超硬合金の焼結Ⅱ-成型から仮焼結まで-
さあ、メインイベントに入ったぞ!
ここでは原料の成型から仮焼結までの話をするぞ!!
実際に作業すると異常に地味な癖に超硬の出来を左右する重要な工程だぞ!!!
ところで、温度表記を~Kじゃなくて~℃としているのはこの分野の慣例として℃表記で管理することが多いからだぞ!!!!
論文書くときはちゃんとKで書いた方がいいぞ!!!!!
ここまで書いてて思う所があったから↓の注意書きも付けとくぞ。最悪の場合死ぬから絶対に再現実験とするなよ!!!
※本稿で紹介する作業は、筆者や、実際の工場の職員による厳正な安全管理の下で行われるものです。極めて危険ですので、決して真似をしないでください。
第2節 圧縮成型から仮焼結まで
これまで、原料の混合から結合剤の選択までの流れを紹介してきた。本項ではついに、紛体の成型から仮焼結といった、原料から実際の製品へと形作られていくのが視覚的に分かる工程の解説を行う。
まず、圧縮成型だが、文字通り、原料の紛体に圧力をかけて成型を行う工程である。超硬合金では大抵の場合、超硬合金製の金型を用いて圧縮成型を行う。この工程で使用する金型は、WCに5~10 mass%のCo相を添加したものが用いられ、高い弾性率を有するため、紛体に高圧をかけた際の応力による金型の変形が起こり難く、精密な成型に最適である。圧縮時の加圧であるが、WCにCo相のみを添加した場合では1~2 MPa程の圧力をかけて成型を行うと比較的欠陥の少ない成型体が出来るだろう。必要以上に加圧を行った場合、金型と成型体の固着が起こり、取り出し時に成型体の欠損等の問題が起こる。こういった問題を避けるため、成型時には必ず金型に潤滑剤を塗布しておく必要がある。潤滑剤としてはパラフィンやグリセリンが一般的であるが、経験上、筆者はこれらをエタノールで溶いて使用するのが最適であると考える。成型工程には他にも注意しなければならない点がいくつかある。1つは、WC-Co系では、Coが磁性体であるため、試料を金型に押し込む際にCo粉が金型のCoに引き寄せられ、若干ではあるがCo相の偏りが生じる。ただし、素早い作業で回避できる。もう一つは、金型から試料を取り出す際であるが、単軸式の成形機を用いる場合、作製した成型体は、加圧方向に対して垂直方向の力をかけると簡単に崩壊してしまう。取り出しには注意が必要である。
次に脱脂ついて述べよう。以前の章でも述べた通り、仮焼結の前に脱脂を行う。この工程で、混合や成型時に使用したグリセリンなどの有機溶媒を蒸発させる。400℃付近で、水素やアルゴンなどの気流中もしくは真空排気しながら行う場合が多い。ただし、水素やアルゴンは、微量に含まれる酸素の除去や、有機溶媒の蒸気との反応、爆発性など、コストや安全面での問題があるため、真空排気が主流である。
最後に、仮焼結の解説を行う。この工程で成型体は硬めの焼き菓子ほどの硬さになり、細かな形状の加工が可能になる。成型体の硬度が上がるのは、成型体中のCoの熱拡散によるものである。Coの融点は約1500℃であるが、600℃付近でもCo粒子の結合は発生する事が分かっている。Coの磁性が関係しているような気もするが、筆者はその辺は専門外であまり詳しくないため、ここでは割愛する。脱脂と同様に、この仮焼結も水素、アルゴンまたは真空中で行う。うまく脱脂ができていない場合、仮焼結の際に残留した有機溶媒が分解して発生する炭化水素、酸素や水によるWCの分解が起こるため、これらの対策が必要となる。例えば、グラファイト粉末に成型体を埋め込むことで、ガスとの接触を減らしつつ、グラファイトと優先的に反応を起こさせてWCを保護するなどの手段が挙げられる。
以上、本項では圧縮成型から仮焼結までの工程を説明した。次節では遂に真空焼結の解説を行う。
遂に仮焼結まで来ました。いよいよ次回は本焼結の解説を行いますよ。