夢[2-1]
同じ夢だ。
自分は一糸纏わず、固い床で目覚めて、同じサンドイッチを同じ女豹が持ってきた。
ヒトミさんは、ちゃんと存在した。
「また、会っちゃったね」
疲れたように言ったヒトミさんは、モリモリとサンドイッチを食した。心なしか慣れたようにすら見える。
「二日連続でこんな夢を見るなんて、びっくりよね」
そう言うヒトミさんは、名前の表す通り、瞳が大きい。もしかしたらモデルにでも居そうだ。体型は髪や脚に隠れてあまり見えないが(まじまじと見てもヘンタイだが)、それでも太りはしていない。生憎と彼女のような人はテレビでお目にかかった事は無かった。女性誌も買わないし。
何処かですれ違ったかなぁ?それも印象にない。
今日も同じだ。開園時間が来たら沢山の動物がやって来て、喋りながらカメラで俺達を撮ったりする。イルカみたいにショーを任されないだけマシだと思おう。動画など撮られたら恥ずかしい。尻小玉が縮み上がる。
「そう言えば……」
「なぁに?」
「ヒトミさんって、SNSとか何かやってないんですか?」
動物達の目を避けるように、聞きたいことを話し掛けた。一瞬考え込むように黙った後、
「実は……SNSとかやってないんだ」
と答えた。
「スマホでは有るんだけれど、機械とか苦手でね。スマホにしたのも、大学生でガラケーじゃカッコ悪いからっていうだけの理由なの」
今時スマホが苦手な人って居るんだな、と思った。
「これでも何とかパソコンは操作出来るようになったんだよ?」
「それは良かったです」
「でも、何で?」
「?」
「何でSNSの話なの?」
ああ、それは、と。
少しこんな事を口に出すのは可笑しいかも知れないが、ちゃんと理由を言っておくべきだと思ったので、正直に話す事にした。
「現実で、ヒトミさんに逢えそうな気がして、ネットで調べてみたんです。此処以外でも逢えたらな……って……。まあ無理ですよね、俺の夢なんだし」
最初は堂々と言おうとしたが、次第に先細って消えてしまった。顔もそれに従って下がって行く。どうせ夢なんだと、何処かで俺が笑っていた。しかし、
「シュウ君も――?」
と言うヒトミさんの声に吃驚して顔を上げた。
「私も、シュウ君に逢えそうな気がして……二駅先の高校まで偵察しそうになっちゃった。夢だし、と思って言わなかったんだけど……」
通じあっているのか?古文の先生は、昔の人は夢で見た相手は自分の事を想っていると信じていた、と言っていた。そう言う事は有り得ないと思うし、今も思って居るが、――本当に起こりうるのかも、知れない。