第1話 出会い
「うわっ、もうこんなに暗いのかよ!?」
彼の名前は麻生 雷賀。
この物語の主人公である。
今は11:47。テスト前ということもあり、塾で遅くまで勉強をしていた雷賀。
この世界では、0:00を過ぎれば<闇の世界>と昔から呼ばれ、誰も外には出なかった。
しかし、雷賀はそんなことは迷信だと考えていたため、遅くなったことをあまり気にしていなかった。
「早く帰んないと親がウルサいからな…はぁ、携帯忘れるんじゃなかった。」
1人自転車に乗り、家へ帰ろうとペダルをこぎ始めたときである。
「喰ワセロ…オ前ヲ喰ワセロ…」
「ん?なんか聞こえたような…まっ、いっか…」
気にせずにまたこぎ始めたときだ、
「シャァァァァ!!」
背後から何か不気味な鳴き声が聞こえたのだった。
雷賀が振り返ると、黒く大きな陰が自分に襲いかかろうとしたときである。
「氷羅姫よ、今我らの敵を打ち払え。氷の刃。」
少し冷たい声が響いたとき、何かが不気味な陰へと勢いよく突き刺さった。
「ギシャァァァァっ!?」
不気味な声をあげ、まるで霧が晴れるかのように黒い陰は消えていった。
「なぜこんな時間に外へ出た!!死にたいのか!?」
「!?」
黒い陰に気をとられていた雷賀に、いきなり怒りの声がかかったのだった。