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今回も前回と人の視点です。
主人公視点ではないです
なんて憂鬱なのだろう、普段よりも胃がキリキリする気がする。
これが近年有名なストレスなのだろうか。
俺は自分の腹部をさすりながら、温かいお湯を飲み己の胃を癒す。
いつもの見慣れた自分部屋なのだが、どこか初めて来た部屋のように落ち着かないソワソワとした感覚を得ながら、未だに癒えない胃を癒すため二口目のお湯を飲もうとした時、静かな部屋に少々遠慮気味なノックが響き渡った。一瞬居留守をしようかと思った自分を奮い立たせ、威厳に満ち溢れた声でノックに答えた。
「はいれ」
言葉に数秒遅れて入って来たのは、今年入ったばかりの新人であるサリ君だ。
彼女は犬人が持つ特徴的なピンと立った耳をペタンとした状態で入ってきた。
うむ、初々しい新人には毎度癒されるな。
お湯を飲むよりもこちらの方が効果的かもしれん。
などと考えている間に私の前まで来たサリ君がおどおどした様子で私を訪ねた理由を述べだしたので考えるのをやめ、耳を傾けた。
「支部長に例のお客様がいらっしゃいました。客室で待たしているので、来てください。」
「そうか....すぐに行こう。」
サリ君で癒されたはずの俺の胃がまたキリキリし始める。
俺は重たすぎる腰を上げ、まるで自分に反抗するかのように動かない足を無理やり力でねじ伏せ歩き出す。
いつもなら10秒とかからないはずの客室がとても遠く感じる。
前を歩くサリ君の震える足を見て自分の足もこのような事になっていないかと、目線を下げ足に目を向けようとしたとき、突然止まったサリ君にぶつからないように慌てて体勢を整えた。
ついてしまったのか...客室にまたも遠慮気味にノックするサリ君を見ながら自分の顔を最大限に強張らせ、威厳のある表情を顔に貼り付けた。
「おせぇ」
とてもイライラしているのであろう、少し怒り気味の返事を聞いてドアを開けるサリ君の震える足を見ながら、中に存在する人間を確認するために目線を上げる。
部屋の中には三人の人間がいるようだ。
一人は燃えるような赤い髪を持ち、綺麗に整えられた眉を逆ハの字に曲げている。
彼女の後ろには身長180cmの俺より高い、大盾と思われるものが立てかけられている。
俺がなぜ大盾と推測したか、それは横幅が20cm程度しかないからである。
そのため180cm×20cmの鉄の長方形にしかみえない、だがよく目を凝らすと魔法を付与した独特の跡を見つける事ができた。
このことによりこの盾には収納魔法が施されていると確信した。
俺の記憶によると、これに魔力を通すことで、元のサイズに戻るってこった。
だがここまで大きい物は俺の人生ではじめて見る。
人一倍様々な人間を見てきたと自負できる俺が初見なのだから、なかなか貴重な物なのだろう。
もう一人は赤毛の少女とは対照的に青色の整えられた眉をいちもんじにし、無気力そうな目をしている。
最初の赤毛少女を剛とたとえるならこの青毛の少女は静と表せれるだろう。
だが静とはかけ離れた凶悪な両刃の大剣が彼女の後ろに立て掛けてある。
片方の刃先は鋭くどんな生物でも斬る事ができそうだ。
だか反対の刃先は鈍くまるで生物を殴り殺すために作られたように思える。
一通り軽く二人の少女を観察したところ、この二人はとても対照的な存在に見える。
赤毛の少女と青毛の少女、共に身長は170cmと同じ位で自分の髪の色と揃いの防具を着ている、そして剛と静で逆の表情を示し、全てを受け入れ包む海のような青色をしている大盾,全てを拒み破壊する炎のような赤色をしている大剣を使い、全てを包み込む巨乳,全てを拒む貧乳を持つ....おっと青毛の少女の視線に微かに敵意が混じったようだ。
まるで彼女達は間に座る男の盾と矛のように見える。
最後に間にいる男に視線を軽く向けると、男は35歳程度で彼女達と違い、何も持たない事から無手で戦闘をすると考えられる。
彼女達と違い、黒毛に黒い防具を着ている。
他には何の特徴もないちょっと威厳のあるただの中年だ。
「支部長...?」
おっと少し観察の時間が長かったかな。
俺がなかなか座らないからサリ君が困ってしまっている。
「おっと、すまない。」
俺は三人の前のソファーにゆっくりと腰掛ける。
後ろからドアの閉まる音がしたからどうやらサリ君は部屋を出たようだ。
「で、オレらに何のようなんだ!?」
赤毛の少女は我慢の限界だったようで、サリ君が退席したと同時に俺に用件を投げかけた。
「今日呼んだのは、君達に依頼をするためだ。」
「そんなことぐれーわかってんだよ。早く用件を言え。」
「まぁ、あわてるな。依頼内容を話す前に、君達にはこの件に関して他言無用であることを理解して欲しい。」
「殺すぞ?オメェー」
赤毛の少女は限界まで眉をしかめて、奥歯を噛み締めている。
「落ち着きなさい、フレイ」
青毛の少女が表情を一切変えず、口だけを動かして話す。
「だがよぉ、メイ。こいつがもったいぶって、オレをイライラさせるんだぜ?」
「あなたはいつもイライラしてるわ。
もう少し私みたいに落ち着きなさい。」
「でもメイも..」
「そろそろ落ち着きましょうね」
「おっ、おう」
メイと呼ばれる青毛の少女はフレイの言葉を遮るとフレイを冷たい目で睨みつけ強引に会話を終わらせた。
はぁだから俺はいやなんだ。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
次回から主人公視点です。
また、分かりにくいところがあれば教えてください。