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生活保護ヴァンパイア

 


金持ちの家に生まれる人間は、前世で金もうけをやり終えた者だと、話に聞いたことがある。


 何かで成功した人は、つぎの人生でおなじ苦労をすることがない、という内容だった。


 似たような話は他にもあって、もし前の生命が、コミュニティーを持たない生物だったなら、人間関係で不利な人生を歩むことになるなど・・・まあとにかく、そうやっていつも、自分の目の前にいまいるこの男は、話題を最後の訪問販売へもっていこうとばかりしていた。



「・・・ちょっと!

こんなボロアパートのどこに、"転生辞典 ~あなたの運気はグイグイ上がる~ 全集” を置けっていうんだよ!」

毎度のようにさけびながら、相野あいの 一也かずやはドアを閉めようとしている。


公立白陵高校2年、わびしい生活を一人で送っている、不死の存在だった。

たいていの場合なら、人間は健康で長寿が「良し」とされるが、吸血鬼ヴァンパイアはそうはいかない。

なにしろ永遠の命がデフォルトなので、前世の自分はどれほど良いことをしたんだと、真剣に悩みたくなるのだ。


「あーあ・・・」

それでも今は、絶滅寸前の種族だけどな、と彼は部屋の中にもどっていく。

「・・・むかしは、中世で貴族なんかもやったのに。 いまは日本の役所で、生活保護を受けてるなんて・・・」

はたして、惨めなだけの人生に、価値はあるのだろうか。


テーブルに置かれたカップめんを、少年はじっと見つめている。

無駄におかしな能力はあったりするけれど、いまは卵の一つが ーー ない。

せめて、わずかに残ったバターとラー油をかけて、カロリーを確保してみるか・・・。



『ーー お前は、失われた吸血鬼(ロスト=ヴァンプ) だ ーー』



・・・いつからか、少年はそんな呼び名でからかわれるようになっていた。

仲間たちから、”高貴な血を忘れた、あわれな極東眷属だ”と。


「ーー ふん」


この時の彼にはまだ、知るよしもない。

いつかこの国で、自分が終わりを迎えることを。


そして、彼がついに逃れられなかった過去と地獄が、一人の少女の時間によって、やがて救われていくことを・・・。


だれにも知られるはずのなかった、彼の本当の汚名は、ここに幕を開けてゆくことになる ーー







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