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クラスまるごと人外転生 ―最弱のスケルトンになった俺―  作者: 鰤/牙
第一章 あなたが魔王になった日
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第3話 支えになりたい

「たゆたう水霊に命ず 槍となりて我が愚敵を穿て 《水槍ウォーターランス》!」


 小金井芳樹ハイエルフの紡ぐ精霊詠唱は、万物に宿る霊素へと働きかけ、この世の理を変質させる。空中に生み出された槍はまっすぐに投射され、目の前に居座る巨大なワニの頭部へと突きたてられた。ワニ型モンスターの絶叫が、通路内に響き渡る。


「ふゥン!」


 続いて駆け出したゴウバヤシオウガの剛腕が、ワニの顎を上から押さえつけた。そのまま抱え込んで、全長10メートルはあろうかという怪物の巨躯が、ゆっくりと持ち上がっていく。ワニはジタバタと四肢を動かすが、こうなってしまえば、もはや何の意味も持たない。


「今だ、さっちゃん!」

「佐久間!」

「う、はい!」


 小金井と竜崎邦博ドラゴノイドに次々と名を呼ばれ、サキュバスの佐久間祥子は魔法詠唱を開始する。


 この世界には複数の魔法があるらしい。エルフである小金井は精霊魔法を使うが、転生したことで魔法が使えるようになったクラスメイトの多くは、黒魔法と呼ばれる、この世の裏側の真理に働きかける魔法を使うのだ。

 誰から教わったわけでもなく、彼らは自然とそれを行使できるようになっていた。魔物としての本能なのだろう。人が歩き、鳥が飛び、魚が泳ぐように、そういった種族として生まれ変わった彼らは、魔法を自在に行使するだけの本能が備わっていた。


「万物一切塵と化せ 天砕く魔王の右腕 《滅びの鎚ブロウ・アッシュ!》」

「うおおおぉぉォォうらァッ!」


 ゴウバヤシが上体を逸らせ、ジャーマンスープレックスの容量でワニを叩きつけるのと、佐久間が魔法を発動させるのは、ほぼ同じタイミングだった。叩きつけられたワニの頭上に、黒い塊が降り注ぎ、その巨体をぶつかった部分を塵のように消滅させていく。竜崎が焦った声を出した。


「待った待った! 佐久間、これじゃ食べるところがなくなる!」

「あ、そ、そっか! 止まれ! 止まって!!」


 佐久間は必死に身体を跳ねさせながら、なんとか降り注ぐ黒球を打ち消した。胸元のあたりが暴力的に揺れるものだから、小金井が思わず目をそらす。竜崎は気にした風もなく、ゴウバヤシは最初から見てすらいなかった。


 その場には、身体の一部が塵になったワニの亡骸が転がっている。

 これだけの量があれば、数日分の肉にはなるだろう。腐らないよう冷凍保存する手段もあるし、当分の食糧問題は解決だ。杉浦スキュラも、自分のタコ足を料理しなくて済むはずだ。


「竜崎くん、ゴウバヤシくん、あの、だ、大丈夫……?」


 佐久間が回復魔法を準備して駆け寄るが、二人ともかぶりを振った。


「問題ない」

「ああ。ただ、ここまで来ると流石に苦戦するな。安全マージンを取って、探索はここまでにした方が良い」


 竜崎の言葉に、一同が頷く。戦闘ではほとんど役に立たない彼だが、こうした状況での発言力はいまだにしっかりしていた。

 ゴウバヤシがワニの亡骸をロープで縛り、小金井が風属性の浮遊魔法をかけて、拠点まで運ぶ。


「さっちゃん、強くなってきたよね」


 小金井がニコニコと笑いながら、佐久間に話しかけた。

 最初は引っ込み思案だった彼も、ここ最近はどんどん自信をつけている。同じように、クラスの底辺層から一気に引き上げられた佐久間のことを、気にかけている様子だった。


「そ、そうかな。うん……」


 佐久間は、照れている様子でもなく、ただあまり晴れない表情で俯いている。


「魔法の使い方に慣れれば、もっと強くなるよ」

「うん……」


 精霊魔法と黒魔法に違いはあるが、クラス内で一番の魔法使いと言えば小金井であり、佐久間はそれに次いで2番目だ。ここ数回に分けて行われる探索は、佐久間の魔法の訓練も兼ねていた。小金井にも、自然と力は入るのだが、どうにも佐久間の表情は晴れない。


「どうかしたの? さっちゃん」

「ううん、なんでもないの……」


 ふるふると首を振る佐久間だが、ここで空気を読まずに竜崎が振り向いた。


「佐久間は、ウツロギのことが気になってるんだろう」

「え、ええっ!?」


 思わず、顔をあげる佐久間。小金井の表情に、さっと翳りが差した。


「……そうなの?」

「なんだ。小金井、知らなかったのか? 俺はクラス委員だからよく見てたぞ。佐久間はずっと前からウツロギのことを……」

「ちょっ、ちょ! ちょっと、ちょっと待ってよ竜崎くん!」


 サキュバス佐久間の白い肌が、どんどん真っ赤に染まっていく。両手を振り上げて抗議するたびに、やはり薄い革布を貼り付けたふたつの胸が、たゆんたゆんと揺れていた。小金井はますます表情を曇らせていくが、竜崎はまったく気にした様子もなく『ははは』と笑う。


「そう言えば、小金井は凛のことが好きなんだよな」

「え……」


 小金井は、虚をつかれたような声を出した。竜崎は明るい調子で、前を見ながら進んでいる。


「こないだのバスでもずっと凛のこと見てただろ。凛は良い子だぞ。男子に分け隔てなく話すから、悪い噂とかもあるけどさ。今は、付き合ってる男もいないはずだ。ただ気をつけろよ。結構、ガード固いからさ。実は俺もフラれたんだ」

「え、う、うん……」


 小金井は、ちらちらと佐久間を見ながら、生返事を返す。竜崎が、さらに何かを言おうとした時、ワニを引きずっていたゴウバヤシが、声を上げる


「お前たち、無駄口を叩くな。まだ拠点は遠いぞ」


 ぴしゃりとした、有無を言わせぬひと声。

 おそらくゴウバヤシは、その場にいる全員の心中を正しく見抜いていたに違いない。だからこそ、これ以上竜崎に喋らせるのは、得策ではないと判断したのだろう。


「お、おう。わかってるよゴウバヤシ」


 竜崎は頷いて押し黙る。佐久間はほっと溜息をつき、しかし、小金井はいささか含みのある視線を、じっと佐久間へと向けていた。





「姫水、おまえどうしてこんなところにいたんだ」


 凛を見つけた恭介は、その場に座り込んでそう尋ねる。


 元・クラス三大美少女のひとり。陸上部のエーススプリンターである姫水凛は、今は一匹のウォータースライムだ。さらに言うなれば、恭介や瑛と同じ〝役立たず〟である。動きものろく、力はそれなりにあるのだろうが、結局クラス内では大した役に立っていない。


 やはり、彼女も、あのクラスにいるのが居たたまれなくなったのだろうか。


「わかるよ、姫水。穀潰しって言われるのは、辛いよな……」

「恭介、たぶん違うと思うぞ」


 腕を組んでしみじみと言う恭介に、火野瑛ウィスプからのツッコミが飛んでくる。


「なんだ、違うのか。じゃあ、どうして……」

「走れないの……」


 頭を掻く恭介に、凛はぷるぷると震えながらそう言った。


「走れない?」

「走れないの! あたし! あんなに走るのが好きだったのに!」


 恭介はハッとした。


 神代高校最速の女、姫水凛ひめみずりん。短距離走の最速タイムは県下トップタイだ。その秘訣を探ろうとする新聞部の取材に対し、走るのが何よりも好きだから、苦にならないと答えていた。

 その凛が、スライムだ。

 動きものろければ、足もない。

 どんなに望んでも、あの時のように速くは走れないのだ。


 クラスの美少女である凛がスライムになったと知った時、クラス中から落胆の声が漏れた。だが、その実、スライムになってしまったことに一番ショックを受けていたのは、他ならぬ凛本人ではなかったのか。


「不定形の特性を生かして、足を作れたりはしないのか?」


 瑛が横から尋ねてきたので、恭介も頷いた。だが、凛は否定するような震え方をする。


「あのね? あたしも、最初にそれやろうとしたの」

「うんうん」


 恭介は姿勢を正して、何度も頷いてみせた。


「でも、こうやって立とうとすると……」


 ずおっ、と、凛が勢いよく変形した。たまに画像サイトで見かけるような〝スライム娘〟。あんな感じになる。青っぽいドロドロした質感はそのままに、人間のシルエットへと変化したのだ。その姿は、転生前の凛とは似ても似つかないが、服が無い分身体のラインがはっきり出てくるので、恭介はやはりドキリとする。

 だが、人型になっているのは腰から上だけ。あとは水たまりのようになっている。凛は、踏ん張るように腕を引き、『えいっ!』と叫んで、水たまりから足を引き抜いた。


「おおっ!」


 恭介も思わず驚嘆する。目の前には、モデル体型のすらりとしたスライム美少女が姿を現し、


「きゃあっ!!」


 ばしゃっ。


 しかしすぐに力が抜けたように、崩れ落ちてしまった。


「重力に逆らった形を保つのは大変みたい……」


 すっかり落ち込んだ様子でたぽたぽしながら、凛が溜め息を漏らした。


「もってせいぜい2、3秒だし、走るなんてできないよ……」


 あのクラスの元気印である姫水凛が、こんなしょぼくれた声を出すなんて。


「姫水も、落ち込むことあるんだな」

「なにそれ。あたしだって落ち込むよ? 人間だもん……。あ、今は人間じゃないね」

「なんかさ、いつも無尽蔵にエネルギー持ってるみたいだったから……」


 恭介の言葉に、凛は『んー』と全身をねじる。首を傾げているようなものだろうか。スライムになったところで、その感情表現の豊かさは変わらない。同じ不定形モンスターになった瑛とは、えらい違いだった。


「マグロってね、泳ぎ続けないと死んじゃうんだって」

「ん?」

「あたし、マグロかも」


 そう言って、凛は魚のような形に変形する。マグロというか、これは金魚だ。


「走るから元気になるし、その元気でまた走れる! みたいなね?」

「じゃあ、姫水は走れないと死んじゃうのか?」

「死んじゃうかもしんない……」


 その言葉があまりにも真剣かつ深刻そうなものであったから、恭介は思わず吹き出してしまう。


「なに!? なに!? あたしマジメだよ!? もおっ! なんだよ、もう!」

「いや、悪い。姫水が死んだら嫌だなって」

「じゃあさ、もっと、あたしが走れるような名案、考えてよぉ」


 金魚がスライムに戻り、たっぽんたっぽんと抗議する。よく揺れるスライムだ。ちょっと触ってみたくなるが、果たしてこれはセクハラになるのだろうか。人間時代の姫水凛に触れることなど、まるで一切考えたことがなかった恭介だが、相手が今スライムになっているという事実が、ハードルを異様に下げてしまっている。


 ちょん、とつついてみた。


「ひゃうんっ!」


 涼しげな青色が波打ち、凛が全身を跳ねさせる。


「ウツロギくん、どこ触ってんの!?」

「え、俺どこ触ってたの?」

「知らないよ! よくわかんないけど、なんかすごい敏感なところだった!」


 ぷくぅ~っ、と凛の身体が1.5倍くらいに膨れ上がる。感情表現が本当に豊富だ。


「おそらくスライムは全身が感覚器官になっているんだろう。移動中はそうでもないかもしれないが、外からの不意な刺激にはすごく敏感になるんだ」


 瑛が解説をしていた。そうなのか。聞き流しつつ、凛と同じタイミングで『へー』と声が漏れる。


「しかし、走れるための名案って言ってもなあ……」


 恭介は、そう言いつつもう一度凛の表面を突っつく。今度は『不意』の刺激でないのかさして驚く様子もなく、その代わり指に引っ付いてきた。腕を思いっきり引くと、『うにょーん』と伸びる。餅かガムみたいで面白い。

 立ち上がって見ると、凛はまだまだ離れない。それどころか、下から上に向かってゆっくりと全身を持ち上げ、恭介の右腕を包み込もうとしていた。


「姫水、おまえ、猫みたいなじゃれ方するな」

「うにょーん」

「言葉までスライムになるんじゃない」


 そう言いつつ、恭介は凛を無理に引きはがそうとは思わない。彼女の悩みを解決するだけの方法が見当たらないのだ。これで、凛のもやもやした気持ちが少しでも晴れるなら、という思いが、恭介にはあった。

 ただそれでも、出来ることなら、彼女の〝役に〟立ちたい。

 支えになってあげたい。


 クラスの中で役に立てないなら、せめて姫水凛一人くらいの、悩みをなんとかしてあげたい。


 そう思っていたとき、腕全体を包み込もうとする凛を眺めて、恭介はふと違和感を覚えた。


「なぁ、姫水。おまえ、その姿勢辛くないのか?」

「えっ?」


 先ほど人間の姿を取ろうとしたときは、重力に逆らった形を保つのは難しいと言っていた。今も、それと近いような状態に思える。


「あー、こういうのはね。平気なんだー」


 凛は、たぽんと恭介の右腕から降りると、近くなった大岩を這うようにして昇っていく。


「こうやって、何かによっかかったりすれば、全然平気。それで、こう、やって……」


 岩に貼り付いたスライムから、モデルのようなすらりとした美脚が、2本伸びる。


「だから、岩に手をつけるみたいな感じで、こうやって歩くことはできるんだよ。赤ちゃんが壁に掴まって立ち上がるみたいな感じかなー」


 スライムから生えた足がひょこひょこ歩く様は、見た目がちょっとアレだったが、確かに〝歩けて〟いる。凛は、そのまま岩を一周すると、やはりたぽんという音をたてて元のスライムに戻った。


「でも、やっぱりこれじゃあ、前みたく速くは走れないしね……」

「いや……。それだよ」


 恭介はぽつりと呟いた。凛が不思議そうな声を出した。


「へ? なになに? なんだって?」

「思いついたぞ、姫水! 名案だ! 俺に任せてくれ!」


 彼の後ろでは、相変わらずまったく表情の変わらないウィスプ瑛が、ふよふよと浮かんでいる。口を挟まないところを見るに、恭介の考えを察したのだろう。『また悪い癖だな』くらいに考えているのかもしれない。なに、構うものか。


「俺がおまえの支えになる!」





「お、おおおー……。おおおお……」


 凛の声は、感動に打ち震えていた。


 恭介は今、凛に包まれている。変な意味ではない。深く穿った見方をすれば変な意味なのかもしれないが、とりあえず今は文字通り物理的に包まれている。


「ど、どうだ姫水。体勢は、辛くないか?」

「うん、平気! すっごい楽だよ!」

「そ、そうか……」


 辛いというか、妙な感覚なのはむしろ恭介の方だが、それは決して口にしない。


 走りたいと願う彼女の為に思いついた名案。それは、恭介が凛の〝骨格〟となることだった。スケルトンの身体に、スライムをパテのように肉付けしていく。凛の身体にくたいは、人の形を作りながらも、恭介の身体こっかくに乗っかることができているので、形を維持するのにそこまで負担がかからないのだ。


「考えたね、恭介」


 瑛もふよふよと浮かびながら言った。


 今の恭介は、骸骨の上に半透明な液状の肉体を持つ、この上なく気持ち悪い生物だ。いや、恭介だけではなく、凛もそうなのだから、気持ち悪いと断じてしまうのは彼女に失礼か。だがこれは、傍から見ればスライムによって捕食され、消化されている最中の人間にも見えるのではないだろうか。


 さて、身体はどれだけ動かせるのだろうか。腕を伸ばしてみようとすると、妙に身体がつっかかるような、粘り気のある感触が、


「ひゃううん!!」

「うおっ!?」


 急に耳元で嬌声が響いたので、恭介は背筋を伸ばす。


「ひ、姫水! また変なところ触ったか!?」

「えっ、んっ、んー……。だ、大丈夫……、かな?」


 そう答える彼女の声は、いくらか震えていた。変な気持ちになってしまうというか、変なことをしている気分になってしまうではないか。

 いや、ひょっとしてこれは、変なことをしているのか……?


「いきなりだから、びっくりしちゃっただけ……。良いよ、動いて……」

「お、おう……」


 もう一度、そっと右手を伸ばす。今度は、特に抵抗がなかった。凛がこちらに動きをゆだね、ぴったりと寄り添うように、全身を伸ばしていくのがわかる。


「すごい……。すごいよ、ウツロギくん!」


 はしゃぐような声で、凛が言った。密接しているためか、頭にガンガン響く。


「耳元で怒鳴るな……!」

「あっ、ごめん! でもなんか、嬉しくて!」


 そんなこと、わざわざ口にしなくたってわかる。買ってきたばかりのおもちゃを前にした、子供のような声だ。本当に感情が表に出るタイプの娘である。聞いているこっちまで、なんだかワクワクしてくるような感覚があった。


「ウツロギくん、歩こう!」

「おう!」


 恭介が、右足を一歩、前に踏み出そうとしたその瞬間である。


「おわっ」

「きゃあっ!」


 足が思うように動かず、上体の重心だけがズレる。崩れたバランスを持ち直せず、恭介は勢い余って転倒してしまった。同時に、全身を包んでいた凛の身体も、ばしゃんと地面に落ちてしまう。両手を地面について、少し気まずい気分になった。


「二人で歩くんだから、二人三脚みたいなものなんだろうね。呼吸を合わせないと動くのも大変そうだ」


 瑛の声は涼しいものだ。ウィスプなのに。火の玉なのに。


「なんか、ごめんな。姫水……」


 せっかく期待させて、という思いを込めて謝ると、凛はばしっと恭介の腕を掴んだ。ぷるぷると小刻みに震える凛を見れば、表情がなくても興奮しているのが手に取るようにわかる。


「ううん! ウツロギくん、またやろうよ!」

「姫水……」

「すごい、すごいよウツロギくん! あたしね、この身体になって、また走れるかもしれないなんて、思ってなかったもん! ウツロギくんのおかげだよ!」


 その言葉を聞いた瞬間、恭介の中に張りつめていた緊張が、ふんわりとほぐれるような感覚があった。

 こちらの世界に来てから、ずっと感じていた居心地の悪さが、一気に解消されていく。


「走ろう、ウツロギくん! 走るって気持ちいいよ!」


 凛は躊躇もせず、恭介の身体に纏わりついてきた。ゆっくりと立ち上がる恭介の身体こっかくは、またも姫水凛という身体にくたいを得る。先ほどは違和感を感じたが、2度目はひんやりとした彼女の身体が、文字通りの骨身に心地よい。


 凛の言葉が、今度は頭に直接響いてきた。


「ウツロギくん、合体しようよ! 合体して気持ちよくなろうよ!」

「おまえ何をトンでもないこと言ってんだ」

「あっ……」


 自身の失言に気付いたのか、凛がそのまま黙り込む。意外とウブだ。

 照れているのだろうか。全身を包むスライムの身体が、じんわりと暖かくなってくるのを感じて、まったくもって器用な身体だと、恭介は思った。

4話は本日(17日)12時投稿予定。

スライム凛の力を得てパワーアップへの第一歩を踏み出す恭介と、対照的に暗雲が立ち込めはじめるクラスの様子(主に小金井)。お楽しみにー。

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