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爽快⭐️アスラワールド  作者: バットコート
7/13

春下がり。静寂にて

この話が迷走してるわけじゃない。君がこの交差した道の中で迷っているのさ



本を読んでいた。



彼女が読書好きだからというわけではなく。勧められて読んでいるわけでもなかった。その教科書のような本を。

たった一冊。片手に持って。

それは彼女の側面とも表せるが。彼女の軸とも言える。外見のみに縛られるものではなく。もっと深い場所。彼女の心そのものに組み込れる。どちらかがどちらかに支配されているわけではなく、互いに混ざり合って存在する。

彼女は何度も読み直す。ある時は辞書のように、ある時は教本のように。そこに違いはあれど本質は変わない。

内容は彼女以外にはわからない。読まないからではなく、理解できない。教科書のような小難しい本。

わからないのが当然だった。逆にわかるはずがない。だから今考える意味もない。

ただ彼女のその姿が今の私の記憶に強く残っていた。何か因果でもあるかのように。



私はのんびり寮に帰っていた。

その日は特にやることがなかったのだが、いつも通り帰宅するのも味気ない。

少し寄り道して帰ることにした。寄り道といっても店とかによるわけでもなく。本当に別の道によるだけ。自分でも中途半端なことをしていると思っている。しかしこの時期の散歩は思いの外気持ちがいいものだ。暑くもなく寒くもなく。ときより体をすり抜ける春風もまた気持ちいい。 さらにその道を通ると、今では忘れてしまった学園を入学してからの想い出が数多く蘇る。キリトと喧嘩した場所。教室に行きたくなくてみんなで屯した場所。自動販売機を壊したこともあったなぁ。別に感傷に浸っているわけじゃないし、無論ハルに会いたくないわけでもない。繰り返す日常に折れないためのクールタイムだ。


そうこうしているといつもより少し遅く寮に着くいた。扉越しに話しかけてもハルから返事がないので、鍵を使って開けた。まだ帰っていないのかな。


静寂に包まれた部屋の中で一人、ハルは本を読んでいた。音はハルが紙に触れて生まれたもののみであり、光は窓から差す夕日のみ。彼女のピクリとも動かさない表情から読み取れる情報は少なかったが、ハルは優雅に読んでいたというよりはどちらかというと切羽詰まった感じだった。

ハルがこちらに気づいた。


「やぁ」


やはり彼女はたまにミステリアスな一面を見せる。共に生活しいている私ぐらいにしかわからないものだが。今の返事もそうだ。一人での空間を見られた時は普通なんらかの動揺を見せるはずだ。キリトまでとはいかなくても。

口数が少ないという特徴も彼女をミステリアスに仕立て上げている。

キリトは無意識にこんな彼女の一面に、魅入っているのかもしれない。あいつもなかなか女の子を見る目があるのかもなぁ。


最初に彼女がミステリアスな存在だと気づいたのはいつだっただろうか。

初めてあった頃はミステリアスな一面どころか全面わからなかった。あんまり会話しなかったし仕方ないね。

気づいたのは多分アスラという存在が学園内でも知れ渡り始めた頃だろう。学園中がザワついていた時だ。

ハルは落ち着いていた。興味がないわけじゃないけど、驚くようなことでもないそうだ。私も「cool」を装っていたが、内心は穏やかじゃなかった。

何か独特の人生観を持っているのだろう。彼女はそういう自分の考えを人に話したくないタイプだから、哲学的なことは語り合わないのだが、機会があったら是非話をしてみたい。


あと別に私はハルを恐れてはいない。ハルのミステリアスな部分を私は人一倍知っているが、同様に私は他の部分も知っている。急に生意気になったり、普段はかなりドジを踏む。別に常にクールなわけではない。そういうところもハルなのだ。


ただ私のハルが読んでいる本への興味は、日を増すごとに高まっていった。



やっぱ迷走してるわ

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