夢[3-1]
やってしまった。
ついに……ついに、SNSを始めてしまった。
使い方は解らないが、そのうち慣れてくるだろう。解らなければ友人に聞けばいい。という訳で、
「ラーインのアイデーを教えてつかぁさい!」
シュウ君に思いきって聞いた。昨日の今日なので流石に驚きを隠しきれていないが、笑って教えてくれた。
「次いでに高校の名前を教えておきましょうか?――もしヒトミさんがSNSを使えなくても、此方なら解るでしょ?」
「うん。私は地理感覚は秀でてる筈だから!とっても自信があるよ」
「東京の私立××大学附属高校です」
「そうなんだ、覚えてお……って私の大学の隣じゃない!」
拍子抜けだ。私は二駅先まで足を伸ばしたと言うのに、灯台下暗しだ。ということは、家もそこそこには近いのでは?少なくとも、3〜4時間以内の圏内には有るだろう。私立高校に通うなら、最長通学時間は約2時間だ。因みに私は大学までは1時間掛かっている。
「ふっふっふ……じゃあ何時でも会いに行けるね……お姉さん嬉しいよ?」
「お姉さん怖いっす」
「やめてよ」
まあ怖いと言いながらもシュウ君は笑って居るのだけれども。
なんだか縁を感じるのは私だけでは無いようだ。シュウ君は迷うような顔をして口をつぐんでいたが、暫くしてこう言った。
「もうすぐ文化祭が有るんですけど、来ますか?」
そう言えば今は9月だ。高校ならば体育祭や文化祭で目白押しの季節である。大学の学園祭はもう少し先だから、あの忙しかった頃はとても懐かしいなぁ。
「シュウ君のクラスは何するの?」
「クラスは展示なのであんまり面白くないです」
「じゃあ部活?」
「はい」
「何部なの?」
「文芸部で小説書いてます」
文芸部か……私も入るか考えたけれど、友達に誘われてテニス部に入ったからなぁ。小説とか結構読むから、図書委員だったけど。
「もし逢えたら読ませてよ。ね?」
「勿論」
それきりシュウ君は恥ずかしそうに顔を背けた。案外文化系だって言うのが恥ずかしかったのかな?いや、もしかしたらシュウ君は只の私の創造した夢の中限定のキャラクターなのかもしれないじゃないか。隣の高校だって言うのも、私が一番身近な高校だからかも知れない。文化祭が丁度10日程後ってのも都合が良すぎる。勿論、私の頭は此れを『運命』と呼べるほど沸いていない。
だけれど、少しだけ、ほんの少しだけ。信じそうになっている私が居るのは気のせいかしらん。……