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鉄と炭素と超硬合金  作者: 炭グステン
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原料混合の話 episodeⅡ

さあまだまだ混合の話は続くぞ!

第2節 原料粉末の混合と成型Ⅱ-原料混合中の組成操作等に関する事-

 原料の混合方式は湿式が望ましいということは第1節で述べた。引き続き本項では、原料混合中の組織制御技術を紹介する。

 第1章で述べた通り、WCは極めて高い硬度を有する物質である。また、結合剤であるCoもWC程ではないが高い硬度を有する元素である。したがって、ボールミルやアトライターによる混合では、原料粉末による装置内部の破壊で生じた不純物のコンタミネーションを考える必要がある。

 最も一般的なのは鋼製容器や鋼球を用いた場合であるが、原料中への鉄の混入が問題となる。当然、鋼には合金元素として、ニッケル、クロムなども含まれるがこれらの影響については非常にややこしい割には大きな悪影響を及ぼさないため、ここでは極めて重大な問題である鉄に注目する。 鉄の影響を解説するにあたって、まずはその性質について述べる必要がある。鉄に炭素を0.1~6 mass%添加したものを鋼と呼ぶのが一般的である。鋼では、炭素が鉄の格子中に炭素が侵入することで格子に歪が生じて硬度と靭性のもととなる。鋼は製造時の高温下ではFe3Cという組成の固溶体からなるが、実際に使用される常温下では炭素の一部を遊離炭素として放出する。この性質が、WC-Co系超硬合金に致命的な性能の低下をもたらす。

 原料混合中に粉末に鉄が混入すると、真空焼結を行なう際の高温状態で、WCから炭素を奪い、Fe3Cを形成する。Fe3Cは丈夫な物質だが、WCに比べると硬度に劣る上に、非常に柔らかい遊離炭素相を吐き出すため、超硬合金の性能を大幅に低下させる。また、後焼結機構の項目で合わせて述べる、超硬合金の焼結不良の原因ともなる。

 したがって、鉄の混入を防ぐ必要がある訳だが、工業的にはセラミックス製装置などは高価である割に耐久性に難があるため、鋼製装置を用いざるを得ない。そこで、極力鉄の混入を防ぐという考え方が大切である。これは、原料と溶媒の比率、ボールのサイズや個数等および回転速度の調節によって操作を行う。具体的な数字は業者や技術者によって異なり、また、重大な企業秘密であるため記載は避けるが、筆者の行った実験環境では、試料全体が浸る程度の溶媒を用いて比較的長時間の混合を緩やかな回転速度で行った際に最も良い結果が得られた。

 筆者の専門は材料合成技術を中心とする分野なので、結晶工学や材料強度周辺分野の話は誤った記述もあるはずです。

 というわけで、そのような点がございましたら是非ご指摘いただけると光栄です。

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