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クラスまるごと人外転生 ―最弱のスケルトンになった俺―  作者: 鰤/牙
外伝 乾物ティーチャーかつぶし
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Lesson 04 どうする!?俺!!

 俺の名前は勝臥出彦かつぶし・だしひこ。市立神代高校2年4組の元担任にして、今はかつおぶしだ。


 だが、もしかしたら、かつおぶしでは無くなってしまうかもしれない。

 俺は新たなる進化の段階に立たされている可能性があったのだ。


 順を追って話そう。

 2年4組の生徒が異世界に転生してから、およそ2ヶ月以上が経過しようとしていた。俺の可愛い生徒達は、そのモンスターとしての能力を活かしながら、このファンタジーな世界を生き抜いている。いつか、元の世界に戻る。それがみんなの望みであり、それを叶えるために努力している。

 一方、かつおぶしになってしまった俺は、自分で動くことができない。だから、調理場担当である杉浦彩(出席番号26番)にかくまってもらい、生徒たちのために美味しい出汁を出している。


 俺を含め、人外に姿を変えた人間たちは、どうやら“転移変性ゲート”なるものをくぐってしまったことで、今の姿になってしまったらしい。この転移変性ゲートは、姿をモンスターに変えるだけでなく、様々な特殊効果も付加させる力があった。

 この転移事件自体が、とある吸血鬼の一団によって仕組まれたものだった、というわけなんだが、その辺は深く突っ込むと長くなるので、今回はよそう。


 転移変性ゲートによって付与された能力に目覚めるのが、いわゆる第二段階。“フェイズ2”と呼称される状態だ。実はこれには俺も到達しているのだが、クラス内でもフェイズ2に目覚めた生徒はそんなに多くない。

 2があるということは3もあるのだが、そのフェイズ3というのが、体内に吸血鬼因子を取り込むことで到達しうる境地らしいのだ。このフェイズ3に到達している生徒は、クラスの中では出席番号5番の、空木恭介しか存在しない。


 そして今、もしかしたらこの俺が、そのフェイズ3に到達してしまう可能性が出てきたのである。


「ごめん、先生……。あたしも、あんまり深く考えてなくってさ……」


 ちょっと気まずそうな顔を見せ、杉浦が言った。


「いや、おまえは悪くない……。あの場ではああするしかなかったんだ」

「でも、先生……。怖いんでしょ……?」

「そりゃ、怖いさ。もしかしたら俺は、このまま吸血かつおぶしになってしまうかもしれないんだ……」


 どうやら、小刻みに震えてしまっているのがバレていたらしい。まったく、生徒にそんな醜態を見せるなんて、俺は教師失格かもしれないな……。


 そう。因子を取り込むということは、吸血鬼化するということだ。今のところ、空木の奴に吸血衝動のようなものは見られないが、あいつに因子を与えた紅井明日香(出席番号1番)の話では、広義の意味において“血族化した”という考え方をしても、間違いではないらしい。


 そして俺も、紅井の血を浴びてしまったのだ。

 さる理由から、紅井の血を持って逃げようとした悪党がいた。杉浦は、その血の入った小瓶を、俺の身体を使って叩き割ったのだ。結果として、俺の身体には、紅井の血が大量に付着した。

 可愛い生徒の血を被ることぐらい、どうってことはない。紅井のような美少女だと考えれば、ご褒美ですらある。だが今の俺は、教師や男であるまえに食材だ。その日俺は、出汁を取るために鍋に入ることはなかった。


 ともあれ俺は、紅井の血を浴びたのだ。


 本来、因子を与えるにはそれなりの工程が必要になる。血を頭から被った程度では、血族化はしないのだそうだ。高密度の因子を蓄えた血液を、直接相手の身体の中に流し込むか、あるいは大量に飲ませるかでもしない限りは、相手の中に因子が固着することはない。だから、俺と同じように頭から血を被った杉浦には、特に血族化する兆しが見られない。

 が、それはあくまで一般的な生物の話だ。スケルトンである空木には、血がない。全身の骨が砕け散るほどの重傷を負った際、紅井が自らの因子が入った血を垂らしてやったことで、あいつは一命を取りとめ、血族化した。


 俺も、そうなる可能性があるのだ。


 『ただ血をぶっかけるだけ』で血族化するモンスターの種類は、そう多くはない。だが、紅井の用意したデータベースの中にも、敵のアジトから押収した資料の中にも、かつおぶしについて書かれたものは見つけられなかった。俺が、スケルトンのように血を被っただけで血族化してしまうのか、あるいはそうはならないのか、それすらもわからないのだ。


 俺は恐ろしかった。自分ではない何かに変容してしまうような危惧を抱いたのだ。


 空木を見る限り、それはないのかもしれない。あいつは、血族化したといっても、あの性格のままだと聞く。だが、もし俺が血族化してしまったとしたら。俺は、悪魔のような吸血かつおぶしになり、杉浦に襲い掛かってしまうのではないだろうか……?


「先生……」


 調理室の隅に置かれた本野さんが、ぽつりと俺を呼んだ。


「なんです? 本野さん……」

「あのう、先生は、何か自分ではないものに変わってしまうのが恐ろしいとおっしゃってますが」

「はい、恐ろしいです」

「すでに私達は一度、劇的な変容を遂げてしまっているのでは……?」


 確かに、そういう解釈の仕方もある。だが、それはそれ。これはこれだ。


「先生、今日は、お出汁、どうする……?」

「すまない……。今日も休ませてくれ……」

「うん、わかった……」


 あの戦いからは、まだ1日しか経過していない。明日、島で行われるという交易会に備えて、大半の生徒達は準備をしているらしかった。杉浦も料理を並べる仕事があるから忙しいはずなのだが、今は俺に付き合ってくれている。


「先生、大丈夫だよ。先生がどんな姿になっても、あたしは先生の味方だからね」


 そう言って、杉浦はそっと俺の身体を撫でた。これでは立場があべこべだ。俺は、心の中でわずかに自嘲する。


 さて、そんな時だ。


「杉浦、先生いるか?」


 よく通る声が、厨房の中に響く。杉浦は俺から手を離して、声のしたほうを振り向いた。が、今度は手ではなくタコ足が、何本か俺の身体に触れていてくれた。ちょっとぬめっとしている。


「ああ、委員長。先生ならいるよ?」


 声の主は、出席番号39番。クラス委員長の竜崎邦博だ。このクラスで俺や本野さんのことを知っている生徒は少ないが、竜崎はその一人でもある。

 竜崎は厨房の中を覗き込み、俺に小さく会釈をした。


「竜崎か……」


 俺は、自分でも情けないくらい小さい声で応じる。


「先生、一応、明日香のほうにも話を聞いてみましたが、やはり先生が“血族化”するかどうかは、わからないそうです」

「そうか……。紅井は今どうしている?」

「安静にさせています。渇血症の症状が酷いので……。明日には、島民から血を集められるんですけど、それまで辛い状況は続きそうですね」


 そういう竜崎の表情は険しい。こいつも、随分頼れる委員長になったものだ。

 人間の血を集める、という難儀なミッションをこなすことができたのも、クラスが今のところまとめられているのも、こいつのおかげというところが大きい。これから、この2年4組のどういった危機が降りかかろうと、きっとまた、ひとつにまとまることができるだろう。


 それはきっと、この竜崎邦博という男のおかげだ。


 それに比べて俺は。


「あーあ、先生がまた腐ってる……」

「かつおぶしはもともと腐ってるんだよ……」

「せんせー、見た目はかつおぶしでも中身は豆腐なんだもん」


 呆れた声を出す杉浦だが、やはりその裏には、少し心配するような色合いが滲んでいる。


「先生、あまり役に立てなくて、すいません」

「いや、おまえは十分、役に立っているさ」


 俺は、せめて教師としてこれ以上竜崎に心配をかけないよう、精一杯の虚勢を張ってそう言った。


 竜崎は小さく微笑んだが、こちらの心は見透かされていただろう。また小さく会釈をして、調理場を出る。あいつは当分、忙しいはずだ。去っていった竜崎を見送って、俺はため息をついた。いや、かつおぶしなのでつけないが、ついた心地になった。

 吸血かつおぶしになってしまう未来は恐ろしい。だが、そうなる前に、俺は教師として、かつおぶしとして、何か思い残したことはないだろうか? 身体にしみこんだ因子が致命的な変容をもたらす前に、今の勝臥出彦ができることはないだろうか? 竜崎の背中を思い、俺にはそれだけのことを考える心の余裕が生まれていた。


「そうだ、紅井……」


 俺はぽつりと呟く。


「紅井さんがどうかした?」

「いや、紅井に俺の出汁を飲ませるのを、忘れていた」

「あー、そっか。そういえば、あれから頑張って美味しくなったし、そろそろリベンジしたいよねぇ」


 紅井明日香は、俺の出汁を飲んで美味いといわなかった唯一の生徒だ。杉浦の言うとおり、リベンジを果たしておきたい。


 だが、吸血鬼因子に冒された、この身体では……。


「いや、待てよ」


 ひょっとしたら、それで良いのか?


 俺の身体は、紅井の血を浴びてしまった。俺の身体には、あいつの血がしみこんでいるのだ。つまり、紅井が生命活動を行う上で消費せざるを得ない“因子”も、俺の身体にはしみこんでいる。

 それを出汁として出してやり、あいつに飲ませることができれば、せめて明日までの間、少し楽にしてやることができるのではないだろうか?


「よし!」


 俺は声をあげた。


「杉浦、俺を削れ!!」

「えっ、あ! うん!」


 一瞬、虚を突かれたような顔をした杉浦だが、すぐに満面の笑みを浮かべ、調理場の隅に置かれたかんなを手に取った。


 直後、調理場には、身体を削り取られる俺の悲鳴が響き渡った。





 俺の出汁は、丘間と佐久間の手によって、無事紅井に届けられたらしい。2人はかつおぶしとなった俺を見るのは初めてだったので相当困惑していたが、すぐに俺が先生であると認めてくれた。

 ちなみに噂に聞く佐久間のボンテージファッションを見るのは初めてだったので、俺はえらく感動した。教師になって良かったと、心の底から思った。


 食器を返しに来た佐久間は、少しだけ、紅井の調子がよくなったと教えてくれた。


 俺はほっとすると同時に、わずかな失意を覚えていた。

 紅井の調子がよくなったということは、つまり、俺の身体から因子の混じった出汁がとれたということに他ならない。俺の身体は、血族化してしまっているのだ。半ば、吸血かつおぶしと化してしまったも同然なのである。


「先生……」


 そんな俺の心に気づいたのか、杉浦が悲しそうに呟いた。


「そんな顔をするな、杉浦……」

「でも、先生……。吸血かつおぶしになっちゃうんでしょ……?」

「もう、なっちまったかもしれないけどな……」


 そう言って、俺は天井を仰いだ(つもりになった)。俺と杉浦の会話を聞いて、本野さんが少しいたたまれない様子で『あのう、私もいるんですけど』と言っていたが、とりあえずここは、雰囲気を重視することにした。


「杉浦、もし俺が、自我を失った吸血かつおぶしになったら、その時は……」

「その時は……?」

「おまえの手で、俺を殺してくれ」


 杉浦はハッとし、大きな目で俺を見つめてくる。本野さんが小さい声で、『あのう、先生ってどうやれば死ぬんですか?』と呟き、それは確かに俺もたいそう疑問に思ったのだが、やはり雰囲気を重視して聞こえない振りをした。


「先生……。わかった、でも……」

「いい子だ……」


 『でも』の先は聞かない。それはきっと、杉浦の決意を鈍らせるだけだからだ。


 その瞬間、俺の全身がドクンと脈打つような感覚があった。錯覚だ。俺の身体はかつおぶし。血液など通っているはずがないのである。

 だが、俺はこれとよく似た感覚を、以前味わったことがあるのを思い出していた。あれは、こちらの世界に転移してきてから、そう日が経っていない頃。俺がフェイズ2能力《無限再生》に覚醒したときのことだ。


 あの時も、全身の脈打つ感覚と、身体を焦がし、溶かすような熱があった。


 ああ、はじまってしまったのだ。俺は理解する。これはまさに、フェイズ3への覚醒の合図に違いない!


 それは俺にとって決して、歓迎すべきことではなかった。まるで脳髄に焼きごてを押し当てられたかのようだ。脳髄なんてないが! それでも、失ったはずの痛覚が悲鳴をあげているのがわかる。俺は声を押し殺し、カタカタと身悶えた。


「う、ぐ……!」

「先生!?」

「とうとう来たみたいだ……。これでもし、俺が吸血かつおぶしになったら……!」

「だ、ダメ! 先生! ダメだよ! あたしは……」


 ああ、どんな姿になっても、味方だからねと、そう言ってくれたのだったか。


 だがそれはダメだ、杉浦。俺は教師、先生なんだ。先生は生徒の味方であるべきだが、生徒は先生の味方であってはいけない。教師という存在はあくまでも生徒に利用されるものであるし、それに何より、度が過ぎると教育委員会に目をつけられるからな。


「勝臥先生!」


 本野さんも俺の名を呼んだ。


 杉浦が俺に手を伸ばす。だが俺はもはや、悲鳴を出すことさえ出来ない状況になっている。身体が徐々に変化していくような感覚があった。木刀のように雄雄しく、ピンと伸びていた身体が、形を変えていく。シュウシュウと煙があがり、そして……。


 ぽんっ。


 明るい音と共に煙が弾け、俺は床に転がった。


 いや、転がったというより、ぺたりと落ちた、と言ったほうが正しかったかもしれない。俺の姿は、もはやかつおぶしなどではなくなっていたのだ。

 そう、しいて言うなら、魚の開き。

 干物のようになっていたのである。


 なんだこれは。何が起こったのだ。


 俺は、自分の身に起きたことが理解できず、周囲を見回す。いや、首がないので見回すことはできない。

 全身を包み込むような熱も痛みも、もう完全に引いていた。俺はかつおぶしから魚の開きになっただけで、それ以上に、何かが変わってしまったような感覚はない。これがフェイズ3だとでも言うのだろうか?


 しかし、今のところ吸血衝動のようなものもない。俺は、俺のままだ。


「先生……?」


 杉浦は首をかしげ、俺にゆっくりと手を伸ばそうとした。


「杉浦……」


 俺も、彼女の名前を呼んでやる。


 正直、ほっとしていた。俺は、恐ろしいかつおぶしのバケモノになることもなく、新しい段階に到達したのだ。クラスのみんなに出汁を出してやることはできなくなったが、これでまた、調理場に居続けることができる。いや、干物からだって美味しい出汁はとれる。無限再生がまだ生きているなら、だが……。


「杉浦、すまない。心配をかけたな。どうやら俺は……」


 そういいかけた時、俺に手を伸ばしかけていた杉浦が、ふと手を止めた。


「……杉浦?」

「……くさっ」

「え?」


 直後、杉浦は自らの鼻を押さえ、1歩、2歩と後ずさった。あのタコ足の生えそろった下半身で1歩2歩という概念がどれだけ通用するのかわからないが、とりあえず体感でそのくらい後ずさったのだ。

 その顔には、何か信じられないものを見るような色が浮かんでいる。


「ごっ、ごめん先生! ちょっ、これ……無理っ! 無理無理無理無理っ!!」


 言うなり、杉浦は鼻を押さえてダッシュで調理場をあとにした。


「杉浦!? おい、杉浦っ!?」


 俺が必死に呼びかけても、杉浦は帰ってこない。これはいったいどういうことか、本野さんに尋ねようと思ったが、彼女は表紙を閉じて棚の上に倒れこんでいる。

 本野さんは気絶していたのだ。





 どうやら俺は、くさやになっていたらしい。


 更には、これがフェイズ3能力なのかといえば、なんとも言えないらしい。そもそも、俺はこのクラスの中においてはイレギュラーであり、更に言えばかつおぶしなんて言う想定外のものに転生してしまったから、既存のデータの中に当てはめるのが難しいのだ。

 血液を摂取してすっかり顔色のよくなった紅井は、鼻を摘みながら俺に対してそう語ってくれた。


「そもそもなんでくさやになったの? 紅井さんの血はくさや汁みたいな効能があるの?」

「人聞きの悪いこと言わないでくれる?」


 同じく鼻を摘みながら首を傾げる杉浦に、紅井は冷たい視線を送る。


「転生後の姿はあるていど精神に引きずられるから……。おおかた、先生が精神的に腐ってるから、身体も腐っちゃったんじゃないの?」

「そっかー」


 そっかー、じゃないだろう。俺はおおいに異を唱えたかった。それを言ったら、他の連中だって、気の持ちよう次第で色んな姿に変われることになっちゃうぞ。

 だが、いくらそう言ったところで『先生はイレギュラーだから』で片付けられそうな気がしたので、言わなかった。シュールストレミングスにならなかっただけ、良かったと考えるべきなのだ。


 紅井はそれから、鼻をつまんだまま調理室をあとにした。なんでもクラス全員に説明したいことがあるらしい。


「くそっ、これから俺はどうすればいいんだ……」

「……かつおぶしに戻る方法を探すしかないんじゃない?」


 鼻をつまみながら、杉浦は他人事のように言う。俺はちょっとムッとしてしまった。


「だいたいなんでお前はそんなに嫌がるんだ! 定食屋の娘だろうが!」

「ウチじゃくさやなんて扱ってなかったし……。あたし、鼻がいいからさー」

「タコなのに!?」

「タコじゃないし。スキュラだし。スキュラは下半身が犬の場合もあるんだからね」

「だからって鼻が良いっていうのはどうなんだ! そうやって後付けだけで設定作ってくといつか破綻するぞ! 俺は詳しいんだ!」

「いきなりくさやになるような先生に言われたくない」


 くっ。


 俺は言い返せなかった。

 くさやは美味い。実家の乾物屋ではたまに取り扱っていたから、俺はそれをよく知っている。だが、くさやは食べるものであって、人を導くものでは決してない。くさやが教師になってご高説を垂れたところで、それは結局、生徒にとっては鼻つまみ者でしかないのだ。

 俺の場合は、教師がくさやになったパターンだが、この際、大差はないだろう。


「……どんな姿でも味方だって、言ったのに……」


 俺は呟く。


「かつおぶしの勝臥先生だったらそう言えるけど、くさやは、ちょっと……」


 杉浦はそう言って鼻をつまんだまま、調理室の出口に向かった。


「じゃー、あたし、紅井さんの話を聞くために甲板行くから……。先生も、かつおぶしに戻る方法考えておいてね……」


 そのまま、杉浦は本当に調理室を出てしまった。なんという薄情な奴だろう。


 俺はぷりぷりと怒ったまま、本棚の上に視線をやった。本野さんはまだ気絶している。彼女も扱いが相当雑な気がして、俺は密かに同情した。本野さんのためにも、かつおぶしに戻る手段を見つけなければならないだろう。


 思案している俺のもとに、謎の光が押し寄せ、意識がプツンと途切れたのは、それから間もなくのことだった。

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