち歩くように申し付けられたのだった……。


 俺が持ち歩く荷物が増えたことに落胆していると、国王の家臣が俺たちに改まって頭を下げてきた。


「魔王様、魔道具についての話を改めてさせてください。お疲れでしょうから、お休みになられて、それからお話をさせていただけましたら幸いです」

「ふむ。いいだろう。いくぞ、お前たち」

「はーい!」


 俺たちはベータの町で魔道具の情報を聞くことになった。




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