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ゲームが現実(リアル)で、リアル(現実)がゲーム!?  作者: 日出 猛
第1章 ~起~ 俺が雪姫?!
5/27

5話 事態を引き起こした犯人は?

考察回です、主人公のキャラクター上避けて通れない部分ですが、謎解きには興味ないという人は飛ばしても大丈夫です。

 足りない情報は多々あるものの大まかな状況は把握できた。

 夢なら何れ覚める筈だし何が有っても問題はない。多重人格であるというのは認めたくない所だが、そう看過されて治療という名の元に行動を制約されて武人()が消されるのはごめんだ。もし真実解離性同一性障害であるなら、本体である雪姫や家族のことを考えれば良いんだろうが、誤解でそう診断され薬物や催眠療法で俺を壊されたんじゃ堪らない。真相を突き止めるまで、精神障害だと思われることは避けないと行けない。俺が別人格だという結論に至ったら……その時のことはその時考えれば良いか。

 今考えるべきは、別の世界にいた日野武人()の精神がこの世界で天王院雪姫の身体に入ってる信じがたい現実の、理由と方法と意味に辿り着き、元に戻る方法を見つけることだ。


 正直、元の世界に強い執着があるか? と聞かれればNOと答えただろう、こうなる前は。夢に破れ、今の仕事はやりがいなく、都合が合えば遊ぶ程度の軽い付き合いの友人は居ても特別親しい相手も恋人も居ない。この世界に良く似たゲーム『Hidden Secrets』だけが楽しみってな寂しい生活だった。

 もし、俺の理想を形にしたメインキャラクターの天王院日火輝になって居たら、この世界に残りたい帰りたくないと思ってた自信が有る。日火輝は線の細い美青年とは違うが精悍で野性的な男前という言葉が似合う、男から見て格好いいと憧れるタイプの顔立ちで、背も高くスポーツマンで体つきも無駄なく引き締まった筋肉に覆われていて、少なくとも武人()よりもずっともてるだろう。

 長身美形のスポーツマンでインストラクターを定職にしており収入も武人()よりは随分多いだろう、美味すぎる家庭料理を食べさせてくれる嫁にしたくなるような妹と歳の離れたお人形のような可愛い妹が居る。それに『Hidden Secrets』の設定に準じて居れば日火輝にはフレンド設定された多くの仲の良い友人・戦友や他ユーザーのプレイヤーキャラクターである恋人まで居る。かすみ(恋人)もこっちの世界に居て日火輝と付き合ってるのかな? 儚げな雪姫ともしゃきっと気風の良い風吹貴とも異なる清楚で包容力のあるおっとりした和風美人の顔を思い出す。


 実際にこの境遇(雪姫の身体)になってからは、一刻も早く元に戻りたいと思ってる。実物になった雪姫の姿は他人として見る分には将来が楽しみな美少女なのは間違いないし、4,5年後なら彼女にしたいとは思うが、自分でなるものじゃない。まだ幼すぎて性的な対象としてみるには抵抗があるが、子供と割り切るには成長し過ぎて扱いに困る。あまりにも華奢で非力な身体はほんの数時間の日常生活だけでも随分と苦労を強いられたし、体力のある日火輝だけならまだしも、女の風吹貴にまで子供のように扱われるのは男として屈辱的だ。女の子というのは、横で愛でて語り合い抱きしめ可愛がる対象であって自分でなるものじゃない。

 それに、雪姫の社会的身分が中学生というのも不自由だ。自身で生計を立てて独立して暮すことはできず保護者の管理下で暮さざるを得ない、必然的に行動範囲が制限される。ゲームの中では設定上のものでイベント位しか関係なかった学園にも通うことになるだろう。さぼったとしても平日昼間にうろついてる中学生(制服を着ないと小学生にも見える)に世間は寛容ではないだろう。

 大きな家で裕福らしい天王院家に、格好いい兄、美人で料理上手な姉、小柄で華奢だけど間違いなく美少女と言える容姿は元々女であったり、女になりたい男だったら大喜びな条件なんだろうが、俺にとってはデメリットばかりだ。美味かった風吹貴の料理も日火輝は雪姫()の4倍以上食べていた、武人()も元来大食漢な方で制限時間以内に食べきれば無料のカレーとかラーメンとかのチャレンジメニューで食費を浮かせたりしていたから日火輝が食べた程度なら軽く食べることができた。それが雪姫の身体だと美味しいのに半人前位しか受け付けないんだから精神的に満たされない、日火輝の境遇と比べて理不尽さを感じる。


 雪姫はあまりしゃべらず主張もしない性格だったらしく、今のところ日火輝()風吹貴()も不信感を持っていないようだがいつかは雪姫()がおかしいと気付くだろう。そうなるとどうなるか分からない、多重人格として精神科で治療を受けさせられるかもしれない、少なくとも行動に大きな制約を掛けられることになるだろう。そうなる前に、俺はこの境遇から脱する為に行動するしかない。


 夢や多重人格という仮説では改善手段の講じようがない。夢ならやがて覚めるだろうし、多重人格だと俺が消える方法を探すことになる。この世界の雪姫の身体に別世界の武人の精神が招喚されたという前提で解決策を探るしかない。

 武人()が『Hidden Secrets』で天王院雪姫というキャラクターを使っており、雪姫が『Real World Online』で日野武人というキャラクターを使っていたことは、何らかの因果関係があるに違いない。どう関わってるかは幾つもの仮説が立てられるから検証は後回しにするしかない。


 プレイヤーの3分の1位は覚えてもおらず、残りの半数位もあまり意識してない設定だが『Hidden Secrets』は、並行宇宙論に基づいてデザインされていた。雪姫のような魔法少女が存在する世界、仮面のヒーローが活躍する世界、様々な異能を使う異能者の世界、それらの世界では魔法少女やヒーロー、異能者が人知れず(・ ・ ・ ・)それぞれの敵と戦っていた。けして交わる筈のないそれらの世界と、魔法もヒーローも異能もない平凡で平和な世界が、ある日1つに重なった。1つの世界に魔法少女の倒して来た魔獣が、ヒーローが戦ってきた怪人が、異能者が戦ってきた異端が暗躍するようになり、お互いの事情も知らぬまま魔法少女がヒーローが異能者が平和を守る為に今までと異なる敵とも戦い始めることになった。

 しかも、1つに重なった並行世界は4つではなく無数の世界である。別の少女が魔法少女に選ばれた様々な魔法少女達の世界、異なる若者がヒーローになった様々なヒーローの世界、違う者が異能に覚醒した様々な異能者の世界と少しずつ違った平和な世界。そうした無数の可能性として存在した並行世界が1つになった世界が『Hidden Secrets』の舞台だった。

 ここが『Hidden Secrets』に類似した世界であるならば、並行宇宙論が仮説ではなく事実であり同時に条件次第で並行宇宙の壁を越えられるということになる。つまり、この『雪姫が居る世界』と元の『武人()の居た世界』がそれぞれ別に存在したとして不思議はない。


 ここで問題になるのは、どういう理由と方法で雪姫の身体に俺の意識が宿っているのかと、それに何の意味が有るかだ。

 方法についてはここが『Hidden Secrets』に準じる世界であれば、魔法もあれば異能もありそれらの全てが開示されていた訳でもないので、そういう力が存在しても不思議はない。有るとも断言できないが無いと言いきれない話だ。

 分かってることは、中学2年生の雪姫の身体の中にいきなり武人()の意識が今日入って居たということだ。雪姫の持つ特殊能力である映像記憶(現実にも稀に居る能力)が使えるから雪姫の脳を使って思考して居るんだろう。だが、俺の意識が入る以前の雪姫の記憶は思い出せない。物質的なものは何も移動しておらず移動したのは俺の意識や記憶だけということだ。


 考えられるのは、

 1:雪姫の記憶・意識と武人()の意識・記憶が2人の身体の間で交換された。

 2:雪姫の脳の領域を分割され、武人()の意識・記憶が雪姫の意識・記憶と別に格納され雪姫の意識は眠っている。

 3:雪姫の意識の支配下に武人()の意識・記憶が置かれており雪姫の記憶へのアクセス権限がない。

 4:雪姫の脳に武人()の意識・記憶が上書きされた。

 このあたりか。

 並行世界間でというのは知らないが、フィクションの中では何かの事故や装置で別人と意識・記憶が入れ替わるという話が小説でも映画でもアニメでもよくある。俺がやって居た『Hidden Secrets』と雪姫がやっていた『Real World Online』の妙な符合が接点として作用したのかもしれない。この場合、雪姫は武人()の元居た世界で武人()の身体に入ってることになる。雪姫がゲームのキャラだと思ってれば平気なのかも知れないが、思春期の少女が成人した男の身体になって耐えられるんだろうか? すぐに何かできる訳じゃないが心配になる。手塩にかけて育てたキャラクターと言えば我が子のようなものだ、自分の手を離れて独立して存在してるとしても少なからず愛着を感じる。自分に代えてもとは言わないが、可能な限り雪姫のことも助けたいと思う。

 2番目と3番目は雪姫の脳の中に2人分の意識と記憶があるという点は同じ、大きな違いは2人の意識が対等の別ユーザーアカウントである2番目と雪姫が上位者として武人()を監督してる3番目という違い、3番目では俺は雪姫の意識や記憶を認識できないが雪姫は俺の記憶や言動をモニターできることになるし、その気になればコントロールを何時でも奪えるのかも知れない。日火輝()風吹貴()の反応を見る限り大人しいと思われる思春期の少女が自分の裸や姉の裸を記憶に鮮明に焼き付けたのを無視してるとしたら悪戯好き(いたずらずき)にも程があるだろう。雪姫がリアルタイムで俺の行動をモニターし介入できる可能性は限りなく低いだろう。

 2番目の場合、何かのきっかけでユーザー権限が俺から雪姫に切り替わり俺の意識が眠るということもあるのかもしれない。眠った時という可能性があるが、さっき気を失った時には変わらなかった。スイッチがあるとしたら別の何かなんだろう。それには注意した方がよさそうだ。

 4番目は、脳に無理が掛りそうな2番目、3番目より現実的な思考かもしれないが、一番避けたい話だ。自身の娘や妹のように思う雪姫の意識を消滅させたというのは考えたくない。そうなってる覚悟は一応するが、そうでない前提で行動しよう。


 理由も仮説を立てて整理しよう。闇雲に探るより調査の絞り込みができる。

 1:俺が意図的に引き起こした。

 2:俺が意図せず引き起こした。

 3:雪姫が意図的に引き起こした。

 4:雪姫が意図せず引き起こした。

 5:俺と雪姫の行動がシンクロし引き起こした。

 6:第三者が意図的に引き起こした。

 7:第三者が意図せず引き起こした。

 8:超越者()が引き起こした。

 9:全くの偶発的事故。


 まず、1だがこれはないと断言できる。確かに俺は元の暮しに飽き飽きしていたから脱却は願っていた。しかし、俺が『Hidden Secrets』の世界に移動する手段を有していたなら、絶対に雪姫を選ばず日火輝を選んでいた。それに俺は異世界の人間やゲームのキャラクターに乗り移ったり入れ替わったりするような手段を知らない。2であれば、可能性は否定できない、知らずにこの現象を起こす手順を行使しており対象が雪姫になったのは偶発的な結果。意図せずやった可能性だから否定できない、今日『Hidden Secrets』にログインしたさい雪姫を選択しては居た、あくまでゲームとしてのログインだが。今日ログインしたタイミングや状況が現象に繋がってたなら雪姫になった理由かもしれない。


 次に3と4だが、雪姫は魔法少女なのでゲームクリエイター崩れの派遣社員である武人()よりは並行世界を越えた人格入れ替わりなんていう現象に縁は有るだろう。『Hidden Secrets』では人格を入れ替えたり並行世界に介入する魔法やスキルは確認されていないが、GMが仕掛けるイベントで操作キャラクター(人格)交換はありえないものではないし、並行世界の超越は『Hidden Secrets』の設定の根幹にある。それを起こすアイテムを意図してかあるいは偶然入手して作動させたのかもしれない。偶然引き起こす可能性は雪姫の方が高いが、意図したとした場合の理由は?

 雪姫の家庭環境は概ね恵まれていると言っても良いだろう、母親は居らず父親は不在がちらしいが歳の離れた兄姉が両親代わりに愛情を注いでくれている。ただ、雪姫がその生活を投げ出したくなり得る要因には2つ、いや3つ心当たりがある。

 1つ目は、この身体の弱さ。ほんの数時間の体験だけでも非力さによる不自由を実感してるし歳の割に発育の悪いこともコンプレックスになり得るだろう。もっと健康で強い身体になりたい、俺も今そう感じてる。

 2つ目は、交友関係。元の俺(武人)も友人が多いとは言えなかったが、家族・親類と取引先以外で数十人程度の友人はアドレスと携帯番号を知って居た。雪姫の友人0というのは尋常ではない。親しい友人が居ないだけならまだしも、(いじ)めを受けている可能性もある。

 3つ目は、魔法少女の使命。雪姫がどういう経緯で魔法少女スノープリンセス・ユキになったかは分からない、『Hidden Secrets』では初めから魔法少女としてキャラメイクされているから。場合によっては魔法少女として活動することが大きな重荷になっていたのかも知れない。

 雪姫の意図的な現象かどうかは別として、雪姫の過去と置かれている環境については調べる必要がありそうだ。


 5番目のシンクロによるというのは、有力な候補の1つだろう。俺が『Hidden Secrets』で雪姫をプレイしており、雪姫が『Real World Online』で俺をプレイしていた。単なる偶然としては出来過ぎている。その符合が二つの世界を近づけたのかも知れない。並行宇宙論の中には、量子論の量子の揺らぎで確率論的に生じる全ての可能性が、少しずつ異なる世界として無限に生じ続けているという説もある。無数に居る武人()の中には『Hidden Secrets』をプレイしてなかった者も、『Hidden Secrets』はしていても雪姫を持ちキャラにしてない者も居ただろう。そして無数に居る雪姫の中には『Real World Online』で武人()以外のキャラを使っていたり、『Real World Online』をプレイしてない者、魔法少女になって居ない雪姫も居たかもしれない。無数の俺と無数の雪姫の中で条件の重なった2人の間に、並行世界を越えた精神の移動が起きた。直接的な原因ではないかもしれないが、何かの暗示があるとしか思えない。


 6,7番目もこの世界が『Hidden Secrets』に準じるものであれば、並行世界を越えた精神の移動という現象を起こし得る者は存在する。ヒーロー世界で怪人を生み出す闇の科学者、魔法少女世界で魔物を生み出す魔人、異能者世界の異端たる異能者、ゲームではGMによってコントロールされるプレイヤーキャラクターより強力な力を持つNPCノンプレイヤーキャラクターだった存在には、今回の現象を起こす可能性は有る。ただ少しゲームに詳しい程度の俺が狙い撃ちされた可能性は皆無だろう、俺にはそれだけの価値は無い。雪姫は魔法少女(スノープリンセス)なので狙われる理由はあるが、雪姫1人を狙った計画という可能性は低い。雪姫は稼働半年のキャラとしては破格の強さだが、『Hidden Secrets』全体では初期から稼働してた魔法少女達は雪姫よりはるかに強力だ。意図的に狙われたとしても、多数の魔法少女あるいは異能者やヒーローらを含めた『Hidden Secrets』のプレイヤーキャラクター達の1人として巻き込まれたか、真の標的の前の実験対象という所だろう。たんに無作為に選ばれた可能性も十分に考えられる。


 8番目の超越者()によるもの、アインシュタインも神はサイコロを振らないというし神が起こしたのであれば、意図してないということはないだろう。俺と雪姫がオンラインゲームで互いをキャラクターとして持っていたことさえ神の仕込みということになる。そんな極端な運命論は受け入れたくないな。

 9番目の全くの偶然、並行世界の人間と入れ替わるなんていう奇跡どころでない偶然を起こす位なら宝くじにでも当ててくれよ。誰も意図していないが星の巡りやなにやらの働きが並行宇宙の扉を開いたとか、フィクションなら許容範囲だが我が身に起きた現象としては容認できないな。


コンコン

 考え事をしていた所に扉がノックされた。


状況整理回。初○○は有りませんし、考察好き以外には欠片も面白くない話ですが、避けては通れない部分なのでご容赦を。


今後これだけまとまった考察は最後の「答え合わせ」までない予定です。

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