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ゲームが現実(リアル)で、リアル(現実)がゲーム!?  作者: 日出 猛
第2章 ~承~ 雪姫として進む日々
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25話 パパの帰還と身体測定

 重い振袖を着せられた初詣で苦労した3が日も終わり冬休みの後半戦をのんびり辞書の読みこみをしながら過ごしていた。この辞書の記憶は重い辞書を持ち歩く代わりにはなるがあんまり便利じゃない。文章として全部記憶して血肉になってる訳じゃない。たんに頭の中に辞書がありそのページをめくって記載を読めると言うだけだ。でも、辞書を持ち運ぶことを思ったらずっと良い。

 そんな時、玄関のドアが開く音がした。風吹貴は15時まで仕事で日火輝は18時まで仕事だから14時過ぎに帰ってくるはずはない、鍵を閉め忘れてたのかとダイニング脇の階段を下りていくとそこに男が居た。

 男は大きかった。玄関の床の高さと階段1段分高いのに目線が上を向く背丈は日火輝よりさらに高いらしい。年齢は40代か若く見える50代という感じの巨漢と呼ぶにふさわしい茶髪の男だ。思い当たる人物として1人居ることは居るが、間違える訳にはいかない、どうする?

「ただいま、雪姫。1人で留守番か?」

 男がそう切り出した。ただいまというからは家族の一員の筈だが、家族だからこそ万が一にも間違える訳にはいかない。ただいまというのも海外赴任から帰って来た意味でなら同居でない親族も使っておかしくない。

 かといって黙ってばかりも居られない、ボロの出ない返答をしないと。

「おかえり……」

 最低限の回答、ただいまと言った相手におかえりは相手が『パパ』その人であれ、それ以外の人物であれ大きく外してはいない筈だ。目の前の人物は雪姫の携帯に登録されていた数少ないアドレスの1つである『パパ』かそれ以外の親戚筋で同年代の伯父(ないし叔父)か歳の嵩んだ従兄という線だろう。

「雪姫つれないなあ、どうしてパパにお帰りのハグしてくれないんだい?」

 目の前の人物の正体はパパだと確定したが、雪姫という娘がパパにどう接していたのかが全く分からない。これまで2週間程だが一度も帰らず正月三が日明けて帰ってくるということは留守勝ちな仕事をしてるんだろうが。


 そんなことを考えている所に、援軍にも敵の増援にも成りえる人物が帰って来た。

「ただいま、雪姫。おかえりなさい、パパ。2人して見つめ合ってどうかしたの?」

 帰って来たのは雪姫の姉の風吹貴だ。いつの間にか美容室の仕事上がりの3時を回って帰って来たようだ。風吹貴に『パパ』が訴える。

「帰って来たのに、雪姫がお帰りのハグしてくれないんだよ、どうしよう」

 しょうがないなこの人はという表情で呆れたように風吹貴が応じる。

「雪姫だって何時までも子供じゃないんだよ、もう中学2年生だし、家族より大切にしたいお友達だってできるお年頃なんだから。パパに抱きつくのが恥ずかしくもなるわよ」

 きつい風吹貴の言いように押されながらも『パパ』はあきらめきれないのか、訴えを続ける。

「雪姫が大人になるのはうれしいけど、クリスマスにお正月と家族と離れて仕事してたパパにいたわりがあってもいいじゃないか」

 だだをこねる父親に対して風吹貴が折れる。

「じゃあ、あたしもハグするから、雪姫もパパにハグしてあげてね」

 そういって、風吹貴はパパの前に寄り添って立つと首に腕をまわして頬を触れ合わせる。ハグってそう言うことをするのか? この俺が4,50代の見ず知らずのおっさんに抱きついて頬を触れ合わせるなんてどんな罰ゲームだ。そんな風に逡巡していると、敵増援の攻撃が届いた。

「ほら、そんなに嫌そうにしないの。ハグしてあげないとパパが泣いちゃうよ」

 風吹貴は援軍ではなく敵増援だったようだ。

 階段を下りて玄関先で『パパ』の前にたつ玄関の一段分の差があるのに雪姫の背は肩にも届かない、目の前に立つと『パパ』の身体は分厚く逞しい。か細く華奢な雪姫の身体とは大違いだ。雪姫として暮す上で避けられないコストの支払いとして覚悟を決めた。

 雪姫()は精一杯背伸びして高い『パパ』の首に手を回すとぶら下がるような状態になる。その雪姫の細い身体を『パパ』の逞しい腕が抱き上げて、頬をすりあわされる。『パパ』の髭は剃られていてジョリジョリとすれることは無かったが、見知らぬおっさんとほほをすり合わせるのは苦痛だった。


 リビングに入って風吹貴が『パパ』にコーヒーを自分と雪姫にミルクティーを出して来たのでリビングで『パパ』と並んで座る。熱々のミルクティーをふうふうと冷まして飲みながら風吹貴と『パパ』の会話に耳を傾けていた。

 『パパ』は豪華客船のキャプテンをしているらしい。クリスマスから3が日に掛けてはクリスマスクルーズやニューイヤークルーズで仕事詰めだったらしい。年齢はまだ48歳で誕生日を迎えたばかりだという。日火輝の年齢を考えるとかなり若い父親だ。

 それから3日間『パパ』は息子と可愛い娘2人に囲まれた休暇を過ごしてから職場である客船に戻って行った。


 『パパ』襲来が終わると直ぐに冬休みが終わって新学期が始まった。宿題は終わっているし、教科書をおさらいしてあるので不安なく迎えることができた。始業式が終わり授業が始まって間もなく、次のホームルームは身体測定を行う旨伝えられた。

「身長どれだけ伸びたかな?」

「ダイエットしないと」

 等口々にはなす級友たちの声が聞こえる。雪姫の小ささを改めて突き付けられる身体測定は気乗りしないイベントだ、他の女生徒の裸を目にする機会もあるだろうし、気が重い。サイズといえば2週間前に服を買いに行った時に3サイズとアンダーバストを図られていたが、変化があるもんだろうか?


 身体測定当日、朝もめいいっぱい食べ、お弁当も残さず食べきったと言っても元の量が他人の半分ほどでしかないが。少しでも増量しようといじましいことをしていた。

 ホームルームの時間になるとクラスの男子が追い出され、A組の女子がやって来て体操服に着替える、測定の多くは体操服姿で行うらしい。

「体重増えてないか心配」

「身長伸び悩んでるんだよね」

「最近ブラがきつくなってさ」

 A組とクラスの女子の会話が聞こえてくる。20代半ば過ぎの男が聞いててすまない。という気分にさせられるが部屋から出る訳にはいかない。順番が来るまで自習という名の自由時間になる。教室を出ずに過剰に騒がない限り何をしても良いという。丸暗記した脳内教科書の復習でもしようかと思ってると、焔邑と珠ちゃんが席に来たので会話に加わる。

「雪姫ちゃんは細いから体重で悩んだりしないでしょ」

「成長期なんだから体重だって増えて当然だよ、骨も筋肉も胸も成長するんだから」

 珠ちゃんが雪姫を羨み、悩みと無縁に見える焔邑が笑い飛ばした。

「あら、天王院さんに紅衣さんも今日もご一緒で仲がよろしいのね。せっかくですし、身体測定で1つ勝負いたしませんこと?」

 A組の美少女No.1の日之宮媛輝(ひめか)だ。

「勝負ってどんな勝負?」

 勝負事が好きな焔邑が既に乗り気になっている、否応なく勝負を受けることになりそうだ。

「勝負は単純な測定値比較ですわ。大きい方が良い物、身長・バスト・ヒップは大きい者が、小さい方が良いウェスト・座高・体重は低い方が勝利ということで勝ち星をくらべますわ。主要6項目が引き分けの場合、補助的にトップとアンダーの差のカップと身長と座高の差の股下を使いますわ」

 つまり身体測定の数値を使って女性としての魅力対決をするってことか、なんでも一番の女王様キャラというのも大変だなぁ。こっちは身体が借り物だし勝ち負け気にする意味も無いんだが。

 なんだかんだで雪姫、焔邑、珠ちゃんと媛輝の4人で一緒に回ることになった。


●ROUND1 身長

 まずは基本となるサイズということで身長をはかる列に加わった。2mの高さの身長計が雪姫の視点からみるとそびえるように高い。まず焔邑が測り、157cmを記録した。

「またちょっと伸びたみたいだね」

「焔邑ちゃんうらやましい、ちょっと分けてよ」

「なかなか、やりますわね」

 会場に書かれた平均身長は中2女子が155cmって事だから中の上くらいの身長になるのか。

 続いて媛輝が身長をはかるどちらも雪姫からみるとかなり大きくて区別が難しいが媛輝の方が焔邑より少し高い。

「日之宮さん162cm」

 髪を掻き上げポーズを決めながら媛輝が勝ち誇る。

「まずは1勝ですわね」

 続いて測った珠ちゃんは148cmで低いグループの中で比較的ましという水準だろう。最後に回って来た雪姫()は覚悟を決めて身長計に乗る。

「天王院さん142cm」

 その数字はPCのスペックで知っていたがちゃんとその通りの身長してるんだな。この日、雪姫は学年1低身長だったことが判明した。


●ROUND2 体重

 続いて基本第2段ということで体重に勝負が委ねられる。

 今度の一番手は、珠ちゃんだ。

「丸居さん、44kg」

 身長の割には体重があるように聞こえるが健康的な肉付きで丁度良い位に見える。

「あちゃあ、朝昼抜いたんだけど44kg行っちゃったか」

「小振りな体型だけに見事ですわね」

「次はあたしだね」

 焔邑が迷いなく気安い感じで体重計に乗った。

「紅衣さん、50kg」

「50kgちょうどかきりが良くていいね」

 50kgの大台に乗っても気にした素振り無くあっけらかんとしている。実際見た目の印象はもっと軽そうなんだがスポーツ少女で筋肉質な分体重が重めになるんだろうか?

 大台だしても気にした様子のない焔邑を見て媛輝は面白くなさそうに組んだ手の指で肘を叩き続けている。自分の番が来て苛立ちを笑顔の下に隠して体重計に上った。

「日之宮さん、47kg」

 160cm台の身長に40kg台の体重だから分かりやすくスリムだと思わせられる数値を出して、媛輝は鼻高々という態度をしめす。分かりやすい感情表現が可愛く見えてきた。

「次、天王院さん」

 媛輝に見惚れて順番を忘れて居たんで呼び出された。それに気付いて体重計に乗る。

「天王院さん、29kg」

 聞いた瞬間、何かの間違いじゃないかと反応できずにいた。媛輝がビックリして顔をひきつらせているし、焔邑と珠ちゃんは心配の色を浮かばせている。

「天王院さん、大丈夫ですの? ちゃんとお食事されてます?」

「雪姫ちゃんもっと食べるようにしないとね」

「ごめんね雪姫、あたしがお弁当を取ったりするから」


●ROUND3 胸囲・バスト

 衝撃的結果に終わった体重に続いてバストへと向かった。女の子的にはここも重要な勝負どころなのかもしれないが、借り物の身体で勝った負けたもないし、気にする所ではない。

 まず先手を取ったのが、媛輝だった。媛輝は圧倒的物量を見せつけて黙らせるつもりだろうか。ピンクの鮮やかなブラに包まれた上半身を惜しげも無くさらす。

「日之宮さん、84cm、アンダー66㎝」

 自慢げに二連装84cm砲をどんと付き出してくる。その自慢げな態度に律儀に応えて珠ちゃんが歯ぎしりをして見せているが半分以上つきあいの演技だろう。

「紅衣さん、79cm、アンダー67cm」

 焔邑は赤い縁取りの白の下着を素早く体操服に包んだ。続いて珠ちゃんが体操服を脱いで幼児体型をさらす。

「丸居さん、74cm、アンダー65cm」

 珠ちゃんに促されて、雪姫()は雪姫の細い身体をさらす。

「このブラこの前作って貰ったやつでしょ、可愛い」

 体操服を着ながら珠ちゃんが指摘してくる。水色のブラには左の胸の部分に雪だるまのワンポイントが入ってる。

「……うん、そう」

 雪姫の身体に女教師のメジャーが回される。

「天王院さん、59cm、アンダー52cm」

 非常な数字がでるこの前服を買いに行った時から変化はないらしい。

「天王院さん、あなたもっとしっかり食事された方が良いわよ」

 第3ラウンドで媛輝が2勝目を獲得した。


●ROUND4 腹囲・ウェスト

 続いて移動した先はウェストのサイズを測るコーナーで、女生徒たちは皆順番が来ると体操服の裾をめくり上げて測定していた。

「紅衣さん、57cm」

「丸居さん、57cm」

 続いて測られた2人のウェスト値、値その物は同じ数字だが他の数字を込で考えると残酷な差となる数字だった。

「やるなぁホムラ、同点だ」

 そういう残酷な数字だということに気にせずあっけらかんと応える珠ちゃんという子は心が温かくなる。

「日之宮さん、58cm」

「なんですってぇーっ! ムキーッ、悔しいですわ」

 その数字を読み上げられた瞬間、まくりあげた上着を下ろすのも忘れて、くやしさを全面に出す子供っぽい所は可愛いかもしれない。

「天王院さん、42cm」

 その異次元な数字が出た瞬間、媛輝が悔しがるのをやめて、心配そうな顔を向けてくる。前に聞いてる焔邑と珠ちゃんの反応はそれ程でもない。

「天王院さん、本当に大丈夫ですの?」

「……大丈夫」

 心配そうな目で見られるのがくすぐったくてならない。雪姫は丈夫とは言えないもののなんとか学校に通えるくらいの健康は維持しているから、中学生に心配されるほどではないだろう。

 第4ラウンドで媛輝が全員に敗退という意外な結果になった。


●ROUND5 胴囲・ヒップ

 続いてヒップ測定に入る。

「紅衣さん、82cm」

「丸居さん、78cm」

 同じウェストから焔邑が4cm立派なヒップに繋がってるということか。ふぅんとライバルを値踏みする視線を向けた後、媛輝が測定に入る。

「日之宮さん、86cm」

 焔邑よりも4cm立派なヒップで、ウェストの1cm差を補って余りある中学生離れしたボンキュボンぶりだった。とたんに自慢げに胸をはる媛輝の分かりやすさが可愛く見えてきた。

「天王院さん、66cm」

 雪姫のヒップの小ささにまた媛輝が狼狽する、そんなに可愛そうなものを見る目をしないでくれ。

 第5ラウンドで媛輝が3勝目を獲得した。


●ROUND6 座高

 最終勝負の座高の測定が始まる。

「じゃあ、今度はあたしから行くね」

 勝負を気にした風もなく無邪気な態度で測定に進む。

「紅衣さん、80cm」

 身長の半分に近い好成績を記録し、かなり足長だと証明してくれた。

「じゃあ、次ワタシね」

 珠ちゃんが続いて座高計にひょいと飛び乗る。

「丸居さん、80cm」

 またも焔邑と同じだが非常な意味を持つ数字が読み上げられる。しかし、動じた様子も無く明るく珠ちゃんが応じる。

「また一緒だね、ホムラ」

 珠ちゃんが手を上げてハイタッチを焔邑と交している。この流れは何となく前に見た気がする。

「日之宮さん、81cm」

「なんですってぇー!」

 媛輝の悲痛な叫びが響く、媛輝は全体的に大きいのがウェストや座高では不利になる。81/162だから80/158の焔邑よりも割合としては足長なのに、座高という数字で比べると大きくなるんだ。

 次の測定で呼ばれた雪姫()がちょこんと座ると座高を測られた。

「天王院さん、69cm」

 そう読み上げられてから、一瞬不思議そうな顔をした後媛輝が驚いた顔で改めて雪姫の頭の天辺からつま先まで見詰めると溜息をついた。座高の比率が69/142だから雪姫は股下が50%を越えて長いと気付いたのだろう。


●勝負の行方

 6つの対決が終わり媛輝は、焔邑には身長・体重・バスト・ヒップの4項目で勝利し、ウェストと座高では惜しい敗北を喫したものの総合では勝利した。

 しかし、雪姫が体重、ウェスト、座高の3項目で1位を取っているので3勝3敗、バストカップ対決が18cm差のDカップ対7cm差のAAカップで媛輝の勝利。股下対決が81cm対73cmで媛輝の勝利の為に辛うじてミス中等部の面目が保たれたが、股下対決が長さでなく比率だと雪姫の勝ちというので勝利に納得が行ってない様子である。

 この対決で、全項目勝利なしなのに笑顔を絶やさない珠ちゃんこそ一番の勝者なのかもしれな

存在だけ示されていたパパ初登場と身体測定です。

雪姫が小さいことが良くわかります。あと媛輝さん可愛くなってきました。

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