表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの争乱(マジシャンズ・パーティー)  作者: 星見 夜人
ワールドエンド・リメンバー・オブ・ダイアリー編
68/68

再会したもう一人の幼馴染

次の日。

焼き魚の匂い。卵焼きを焼く油の音と匂い。味噌汁の匂い。

清隆は久しぶりに料理をしていた。朝食の準備だ。

峰隆もハヤトも料理は出来ないので、清隆がいる時は毎日、朝食当番だ。

ただ、清隆は思う。

自分がいない間、朝食はどうしていたのだろうか、と。

しかし・・

(まあ、いいか、どうにかなってんだから)

と、清隆は勝手に納得し、料理を続ける。

「おっ、卵焼きはそろそろいいかな。」

清隆は卵焼きがいい塩梅に焼けたので、皿に移す。

「味噌汁はどうだろう?」

清隆はおたまで味噌汁を少し小皿に移してすする。

「よし、出汁もうまく取れてる。われながらいい出来だ。」

清隆は火を止めて、お椀に味噌汁をよそり、ご飯も茶碗によそる。

そして、朝食をテーブルに並べて、準備完了。

「ハヤトー、じいさんー、飯できたぞ。」

すると、

バタバタバタ

勢いよく階段を降りてくる音がする。

そして、清隆をすり抜けて、テーブルのまわりの椅子に座る影が二つ。

「ハヤト、じいさん、席に着くのが早いな。」

清隆はそんな二人に呆れて席につく。

「「「いただきます。」」」

三人は手を合わせて、そう言った。そして、朝食を食べる。

「これ美味いです、清隆さん。」

「うむ、腕は落ちていないようだな、清隆。」

ハヤトと峰隆は清隆の料理を絶賛する。

それから、夢中になって朝食を食べる。だから、無言だった。しばらく続く沈黙。

「・・・」

清隆はそんな沈黙に耐えられなくなり、とある質問を峰隆に投げかける。

「そういえば、じいさん、兄さんが昨日、帰ってこなかったけど、何か知らないか?」

そんな清隆の質問に箸を止めて、峰隆は答えた。

「・・うむ、義隆の奴は、帰り道でバイクがパンクして、現地にとまってるとさ。」

「そうか。大変だな、兄さんも。」

「自業自得だと思うだが。」

それから、朝食を食べ終える。

峰隆とハヤトは、朝食を食べ終えるなり、それぞれ、どこかに言ってしまった。

(暇だな・・怪我が治らないと修行は始まらないしな。どうするかな)

清隆は一人、居間で寝っころがりながら、暇を持て余していた。宿題がないわけではないが、やる気になれなかった。

「おっ」

清隆のケータイにメールの着信が。清隆はそれを早速見る。


東公園ににて、待つ。


とだけ書いてあった。

送り主の所は文字化けしてわからなかった。

「暇だしな、騙されるのもまあいい暇潰しになるかな」

清隆はそのメールに従うことにした。いつもなら、こんなわけのわからないメールは無視するのだが、暇だという現実が清隆を動かした。

清隆はバイクに乗って急いで東公園に向かった。

(しかし、いったい誰がこんなメールを。)

清隆はそうつぶやきながら、バイクで道路を駆け抜けた。

そして、数分で公園へ。

清隆は公園に着くと、人がいないか、あたりを見渡す。が、公園には誰もいなかった。

(誰もいないか・・しかし、誰もいない公園というのも不気味だな)

清隆はそんなことを思いながら、来ないかもしれない相手をただ待ちつづけた。 なぜか人がこの公園を通りかかる様子もない。本格的に不気味に感じる清隆だった。

「タカ坊、発見!」

「ぬわっ⁉」

清隆は後ろから何者かに抱きつかれる。

いい匂いがする。さらに清隆の背中に豊かなふたつの膨らみがあたっている。

「おっ、このだき心地、昔と違う感じがするけど、これはこれでいいわ。」

(昔?)

清隆は後ろが確認できないが、後ろの声と抱きつかれている感覚から、知り合いの女性であることを察する。

スリスリ・・

後ろの女性は清隆に頬をこすりつけてきた。さらに吐息までかかってきた。

(そろそろ、やばいな。まあ、僕も健全な男子高校生なんだからしょうがないが・・でも、まずい)

清隆は女性の手を無理やり振り払う。

「いたっ・・」

女性は転んでしまったらしい。清隆は手を差し伸べようと女性の方をみようとして後ろを向く。

「えっ、秋乃?」

清隆は女性を見て驚いて固まってしまった。

その女性の名は青海坂秋乃(あおみざかあきの)。清隆のもう一人の幼馴染で、清隆より一つ年上。清隆は小さい頃はよく、静香や秋乃とよく遊んでいた。しかし、清隆が小6の時にドイツに留学に行ってしまったはずの人物だ。

「はっ、大丈夫か?秋乃」

「大丈夫よ、でも、手をかして」

「了解」

清隆は秋乃に手を差し伸べて秋乃がそれに捕まって、立ち上がる。

それから・・

「ほんとに久しぶりね、タカ坊」

「ああ、久しぶりだな、夏休み中も帰ってこなかったから、もう6年ぶりだな」

「ええ。ほんとは帰ってきたかったけど、色々あってね。」

「そっか」

久しぶりに見た秋乃は見惚れるほど綺麗になっていた。

赤い髪を左右を一部束ねて、その他の髪を後ろに垂らしている髪型は昔と変わらないが、顔立ちや雰囲気は完全に大人の女性だった。

「それはそうと、タカ坊、私たちはお互いに秘密を打ち明けなくちゃいけないわ、今後のために」

突然、秋乃はそんなことをいう。

「秘密?そんなものないけど」

清隆はいかにも嘘をついていないかのような口調で秋乃の言葉に答える。

だが、清隆には秘密がある。

それは魔法使い、魔術師であること。

魔法の存在が例外を知られていない日本では、魔術師であることをばらしてはならない。そして、バラせば偏見をもたれるかもしれない。清隆はそれが嫌だったから、この秘密を隠した。

「・・・本当に?」

秋乃が清隆を疑うような目でそう言ってきた。

「・・・本当だ」

清隆は平常心を装い、そう言った。

正直、嘘をつくのは心が痛んだがそれは譲れない。

「あくまでも隠しとおすつもりね。しょうがない、私が先に言うわ。タカ坊、私、実は魔術師なんだ。」

「なっ⁉」

清隆は秋乃が告げた衝撃の事実に驚いてしまう。

「驚いているようね、タカ坊。でも、これは事実よ。」

「・・・そこまで言われれば、隠す必要はないな。秋乃も察しているかもしれないけど、僕も魔術師だ。」

「うん、知ってる。しかし、驚いたわ。魔闘会を見に行ったら、清隆がそれに参加していて、しかも、優勝しているんだもの。」

「なるほど、魔闘会で僕を見たから、僕が魔術師だってわかったのか。」

「うん、まあ、そういうこと。」

「じゃあ、秋乃はドイツ校にいたのか?」

清隆は秋乃に疑問を投げかける。秋乃に確認して、聞きたいことがあった。

「そうよ、ドイツ校所属よ。」

「やっぱり・・でも、あそこは・・」

清隆は言葉をつまらせた。

ドイツ校は先日の魔獣の大量発生で学校が壊滅してしまった学校の一つだった。

「そうね、あそこは壊滅してしまったわ。」

秋乃は清隆の言葉を察して先にその言葉を口にした。

「じゃあ、どうするんだ、秋乃。学校のことも考えなくちゃならない。」

「ふっふっふ、それは・・大丈夫よ。」

秋乃はその質問を待ってましたと言わんばかりににやけ始めた。

「な、なんだ、どうした、秋乃」

清隆はその不気味な笑みにビビってしまう。こういう笑みの時はきっといつもよくないことが起こると決まっていたからだ。

ゴクッ

清隆は思わず息を飲む。

そして、秋乃は話を続ける。

「実は、夏休み以降、私は、清隆も通っている、イギリス校の生徒になるのよ。」

「な、なんだって⁉」

清隆は驚いてしまう。

秋乃は次に溜息をついてこう言った。

「そんなに驚かなくってもいいじゃない。とにかく、よろしくね、清隆。」

清隆は秋乃の言葉に青ざめてしまう。

清隆は振り返る。

秋乃にされた数々の悪行を。

口答えをすると、頭蓋骨を割られそうになり、気に入らないことがあれば、すぐに八つ当たり。

だから、清隆の反応は当然・・

「冗談じゃない、僕は認めたくない。そんな馬鹿なことがあってたまるものか」

といい、清隆はバイクに乗り、

帰ろうとする。

が、

「ねえ、タカ坊、今なんて?」

秋乃は冷たい口調でそんなことをいう。

「だから、冗談じゃないって・・ぐわあああああああああああああ、割れる、割れる、割れる・・」

清隆の言葉は遮られ、秋乃の手が清隆の頭を掴み、そのまま、頭蓋骨を割ろうと力をいれてくる。

「どうしてよ!」

「割れる、割れる、割れる・・」

秋乃の力がさらに増す。

「さあ、答えなさい、タカ坊、どうして、冗談じゃないと言った理由を。」

「割れる、割れる、割れる・・」

「この状態じゃ、喋れないか。」

ようやく清隆は秋乃の手から解放される。

「理由?そんなのは決まってるじゃないか。さっきみたいに無理やり力でいうことを聞かせようとするからだ」

「いや、あれはね、愛情表現よ。しつけという名の。」

「そんなしつけがあってたまるか」

「ははは、まあ、さっきはごめんなさいね。で、もう一つ。」

「まだあるのか」

「冷たいわね」

「あんな攻撃をくらったあとじゃね」

「まあいいわ。もう一つはね・・」

「もう一つは?」

「私をうちに泊めてくれない?」

「は?」

秋乃の口から出た言葉は清隆を驚かせた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ