原料製造技術と諸々
諸君!超硬好きか?超硬!
重金属だが特に毒性とかないぞ!
しかも超硬いぞ!
緒言
超硬合金とは、一般的にタングステンカーバイドを結合剤で焼結した工業材料を指す.英語ではcemented carbide若しくは、hard metalと呼ばれる.名前に’合金’の文字が入るが、厳密には合金ではない.本稿はそんな超硬合金についての工業的考察である.
第一章 原料の製造
本章では、重要な予備知識として、超硬合金の原料であるタングステンカーバイド(WC)の性質、製造方法について述べる.
まず、WCの原料となるタングステンだが、タングステン鉱石ないし、タングステン酸アンモニウム(APT)といった化合物の状態で輸入される。そして、中温で熱分解、熱還元を行い純タングステン(W)が製造される。続いて、浸炭を行うことで、WCができるわけであるが、浸炭時の温度は1500 Kを超える高温であり、Wの結晶成長が無視できない。そこで、浸炭の前処理として炭化クロムなどの結晶成長抑制剤を添加する。この時混合にはボールミルやアトライターを用いるわけであるが、コスト面の問題で、鋼材の機器を使用する。これが致命的である。
WCほどではないが、Wも金属元素の中ではトップクラスの硬さを有する元素であるから、混合装置の一部が削れて混ざってしまうのである。こうして混入した鋼が後々の超硬合金の性能へと影響を及ぼすのだ。
浸炭に話を戻すが、浸炭方法にはさまざまな手法が存在する。最も普及しているのは、W粉末に結合剤を混ぜ、圧縮成型を行った後に真空若しくは、水素やアルゴン気流中で加熱をおこなう方法である。現在はコストの問題で真空中で行うのが一般的である。
こうしてタングステンカーバイドは生まれるのである