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鉄と炭素と超硬合金  作者: 炭グステン
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超硬合金の焼結Ⅲ-本焼結の基礎-

ラノベサイトで本気の科学文書を読んでる奇特な読者諸君!

この章からは本焼結の話に入るぞ!!

本焼結は工学系の学部1年後半から3年までバラバラに教わった熱力学やら表面科学やら組織学やらの内容が複雑に絡み合ってくるぞ!!!

そこら辺のカタルシスが分かる変態酸さんには、高校レベルまでの理科教育がマジで糞の役にも立たなく思えることもあるけど、先生の前で言ったりしたらダメだぞ!!!!

大抵教える人間の頭の問題だからえらい目に合うぞ!!!!!


※本稿で紹介する作業は、筆者や、実際の工場の職員による厳正な安全管理の下で行われるものです。大変な事故につながる恐れがありますので、決して本書の真似や再現実験を行わないで下さい。


第4章 本焼結(超硬合金の完成)

第1節 焼結方法の特徴と選択

 さて、本章からはついに超硬合金作製の最重要工程である本焼結についての解説を行う。本来は前章の仮焼結までと合わせ、真空焼結法を中心に一章で述べるつもりだったが、本焼結に関する技術は化学熱力学、反応速度論、結晶工学および材料組織学等の多くの学問分野に根差す極めて重要な項目であるため、本章を丸ごと用いて解説を行うことにした。

 それでは早速焼結法の種類と特徴について述べよう。まず、超硬合金の焼結に関する大前提だが、熱力学的な観点からみた場合、WCは鋼といった一般的な金属炭化物に比べてW-C間の反応性が低く、高温下では酸化による脱炭が発生しやすい。そこで、超硬合金の焼結に際して、いかに無酸素状態を作り出すかが重要となる。そこで主に4つの方式が考案された。まずそのうち3つは、アルゴン雰囲気、水素雰囲気もしくはアルゴンー水素混合ガス雰囲気という、不活性ガス中での焼結である。そして残りが真空焼結である。

 まず、不活性ガス中の焼結の特徴だが、焼結時にある程度の流量でこれらのガスを流しながら加熱を行うことで、仮焼結や成型時に僅かに仮焼結体表面に存在する酸化物の分解によって生じる酸素押し流すことで非常にクリーンな環境を作り出すことが可能となる。特に水素が含まれる場合では、WC中の炭素よりも、水素と酸素での反応が優先して行われるため、脱炭の防止に最適である。そのため、高い品質を求められる場合にはこの方法が良いだろう。一方で、不活性ガスの使用にはコスト面での問題がある。市販のアルゴンや水素ガスには、製造時に必ず微量の酸素が混入する。そこで、焼結に使用する際には酸素を吸着するフィルターを通す必要がある。このため、大量生産が求めらる場合には、この工程で莫大な費用が発生する事になる。

 次に真空焼結についてだが、この方法では、焼結炉内をロータリーポンプやディフュージョンポンプを組み合わせた装置で10^-3~10^-4 Torr程度の気圧まで真空引きをしながら焼結を行なう。この方式では、不完全な酸素の除去、低圧による焼結炉への負担、焼結時の寸法の狂いが発生する可能性があるなどの問題があるが、それらを考慮しても不活性ガスの中の酸素除去に比べて費用面でのメリットが大きい。また、ガスを用いる場合に比べ、爆発等の危険がないため安全性についても真空焼結法に軍配が上がる。

 以上を踏まえ、超硬合金の焼結を行なう場合の方式の選択であるが、特に高品質なものを求めらる場合以外は、真空焼結法を選ぶのがよいだろう。したがって、これから本章で述べる内容は真空焼結が中心になる。

本章から、超硬合金の本焼結の話になる訳ですが、実はここら辺の分野と第2章辺りのWCの合成法などについては、筆者が大学院まで専攻してきた熱化学の、工業的応用として約3年間に渡り研究をしてきた分野です。という訳で本来誤った解説は許されないのですが、やっぱり間違っていたり、あまりにも説明が簡素過ぎると思われる個所もあるかと思います。従いまして、そういった問題点の指摘や、他分野の観点からの意見がありましたら是非ともレビュー等でご教示頂ければ幸いです。

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