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打てども打てども。

ピピ、ピピピ、ピピピピピ


〈ガシッ〉


いつもの電子音で目が覚めた。



「ふわぁ〜。」

ベッドの棚の目覚まし時計に目をやるとAM8:15。


最近、座りっぱなしのせいか?腰が痛くなり、それなりの値段のするマットレスが付いたベッドを購入した。


「お値段以上それ以上..」の量販店ではなく、それなりの店で購入したものだ。


遊んで暮らすのも、身体が資本。

たまには遊興費以外にも、金をかけるべきだろう。

まぁ。ベッドに関しては、金銭面よりも、急階段を上げる方が大変だったのだが。



新しいベッドを入れても、部屋は相変わらず汚いままだ。

絨毯を新調しようと思ったが、古い絨毯を剥がすのに、家具を退かすのが面倒臭くてやめた。


砂漠の国の石油王が来るわけでもない。気にはしないでおこう。


...この際、キノコの類いが生えなければヨシとする。

どうせ、一人増える緑のキノコや、大きくなる赤いキノコは生えないだろうし。




俺はベッドから降りて、テーブルの前に座り、セ○ンスターに手を伸ばした。


カチッ。


「ふぅー。」

百円ライターでタバコに火を付けた。


以前買った高級ガスライターは、父親に羨ましがられたから渡した。


親孝行でも何でもなく、やはり俺のような若造が持っていても、様にはならない。


それと、無くしても悔いのない百円ライターの方が落ち着くのだ。




タバコを吸い終え、急階段を降りて行く。


台所へ行き冷蔵庫を空け、残り少なくなった牛乳を見付け、らっぱ飲みしていると..母親がどこからともなく現れた。


「っんもう。またそのまま飲んで。コップって云う文明まで到達してないの?」


「んだよ、朝っぱらからウルセぇな。残り少ねぇからだよ。」


「残り少ないからって、みっともない!!」


「洗い物も減るし、合理的じゃねぇかよ。」


口論のように思われるが、母親とのこの手の会話はある意味スキンシップみたいなもんだ。


そんな他愛ないやり取りをしてから、シャワーを浴びに浴室へ向かった。


シャワーを浴びた後、部屋に戻り身支度を整え、出掛ける事にする。


玄関先で母親に「行ってくるよ。」と告げて、車庫に向かう。


最近は、腰が冷えるのを考えて【車通勤】が多い。勿論、単車にも乗るが。


そもそも、俺は単車にはこだわりがあるが、車には何のこだわりもない。

極論。動いて、停まって、また動けば良い。

だから「車検まで乗れれば良いから」とツテを頼って安い車を見繕ってる。

車検がそのまま通れば乗るし、修理が高く付くなら廃車にして、また安い車を見繕う。

大概は、元高級車のオンボロを買う。

排気量が大きく維持費は掛かるが、丁寧に乗られたであろう車ならば、内装は綺麗だし、ガタも少ない。

あくまで、車は【アシ】なのだ。無駄な金を掛けたくない。


そんなオンボロの高級車で、家を出た。




途中、ガキの頃から良く行く[商店]に立ち寄り、朝飯に菓子パンと紙パックのいちご牛乳。それと缶コーヒーとセ○ンスターのボックスを二つ購入した。


...ここのおばちゃんは悪ガキ時代から知っていて、気心知れた仲だ。

そもそも息子さんは、悪ガキ仲間の先輩で権力者だ。今は落ち着き、土建業で頑張ってるそうだが。


「先輩によろしく言っておいてよ。」

と言うと、おばちゃんは笑いながらも

「もう悪い事に誘わないでよ。」

と母親の顔を覗かせた。


思わず「無理矢理誘われたのはコッチの方だよ!!」と言いたくなったが、それは藪蛇だろう。




俺が今通ってるのは、隣の市にあるC店だ。

ガキの頃に、隣の市の連中とは仲が悪かったから、良い思い出はない。


だから足が遠退きがちだったが、いざ行ってみたら甘い。


まぁ。いざこざがあっても「ガキの頃の話だろ?成人してまで引きずるなよ、水に流そうぜ。」と白い八重歯を輝かせて言ってやるつもりだ。


...歯は黄ばんでるし、八重歯もないが。



そんなこんなでC店に付いた。


駐車場に車を停めて、開店と同時に浅ましく店内に突っ込んでいく猪武者達を横目にしながら、車中で菓子パンといちご牛乳の優雅な朝食を楽しんだ。


そして

「ふぅ、さて行くか。」

缶コーヒー片手にくわえタバコで車から降りて、そそくさと店の中に入った。



俺の目当ての機械はライフワークだ。


2回ワンセットの権利物。


324分の1。出玉約4000個。


この店は、一回交換のスタイルだから、朝は慌てる事はない。

少し遅れてシマに入っても、大概は一番バッター。選び放題なのだ。


ちなみに、換金率は66玉、3円交換だ。




昨日打っていた台にタバコを置こうとしたが、何か違和感を感じた。


「ヘソがデカい?昨日確率ガミで負けたから、親切で開けてきたのか?」

しかし。ここは勘繰って然るべき、台とにらめっこした。

ブッコミから外に向かう調整になり、更には風車が逆を向いて、ジャンプ釘が下がっている。


「なんだこりゃ?」

タバコを置くのをヤメて、端から順にヘソを見て歩いたら、ヘソだけは全体に開いてあるが、その他は締められてる台がチラホラ。


「あー。ヘソだけ読める奴向けの調整ね。」



それならと。道が綺麗な台を探して

「ヘソが大きく開いて、他は多分据え置きだな。昨日よりも回せるハズ。」

そう踏んだ台にタバコを置いた。


両替を済ませて、タバコを置いた席に腰を落とした。コーヒーをグビリと一口飲んで、いざ尋常に。


本日の勝負開始だ。



回転数を自分で数えながら打っていく。

データ表示気は当たり回数しか出ないからだ。


方法はアナログなやり方だ。

まず下皿に玉を少し流しておく。

そしてあらかじめ買っておいた、ボックスのタバコのフタの部分を千切っておく。


1回転させたら、玉を下皿から一つ取り、握る。

2回転させたら、玉を二つ〜と。

5回転させた時に、手の中には玉が5個。

6回転目からは、一つずつ戻していく。

最後の一つ、10回転目の玉は千切ったボックスのフタに入れる。これで10回転。それを繰り返していく。

何せ。タバコのフタの部分は、測ったようにパチンコ玉がピッタリ10個おさまる大きさなのだから、利用しない手はない。


...そうして回転数を取っていくと、やはり昨日よりも回る。


回りには嬉々としても、投資スピードが半端ない。


しかし。この機械は図柄こそ少ないものの、ドラムの扱いが上手いメーカーだけあって、長時間打っていても飽きがこない。左、右、中の挟み止まりするドラムが良い味を出している。


何より。打ち込みが早いものの、吐き出しも早いのだ。

2回権利ながら、数珠連で来る。4000個が連チャンするんだから、射幸心は煽られる。


そして、2回目の権利獲得よりも、連チャンの当たりの方があからさまに早いのだ。


連チャン獲得時の投資は抑えられるのは有難い。



そう思いつつ打ってると、当たり引くまでに....また三万を越えた。


最近は、いつもこんな感じだ。千円辺り26回転以下の台に手を出してはいないが、淡々とハマっていく。


最初のうちは

「たまにはこんな日もあるさ。」

と嘯けたが、当たりが引けない日が続くと、気がおかしくなりそうだ。





...投資が4万越える直前、ようやく本日初の当たりを引いた。


とは言っても、当たりの瞬間は見逃したが。


何せ、リーチ中も諦めだった。リーチ中に回りを見渡すと、俺だけが苦労してる錯覚に陥った。

そして恥ずかしながら、ピョピョピョピョピョピョと甲高い電子音で自分の台の当たりに気付いたのだ。


慌てて左下の役物に玉を入れ、無事権利獲得。右で当たりを消化した。


一旦席を離れ缶コーヒーを買いに、外に出た。ネガティブさを無くすには、一旦台から離れる事だ。


席に戻ってから、2回目の権利を獲得手間取り....出玉をけっこう減らした。


4000発切った出玉を流して、連チャンに期待する。


恐らく初当たりとの合算で230〜250分の1になるはずだ。30%近い連チャン率はあるだろう。


権利終了後の初めてのリーチが、天王山だと思う。連チャンか?否か?の。


そして....。


初めてのリーチを、あっさりスルーした。


また投資に入る.....。




そんな感じで一日が終わった。


カウンターに、一日分のレシートを纏めて出し、相当な量の景品を抱え、店から出てすぐの景品交換所で現金を受け取った。


後ろに並んだ客の羨望の眼差しを受けながら。


....負けているのだがね(笑)




流石に10万越えると、襲われないか?不安になる。


腕っぷしに自信があると言っても、所詮は極東の島国の農耕民族の末裔だ。

襲われる度に「おらぁワクワクすっぞ」とか言える、生粋の戦闘民族の彼とは違う。



...最近負け過ぎているからか?妙な臆病風に吹かれつつ、オンボロの高級車で帰路についた。







今回は、少し冗談を増やしてみました。



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