衝突も事故の内 上
叱られてから数日後、反省文をシコシコ書いているキリトを横目に、私は真面目に先生の授業を受けている。まさかあの時のチビがこの学年の物理を担当しているとは思ってもいなかった。
オリア学園では総合で20科目以上の教科を習うのだが、その中でもこの物理という教科は大敵だ。21世紀後半から大幅に分野が発展したことに伴い、学習範囲も広くなってしまった。おかげで三年目くらいから何を言っているのか、わけわかめ。真面目に受けているつもりだが、正直今チビが書いている内容もよくわかっていない。前年度の物理の先生は、個人で手厚く指導してくれたためなんとか授業についていくことができたが、今年はどうだろうか?まず前回叱られたことから結構話しかけずらい。あと見た目が完全に小学生で不安。本当に大丈夫なんだろうか。
いやでも確か、ふわふわ浮いているキリトを触れずに落としたのだから、物理系のアルトを持っているのかもしれない。教師がどんなアルトを持っていても関係ないんじゃないかって?アルトは教師にも以外に重要なことなのだ。教育系、指導系のアルトを持っている人は本当に授業がわかりやすい。なんだろう、直接頭に入ってくるような感じ?人類パネエ、って改めて思ったよ。他にも雑談や実験の時とかにもアルトは関わってくる。まぁ、持っていない私が語るのもなんだけどね。
そういえばキリトはずっと反省文を書き続けているが大丈夫なんだろうか。他の時間ならまだしも、本人の前でやるのは流石に…
「おいそこ、何やってんだよ」
ほらバレた。しらねー。
「いやでも、その問題は解き終わってて…」
「これは俺の授業だ」
「あっ…す、すみません」
「じゃあ田中、これ解いて。まず二物体のエネルギーを図示するなら〜〜〜」
「あの、田中じゃなくて…」
「とりあえず解いてみろ」
可哀想に。生徒だけでなく、先生にまでも本名を憶えてもらえていないとは。彼が本名で呼ばれる日は来るのだろうか。
意外にもキリトはあっさりと問題を解いた。なんか悔しい。でもキリトは元から物理が得意だった。そこから重力操作というアルトが来たのかもしれない。実際好きな分野アルトがつくケースも多い。私は特に好きな教科もないからな〜。だからアルトが身につかないのかもしれない。勉強はどの教科もある程度してるけどね。興味がないというかなんというか。アルトは半分諦めてるしいいんだけどね。
「いやー俺やっぱ才能あるわ。アルトもいいの持ってるし。多趣味だし。我ながらすごいと思うわ」
聞いてない。
「おい田中。なにやってんだよ」
「あっいや、なんでもないです」
なんだかんだで授業も終わりに近づいてきた。正直この授業が一番きついかもなー。なんて、考えていたら。
バヒュゥゥゥッッッッッッッッッシュウッッッッッッッッッッッッッッ!
衝撃で教室が半壊する前の一瞬。肉眼では捉えられないほどの速度の物体が先生の体にぶつかるのが見えた。