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鉄と炭素と超硬合金  作者: 炭グステン
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超硬合金の焼結Ⅳ-焼結温度の決定-

前回から結構時間がかかったが、今度は温度の話をしちゃうぞ!!

あまりに専門的すぎる話は端折ったが、実際に作業する上では十分な情報なので安心していいぞ!!!

でも危ないから再現とかするなよ!!!


※本稿で紹介する作業は、筆者や、実際の工場の職員による厳正な安全管理の下で行われるものです。大変な事故につながる恐れがありますので、決して本書の真似や再現実験を行わないで下さい。

第2節 焼結の温度条件など

 本節では、焼結時の温度設定や昇降温の速度について述べる。

 早速だが、焼結において最も大切なことである焼結温度についての説明しよう。当然であるが、焼結温度は結合相であるCoの融点以上の温度でなければならない。しかしながら、Coの融点は約1500 ℃である。この温度では、確かにCoは液相になるのだが、WCの結晶粒の粗大化が起こってしまう。また、焼結炉の材料であるムライトやアルミナが耐えられる温度はおよそ1800℃程度であるため、装置の耐久という点でも不安が残る。また、高温であるため、発熱体に使用されるSiCの劣化が促進されてしまう。そこで、1500℃よりもかなり低い温度で焼結を行なう必要があり、実際WC-Co系超硬合金は1300~1400℃で焼結する。

 では、何故Coよりも100℃程低い温度で液相焼結が出来るのかという話になるのだが、この事は表面科学や熱力学等が複雑に絡まり、説明が煩雑になるので、結果だけ簡単に述べると、WCとCo界面の濡れ性が良いため、Co側のエネルギー状態が変化して液相が生じるのである。この場合の「濡れ性」とは、表面同士の馴染み易さを指す.WCとCoでは界面の濡れ性がよいため、CoはできるだけWCとの接触面を増やすために広がろうとする。その結果として、無理にでも広がるのに適した形態である液相になろうとして融点降下が起こると覚えておく程度でいいだろう。筆者はトライボロジーは素人だからだ.したがって、一般的に超硬合金の焼結には1300~1400℃程度が適しているといわれる。ただし、注意しておかねばならないことがある.数g程度の極小さい超硬合金を作製する際には、1400℃まで加熱すると、軟化しすぎて形状が著しく歪んでしまうことがよくある点である。

 次に、温度の昇降であるが、まずは順を追って昇温から述べよう。昇温で大切なのはどれくらいのペースで温度を上げていくかだが、幸いWC-Co系超硬合金は昇温過程で大きな相変態が起こり難い(ただし、Co相では相変態に関して極めて重要な現象が観察できる良い機会があるので、そのうち述べよう)ため、昇温は一定のペースで直線的に行っても構わない。ただ、真空焼結ではずっと排気をしているわけであるから、ゆっくりと昇温して仮焼結まででペレットに付着した有機汚れなどを飛ばすのも手だろう。なお、昇温速度であるが、これは目的とする超硬のサイズや用途でその都度考える必要があり、実際数時間から一日までかなりの幅がある。ごく小さい実験用の超硬ペレットであれば、個人的には1~3 ℃/min程度のゆっくりとしたペースで行うと良いように思う。

 最後に、降温であるが、これも特に降温ペースについて述べることはないだろう。ただし、急冷すると超硬や装置の破損に繋がるため、徐冷が基本である。また、取り出し時には必ず300℃未満になっていることを確認することが大事である.できれば、200℃まで下げるべきである。これは、300℃以上でWCが酸化することで、製品の性能低下や、焼結中に僅かに蒸発して炉内に付いたWが酸化物になり、これが次回以降の焼結時に熱分解されて酸素を生じるためである。また、別の注意点であるが、取り出しのために炉内を空気解放する前に必ずディフュージョンポンプを停止して焼結炉と接続を切っておくことを忘れてはならない。経験上この作業を忘れると、炉内に気化した油が付着し、面倒なことになる。


 以上、本節では焼結時の温度や昇降温の条件に付いて述べた。これらの焼結温度に関する話は、熱化学や表面科学にとって非常に大切な話題であるため、この先もできる限り触れるようにしたい。

クッキー食べてると焼結機構の事考え始めることがある訳ですが、カントリーマアムって常温でもしっとりした液相?ぽいのがあって面白く感じます。

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