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クラスまるごと人外転生 ―最弱のスケルトンになった俺―  作者: 鰤/牙
第7章 ザ・ベスト・パートナー
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第97話 メルトダウン

またせたな!

「これは……」


 自らの声が緊張に掠れているのが、はっきりとわかる。この時、空木恭介の心を支配しているのは、正しく戦慄であった。

 森が焼け、土地がえぐれ、そこかしこに煌々と輝く火種が転がっている。煙で覆われた空は、熱と爛光を地上に閉じ込め、周囲には生命の痕跡が一切残されていない。この世に現出した煉獄だ。恭介は、ブーツに覆われた足で、ゆっくりとその上を渡って行く。


 相当量のエネルギーを蓄えた炉心が弾け、ヴェルネウス王国の一角は焦土と化した。

 土地を苛むのは何も熱だけではない。生物の細胞を破壊する相当量の毒が、同時に散布されている。


 この空間を進むことのできるものは限られている。恭介は、自らの骨に施した耐熱術式が悲鳴をあげているのを身体で痛感していた。既に外気温は数百度近い。術式が焼き切れてしまえば、次に消し炭になるのは、恭介の身体だ。


 それだけの危険を冒してでも、恭介はこの地獄を先に進まなければならなかった。


 この大惨事の引き金を引いたのは恭介自身だ。しかし、責任感だけで事態の解決を望むわけでもない。


 恭介が進むにつれて、大気の孕む熱は加速度的に高まって行く。焦土の中心地が近い証拠でもあった。やがて地面すらも蒸発し、熱が大気と視界を歪めていく。その中心地に、なお原型をとどめて片膝をつく、黒い甲冑の姿があった。


 恭介は、足を止める。

 甲冑は一部が弾け、溶けてしまっている。その中にちろちろと燃える、炎の塊があった。これこそが。この地獄の中心地。大地を焼き、天を焦がし、あらゆる生命を鋳溶かした厄災の炎である。


「瑛……」


 恭介は呟いた。


 炎はただ燃えるだけである。一切の返事をしなかった。


「瑛、帰ろう。長い間構ってやれなくて、悪かったよ」

「………」

「だいたいおまえは……。そんな、器用にできてる奴じゃないんだ。俺と同じだよ。一人で上手くやろうとしたって、できるわけない。その結果が、これじゃないか」

「………」

「なぁ、瑛……」


 そもそも一体何故、このようなことになったのか。


 話は2週間ほど前から始まった。





   ◆    ◇    ◆    ◇    ◆    ◇    ◆





「こ、これが……! 温泉旅館……!?」


 驚愕に目を見開こうとしたが、そもそも目はなかった。


 ヴェルネウス王国にたどり着いた恭介たちが見たのは、山奥にそびえる巨大な石造りの建造物である。壁には蔦と苔が絡み、樹齢何千年かと思わせるような大樹に絡まれたそれは、旅館というよりは一種のダンジョンのようだ。

 呆然としているのは恭介だけではない。凛や犬神だってもちろん驚いていたし、ゴウバヤシ達も唖然としていた。


「あーうん。年季入ってるように見えるけど、築1ヶ月くらいもないから」


 杉浦がぱたぱたと手を振って言う。


「1ヶ月でここまでできるものなん?」

「案外いけるよー。作ったのはほとんど原尾くんと花園だったけど」


 花園は少し自慢げに胸を反らすが、原尾は相変わらず棺桶の中でイビキをかいていた。


 なんでも、竜崎の広告を発見した杉浦たちは、この旅館を当分の拠点とするために要塞化作業を進めたらしい。木造だった建物をすべて石造りにし、植物の根でより強固にして、更には番人ならぬ番トマトで守りを堅固にした。事実、この建物は杉浦たちが留守の間にも、何者かに侵入され、荒らされた形跡がない。

 中には花園の家庭菜園の他にも、魚住の用意した魚の養殖場があり、衣食住の心配はほとんどないという。ここに茸笠も加わるのだから、インフラ整備はますます完璧と言えた。足りなかった労働力も、ゴウバヤシや奥村などが加わることによって人手が足りてくる。

 確かに、当面の拠点とするには申し分のない場所になりそうだ。


「ほらほら、みんなぼーっとしてないで。荷物の運び込み、やっちゃうよー」

「お、おう」


 杉浦の言葉に引っ張られるようにして、一同は要塞旅館の中に入って行く。中は薄暗いかと思えば、天井につるされているトマトが発光して電球の代わりになっていた。ちょっとトマトが便利すぎないかと思わないこともない。

 運び込む荷物というのも、主に冒険者自治領で買い込んだアイテム類や調味料などだ。大半は杉浦の厨房の前まで持って行き、それ以外は倉庫まで。


 客室は手狭ではあるが50以上の数があり、クラスメイト全員に1部屋ずつ割り振ってなお余裕がある。つまり、生徒ひとりひとりが個室を持てる状態になったのだ。これは、この場にいる多くの面子に好評だった。

 なにせ、こちらの世界に転移してきてからというもの、明確に一人一部屋を割り当てられたことはなかったのだ。最初のダンジョンでは雑魚寝だったし、重巡分校は複数人で一部屋を使っていた。もっと言えば、転移が修学旅行の最中であったから、ホテルも相部屋だった。

 もちろん、自分の部屋に置いておくような荷物など何もないのだが、それでもプライベートルームが得られるというのは実に半年ぶり近い。一部のクラスメイト達は部屋割りについて相談を始めていた。


「ウツロギ、おまえどこにする? 誰の部屋の隣が良いとか、あるか?」

「凛の近くにしといてくれ」

「ほう……。おまえ、言うな……」


 ロビーでわいわい騒ぐ生徒たちを脇に、恭介は石造りの椅子に腰をおろし、地図を広げた。


「大陸の地図か」


 背後で響く重低音。ゴウバヤシの声だ。


「ああ」


 恭介は頷く。


 今、彼らがいるのは大陸の南東部に突き出たヴェルネウス王国だ。南北を火山帯に挟まれたこの半島は、自然も豊かな土地柄である。ひとまず、ここにやってくるまでの間、恭介たちは帝国や血族の襲撃を受けずに済んだ。

 これから、この拠点にどっしり腰を下ろして、戦いに備えなければならない。わけだが。


「ひとまずは、火野だな」


 恭介の心境を、ゴウバヤシが代弁する。


「瑛がこっちの方角へ向かったのはわかってるんだけどな。ひとまず、あいつの居場所を探さなきゃならない」


 火野瑛の行動は、厳密には裏切りとも言い難い。彼なりにベストな選択肢を模索し、その結果、帝国側についた。帝国はこちらの世界でも大きな国だろうし、彼らの庇護下にあれば、元の世界に戻る手段だって見つかるだろう。血族からも守ってもらえるかもしれない。それだけを思えば、決して間違っているとも言い切れない。

 ただ恭介は、こちらの意見も聞かずに強硬手段に出る帝国のことはいまいち信用できない。結果として、拉致も同然の形で、烏丸や御手洗は連れていかれてしまったのだ。王片だって奪われた。


 瑛ともう一度、話をする必要がある。その上で、出来ることなら彼をこちら側に引き戻す。


「ウツロギ、おまえの意見を尊重しようとは思うが」


 ゴウバヤシは腕を組んだまま、背後で言葉を続けた。


「うん?」

「全方面に喧嘩を売るのは得策ではない。おまえは、喧嘩のやり方はあまり知らんのだろう?」

「ゴウバヤシは詳しいみたいな言い方だな」

「フッ」


 3メートル近い巨躯を持つオウガは、小さく笑ってみせる。


「俺も言うほど品行方正な生徒ではなかったということだ」


 豪林元宗は、寺の息子である。高校では拳法部に所属していた。

 人間時代から、凄みの効いた巨躯と彫りの深い強面で、やたらとインパクトのあった男でもある。まさか、本当に喧嘩に明け暮れているような不良生徒でもなかっただろうが、彼が常に竜崎と行動を共にしていた際、“睨みを利かせる”役割りがあったのは、確かだ。


「ゴウバヤシの言う通りデブ。帝国と血族、両方を敵に回すのはリスキーデブ」


 こちらは正真正銘の元不良、奥村曙光のお言葉である。


「ただまぁ、おいらの意見としては、弱腰になって付け込まれるよりは、ある程度虚勢を張っていれば良いと思うデブ」


 人差し指を立てて、奥村は続けた。


「おいら達が、血族のルークを1体潰したのは事実デブ。が、今はちょうど血族にとってもタイミングが悪いんデブ」

「血族は俺たちばかり相手にしていられないってことか?」

「そうデブ。ウツロギの話では、血族の強豪と帝国の強豪は既に激突しているデブ? 全方面に喧嘩を売れないのは、血族側も同じってことデブ」


 瑛、小金井とちょうどめぐり合わせた、あの一件だ。あれは、仲間の大半を両勢力に奪われるという手痛い展開でもあったが、同時に沈静化していた帝国と血族の対立構造が、改めて浮きあがってきた事件でもあった。

 とは言え、勢力的により強大であるのは、やはり帝国の方だ。血族は帝国の動きに警戒しつつ、戦力を拡充していかなければならない。


「噛み付いてきた野良犬を、もう一度叩くような真似はそうそうしないデブよ」

「なるほど。こちらを狙うのは、ある程度地盤を固めた上で、か」


 ゴウバヤシも奥村の意見に頷いている。


「となると、血族は地盤を固めるために何をするのか、ってのが気になるところデブが……」

「紅井が心配だな」


 恭介が呟くと、奥村は静かに頷いた。


 紅井明日香の行方はいまだに知れていない。彼女だけではなく、まだ居場所のわからない生徒は多いのだ。

 連中が戦力を固めるうえで、他の生徒に手を伸ばす可能性は否定できない。現在、血族側には小金井がおり、彼は『クラスメイト達に手を出させない』とは言っているが、さすがに紅井は例外だろう。クイーン紅井は、単純な戦力で言っても最強クラスの実力を持ち、また恭介たち2年4組の生徒にとってもジョーカー的な意味合いを持つ切り札となり得る。


「血族は紅井の居場所を探る可能性があるか……」

「そういうことになると、あまり血族を放置しすぎるわけにもいかんな」

「ああ。連中の動きも見張ってなきゃいけないな」


 さすがに、武闘派2人の意見は役に立つ。今後の方針が、徐々にクリアになっていくようだ。


「そう言えば、もうひとり不良がいたな」


 ゴウバヤシは腕を組んだまま、ロビーの片隅に目を向ける。そこでは、ボロボロのマントに身を包んだ犬神響がいた。視線に気づいたのか、犬神は思いっきりガラの悪い声で『あ?』と返してくる。

 新大陸でセーラー服を失って以来、彼女は着るものがほとんどない。大抵は狼の姿をとっているか、ボロボロのマントを纏っているかだ。目のやり場には、割と慣れた。


「いや、犬神の意見も聞きたいなって」

「アタシが言うことは特にねェな」


 吐き捨てるように、犬神が応じる。


「なンだ。そこのデブが言ったことにはだいたい同意だよ。血族はこの手で潰してやりてェがな。今はまぁ、無理に突っつくこともないんだろうさ」

「ずいぶん冷静になったなぁ」

「今の群れにも愛着が湧いてきたンだよ」


 それだけ言って、犬神はマントにくるまりながらごろんと床に寝そべった。照れているのかもしれない。


「ひとまず血族は原則放置しつつ……それでも情報は集めていく、って感じか」


 恭介は改めて地図を見ながら呟いた。


「連中が、紅井の居場所を特定しているようなら、俺たちもそちらへ先回りする必要がある」

「そうなると、血族と事を構えることになるよなぁ……。背後が不安定な状態で」

「それはお互い様になるデブが、おいら達は早いとこ背後ていこくの方を安定させたいデブな」


 血族とは異なり、帝国は殲滅の対象にならない。交渉の余地があるのだ。

 それ自体は腹立たしいことだが、彼らとはきちんと折り合いをつけるべきだろう。


 だが、その為には対等な立場になる必要がある。具体的には、瑛をこちら側に取り戻した上で、相手側に対して対等な交渉にたる立場であると、見せつけてやらねばならない。


 こちらは全員集まったところで総勢40名。相手はこの世界最大の大帝国である。

 正直なところ、分は悪い。だが、敵対する以上、それくらいの覚悟は必要だ。


「40人で国ひとつを相手にするとは、大層な話だな」

「正確には41人だな」


 恭介は天井を見上げて言った。


「鷲尾も含めるなら、42人だけど」

「俺はそのお姫様とやらに会ったことがないのだ」


 そう言えばそうだったか。恭介は既に数ヶ月前となる記憶を掘り起こしながら、思った。


「ついでに一個、思い出した」

「なんデブ?」

「俺たち、魔王軍だったな」

「あー……」


 ゴウバヤシと奥村は、並んだまま腕を組んだ。


「そう言えばそんな話にもなったデブなぁ……」

「よもや本当に国家を敵に回すような真似をするとはなぁ……」


 集合の合図を下した魔王様は、いまごろどこにいることやら。不在の間は、しっかり新たな魔王城を守ってやらねばならない。その、骸骨参謀として。


「ひとまず、ざっと方針は決まってきたな……」


 恭介は地図をくるくると丸めながら言った。

 他の生徒たちがわいわい言いながら話し合っていた部屋割りも、徐々に決まりつつあるらしい。恭介は彼らに声をかけて、あらためて今後の活動について話し合うため、会議の場を設けることとした。





「まぁ、そんなわけで」


 正座したり体育座りしたり。思い思いの姿勢で待機するクラスメイト達を前に、恭介は咳払いをした。

 場所は以前としてロビーのままだ。が、こうやって大人数を前に司会進行をすることなど、恭介はあまり慣れていない。いっそゴウバヤシに頼もうと思ったが、『俺は竜崎の副官であっておまえの初期ではない』と冗談めかした感じで言われてしまった。本気で言ってるわけではないだろう。リーダー風を吹かさざるを得なくなった恭介を見て楽しんでいるだけだ。あいつは。

 奥村も『おいらは正面に立つタイプではないデブなぁ』と言って、後ろに下がってしまった。話を聞きつけた剣崎が『なんだ、まとめ役か? 私がやっても良いぞ』と割り込んできたが、こちらが不安なので丁重にお断りした。


 というわけで、恭介の隣には凛がいる。いつものことだ。


「今後の簡単な方針については、話した通りだ。血族の動きには注意しつつ、当分は帝国を相手にする」

「その中でも、最優先事項は火野くんを初めとしたクラスメイトの救出。しかる後に交渉、だね」

「ああ、帝国が俺たちを捕獲しようとしている“表向きの理由”は、血族の戦力拡充を阻止するためだ。少なくともその点に関しては、交渉の余地がある」


 問題は、ここに“裏向きの理由”があった場合だ。例えば、“人間が変化した魔物”という珍しい存在を研究材料にしたいとか。もしそういった目的が帝国にあるのであれば、話はかなりこじれてしまう。

 ただ、どのみち恭介たちがとれる行動は限られる。もとより、クラスメイトを見捨てるという選択肢は、ここにはないのだ。


「で、だ。問題は、どうやって情報を集めるか、なんだけど……」


 恭介がそう言いかけると、まず手を挙げたのは杉浦彩である。


「冒険者協会に、ある程度の協力は要請できると思う。ママさんとは定期的に連絡を取り合ってるし」

「おー。“五神星”の“獅吼星”ジャイアント・ママさんだね」

「ママさんは名無しさんとも知り合いらしいから……。直接的な戦力としては期待できなくても、後ろ盾になってくれるだけでだいぶ違うよ」


 五神星は、血族のルーク級、あるいは帝国の皇下時計盤同盟ダイアルナイツに匹敵する個人戦力の持ち主だ。彼らが味方についてくれるというのは、それだけでありがたい事実である。


「あたしも、植物ネットワークを広げていろいろ聞けるかなって」

「それは俺もだな。菌糸を広げたネットワークを構築して、情報収集できる範囲を広げてみよう」


 花園と茸笠は、かつてアルバダンバで犬神を捜索する際も情報収集チームとして参加したメンバーである。

 能力がパワーアップしたことで、その捜索範囲も格段に広がった様子だった。


 他に情報収集案として出たのは、音や振動を操れるようになった猿渡が広範囲の音を集める。魚住兄が、海の生き物を使役して調査を行う、といったものだった。花園や茸笠の構築するネットワーク網と併用すれば、かなりの範囲の情報を把握できそうであった。


「じゃあ、以上のメンバーが情報収集チームだ。その他のメンバーは……」


 恭介は紙にメモを取りながら続ける。


「戦闘訓練だ」

「「「「えええええぇぇぇぇぇぇ―――――――――――ッ!?」」」」


 一部の生徒を除き、一斉にブーイングが巻き起こる。恭介は拳を作って机を叩いた。


「えーじゃない! 俺たちは力を合わせてようやくルークに勝ちを拾えたんだぞ! これからアレと同じレベルの敵を10人は相手にしなきゃいけないんだ! 1人1人パワーアップしなきゃどうにもならないだろ!」

「う、ウツロギくん……。あたしは、えーっと、みんなのゴハンを作ったり、冒険者協会に連絡したり……しなきゃなんだけど……」

「大変だな杉浦……。でも他のみんなも掃除とかあるからな」

「鬼! 悪魔! ダシガラ!!」

「俺はみんなで帰るためなら、鬼にもダシガラにもなるぞ!」


 ディメンジョン・ケースから灼焔の剣ヒートウィーバーを引き抜いて、恭介はパシンと床を叩く。


「恭介くん……。すっかりたくましくなって……」


 ほろり、と涙を拭う仕草を見せながら、凛が呟いた。


「あー、あと戦力拡充の為に、仲間にできる魔物は片っ端からスカウトしていく! 凛! リストアップしたモンスターを読み上げてくれ!」

「はい! “悪霊湿原”にスケルトン、オーク、オウガ、“嘆きの砂漠”にマミー、“戦士たちの墓”にデュラハンを確認!」

「なんかアンデッド系ばっかだなー……」

「今のあたし達がそっちに偏ってるからスカウトできる面子が……」


 これ以外には、“ハナナルカン平原”から“命の森”にかけて、アルラウネやマタンゴの姿が確認できるらしい。

 まずは個人個人が強くなることが最優先となるが、これらの土地に出向いて魔物達を仲間に引き込む必要はあるだろう。かくなる上は徹底的な“攻めの姿勢”が必要だ。生半可な戦力では、血族にも帝国にも対抗できない。


「よく言ったぞ、ウツロギ!」


 首なし風紀委員が、いきなり立ち上がって叫んだ。


「強くなるための鍛錬、戦力補充、私は大賛成だ。それくらいしかできることがないからな!」

「期待してるぞ、剣崎」

「任せておけ! 貴様の剣の腕も、私が磨いてやる! せっかく冒険者から貰った業物が腐らない程度には上達してもらわねばな!」


 そう言えば、そうだった。恭介は剣の扱いはまったくの不得手である。凛と分離した状態でもある程度戦えるよう、こちらも磨いておきたいところだった。

 が、まぁ、やはり剣崎のように乗り気なクラスメイトはほとんどいない。全員がぶーぶーと不満を垂れながら、それでも、なんだかんだ言って恭介の言葉には従うところを見せた。恭介の言う通り、このままでは帝国や血族と渡り合うのは難しいのは事実である。それにまぁ、なんだかんだ言って、彼らは恭介のことを臨時のリーダーとして認めてくれているようだった。


 さて、鬼にもダシガラにもなると宣言した恭介だが、さすがに今日だけは戦闘訓練も行わず、休息の日とした。実を言えば恭介だって、本当はきっつい戦闘訓練など御免被りたいところなのだ。

 だが、これからのことを思えば、そんな腑抜けたことも言っていられない。せめてこの日は英気を養う為の休息としても、明日からは本気で鍛錬に励まなければならないだろう。


 その先に、どのような再会が待ち受けているのか、恭介たちはまだ知らない。




炉心溶融メルトダウンまで、あと14日】

次回はえーっと……26日くらい……?

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