幻術使いの黒ローブ
その後、ソードダンサーズは、三回戦、四回戦と勝ち抜き、準決勝へと駒を進めた。この試合に勝てば、本戦に出場することができる資格を得る大切な試合だ。
「いいか、お前たち、これに勝てば本戦にいけるんだ。気合を入れていくぞ。はっはっはっは」
控室で哲也は、清隆と巴と共に気合を入れていた。
「分かっていますよ、杉並先輩。」
「分かっているさ、杉並。」
清隆と巴は哲也の呼びかけにそれぞれ応じたのだった。
そして、準決勝。相手は「幻夢の使者」。幻術使い三人の集まるチームだ。哲也と謎の黒ローブの男、チームリーダー同士の握手をかわす。
今回は、1VS1の試合三戦の個人戦。チームメンバー三人がそれぞれ相手一人と試合をし、三人の勝利数を競う形式だ。
相手が魔法でランダムに選ばれそれぞれ会場に移動される。清隆、巴、哲也の相手は全員黒ローブに身を纏っていて姿がわからない。そして、準決勝は、合図とともに始まったのだ。
清隆は、対戦相手を見る。深呼吸をし、右手に闇帳、左にパンサーブラックを構える。二つの黒き剣。それらの重みに頼もしさを感じる。
そして、試合開始の合図とともに清隆は、魔法で対戦相手の黒ローブの男、【ここでは、黒ローブAとする。】の後ろに回り、攻撃をする。パンサーブラックから黒い閃光を放った。ブラックストライクだ。すると、黒ローブAが不気味に笑う。
「くっくっく、あわてなさんな旦那。幻影魔術、摩天楼!」
と、黒ローブAが清隆の視界から消える。そして、視界に広がるのは、華やかなビルがいくつも建っている景色だ。
「・・・・っ!」
清隆に何処かからナイフが飛んできた。
「くっくっく、ボクがどこにいるのかわかるかな。」
空から声が聞こえる。だが、清隆はそれを無視して、溜息をつきながら、闇帳を天に掲げる。
「我が刀よ、汝の封印されしその力を解放せよ。我が名、宮野清隆の元に。」
すると、闇帳から、艶がでて、回りが紫色に染まる。清隆が、その瞬間、少しふらつく。
清隆は、力を解放した闇帳で空間を斬る。闇帳の力で幻影を作っている魔力は分解される。すると、華やかな建物は消え、元の大勢のギャラリーのいる会場へと景色が戻っていた。
「な、なんだと。」
今起きている現象が信じられないような顔で戸惑いの声をあげる。清隆は、戸惑いでできた黒ローブAの隙を逃さず攻撃をする。ブラックストライクは黒ローブAに直撃し、黒ローブAは、倒れて気を失い、瀕死判定が出されるのだった。しかし、清隆も闇帳の力の解放で魔力を大量に使い、今にも倒れそうだった。
「ハアハア、まだまだ僕も修行が足りない・・」とつぶやく清隆だった。
巴は魔法で作られた空間で幻術で作られた魔獣と戦っていた。
視界に広がるのは一面の砂漠。魔獣の大群だった。幻術とわかっている魔獣たち。しかし、その攻撃を無視することはできない。この魔獣たちは皆、本物の武器を持っているのだ。
巴は、トカゲのような顔立ちをした魔獣の剣を素早く払い斬りこむ。トカゲのような顔立ちをした魔獣は、光となって消える。すると、槍で巴を攻撃する魔獣がいた。それを巴はよけ、素早く魔獣の腹を突く。魔獣は光となって消える。これの繰り返し。キリがない。
巴はこの状況を打開する策を考える。考えた末、巴は、不気味な笑みを浮かべる。
「出番だよ、ギルティ。」
巴は黒騎士「ギルティ」を召喚する。以前、巴が契約した黒騎士だ。
ギルティは、召喚された直後、「ストーム・オブ・ラグナロク」を放つ。砂漠に竜巻が起こり、魔獣は魔力となって消え、術者は吹き飛ばされる。
すると、空間を作る魔力が破壊され、砂漠は消滅し、視界に元の会場の景色が広がる。巴はさらに攻撃を仕掛ける。
「ギルティ、「闇を纏いし剣槍」いくぞ。」
ギルティは仮面の目を赤く光らせ反応する。
巴が剣精霊「テンペスト」召喚し、剣に変える。そして、その剣が浮かぶ。それの剣の柄を剣で突く。同時に、ギルティも槍に闇を纏わせ「黒騎士の闇槍」を放つ。剣と闇の閃光にブーストされた剣が対戦相手の黒ローブBに飛んでいく。これが「剣が作る槍」と「黒騎士の闇槍」の合体技、「闇を纏いし剣槍」だ。黒ローブBは、それをよけきれずまともにそれをくらう。そして、黒ローブBは倒れて、瀕死判定が出される。巴の勝ちが決定した。
哲也は幻術で作られた空間にいた。視界に広がるのは、一面の森。すると、哲也がいるところへナイフが三本飛んでくる。
「三つのうち、二つは幻術か・・」
全てを見通す眼を発動させた哲也は幻術を見破り、本物のナイフだけを短剣ではじく。
「やるね、でも、次はどうかな?」
何処かからか声が聞こえる。発信源はわからない。そして、声が終わると同時に、四方向から弾丸が飛んでくる。
「四つのうち、三つは幻術か・・」
またも哲也は幻術を見破り、本物の弾丸を短剣ではじく。
「くそ、どうして見破れるんだ。私の幻術はそんな簡単に見破れるものではないはず。」
と言う声が聞こえる。
「いいか、教えてあげるから、よく聞け。俺にはどんなに強力な幻術をかけられようとも俺には効かない。ははははははは。」
「そんなわけがない。」
「いや、本当さ。だって、俺は最強だからな。はははははははは」
「ふざけたことを・・・・これでもくらえ。」
「もう、無駄だ。お前がどこにいるのかぐらいわかっている。」
「やってみなきゃわからんだろう。」
どこからか銃弾が五つほど飛んでくる。
哲也はそれらを華麗な短剣捌きではじき飛ばす。
「はあー、無駄だっていっただろうに・・・お遊びは終わりにしよう。これでもくらいな。光速の弾丸!」
哲也は、短剣を2丁拳銃に変えて両方の銃口から光速の弾丸を放つ。すると、
「うぐっ、がはっ・・・」
遠くから人の苦しみだす声が聞こえる。
普通なら死んでいるほどの致命傷だが、この大会のフィールドには「ホーリーフィールド」というこの魔法のなかでは死なないという効果の魔法がかかっているので、対戦者が死ぬことはない。
弾丸が相手を直撃すると、元のフィールドに戻る。黒ローブのリーダーが倒れていた。
「俺に幻術は聞かない。相性が悪かったな。ははははははは。」
哲也は高笑いをする。
リーダーに瀕死判定が出た。この瞬間、三戦全勝でソードダンサーズの勝利が決定した。