第2話 運命
急に怒鳴られた雷賀は、驚きのあまり声を張り上げ叫んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
そして後ろへ勢いよく振り返った。
すると雷賀の後ろには、冷たい眼差しを雷賀に向ける少女が1人立っていた。
「あんた誰だよ!?それより、今のあんたがやったのか!?」
「ウルサいわね。あたしが誰だろうと、あなたには関係ないでしょう?それよりも、なんでこんな時間に外に出ているの?」
「塾の帰りだからだよ!!別に変なことじゃないだろ!」
冷たい態度をとる少女に対して、雷賀は怒りが芽生えた。
「だいたいさ、人が質問に答えてんのに、こっちがしてたら自分は関係ないって、失礼だろ!」
「教える必要が無いからそう言ったのよ。それにしてもあなた、親から<闇の世界>のことを聞いていなかったの!?」
「聞いてるさ!でも、迷信だろ、あんなの?」
「さっきのを見て、よくそんなことが言えるわね。」
「だって、現実味がないんだもんよ!」
「どこを見ても人なんて歩いてないのに、不信感を持ちなさいよ!」
「まぁそうだけどよ…んっ?人居るじゃん、3人も!」
「はぁ!?」
雷賀が指を指した方を振り返ると、本当に3人の大人が立っていた。
だが、明らかに様子が変である。
「クソっ、3匹も出てくるなんて!」
「なんだよ、ただの人じゃん。」
「違う!奴等は、陰妖よ!!」
「へっ?」明らかに様子が変であるが、見た目は普通の人間だった3人。
だがそれを人間ではなく、陰妖と呼ぶ少女。
すると次の瞬間、普通の人間だったハズの3人がまるで着ぐるみを脱ぐように、皮を破り、中から何かがでてきたのだ。
「うわっ!?あれ人だよな、なんで中からさっきの化け物が!?」
「確かにあいつ等は昔は人間だった。だか、陰妖に喰われ、ただの被り物にされているのよ!」
「は?さっきから意味がわからないことばっか言うなよ!!」
「真実を話してるだけよ!(3匹も一気に倒せない…あたしだけならともかく、こいつもいるし…)仕方ない!」
「ちょっと、おいっ!?」
雷賀は、陰妖へ向かって走り出した少女を引き止めようとしたが、無駄だった。
すると少女は、先ほど雷賀を助けた時と同じことを口にした。
「氷羅姫よ、今我らの敵を打ち払え!氷の刃!」
また少女から勢いよく何かが飛び出した。
だが前は動揺していて、飛び出した物を見ることができなかった雷賀だが、今回はハッキリと見ることができた。
鋭くとがった氷柱が陰妖に突き刺さっていった。
「(どこからそんなもの!?)」
そう思い少女の方を見ようとした時だ。
「逃げろっ!!」
少女の叫び声を聞き、前を向き直すと、陰妖の1匹が雷賀に襲いかかろうとしている。
「っ!?くんなぁぁぁ!!」
そう叫んだ時だ。
『願いを叶えてやろうか?』
どこからともなく男の声がした。姿は見えないが、ハッキリと聞こえる。
「願い?俺に力をくれ!!あの女の子みたいに陰妖って言う魔物を倒したい!!」
『わかった…だが、お前には俺の手伝いをしてもらう。』
「いい!!死ぬよりはいい!!」
『承知した…お前に力をやる。』
雷賀は体の中に何か違和感を感じた…
そしてとふと目を開けると、勝手に口が動いた…
「雷獣王っ!!俺達の敵を薙ぎ倒せ!!怒りの雷撃!!」雷賀が言い終わったと同時に、空が急に曇りだした。
すると、眩しくて目を開けては居られないくらいの光を持つ雷が落ちた。
「グギャァァァァァァッ!?」
すると、凄まじい叫びと共に陰妖は消えた。
「なんだよ今の…」
「あなた…選ばれし者なの…?」
「なんだよそれっ!!」
「今あなたがやったことはね、選ばれし者しか使えない技よ。あなた、光妖に選ばれたのよ…」
「光…妖…?」
「簡単に言うわよ。さっきあたしたしたちを襲ってきた奴らを陰妖と呼ばれてて、人間界を滅ぼそうとしている奴らなの。そいつらに対立する存在が、光妖なの。光妖は、気に入った人間の願いを叶える代わりに、陰妖を倒す手助けをさせるの。その気に入ってもらった人間を‘選ばれし者’って言うのよ。あたしもそう…」
「なんだ、それ…」
少女の説明を聞いても、うまく理解できない雷賀。
そしてしばらくの間考え、雷賀の出した答えは…
「放棄はできないのか?」
「えぇ。一度願いを叶えて貰ったからには…ね。もう逃げられない。これは運命だから。」
「運命…あぁ、なんかもぅ考えるの嫌になった!!わかったよ、その運命とやらを受け入れるぜ!!」
「ずいぶんと物分かりがいいわね。まぁいいか…あたしの名前は、森真 雪。よろしく。」
「俺は、麻生雷賀。よろしく。」
はっきりとは理解できなかったものの、成り行きで運命を受け入れると決めた雷賀だった…