旅立つとき
その後、分身したナイトメアは、皆の努力により、全体、倒される。
島からも出られるようになり、メリッサからもらった札でアメリカ校に帰還する。
義隆を連れて帰ることはできたが、多くの犠牲を出した。
報告を終わらせて、清隆、哲也、エドガーは、イギリスに帰還する。
帰還するとイギリス校も再開すると聞いた。
清隆を待っていたのは、巴の妹、友香の悲しそうな言葉だった。
「そんな・・姉さんが・・・死んだ・・」
「ごめん、友香。君の姉さんはかばって死んだ。巴さんを殺したのは俺だ。」
「いいえ、姉さんはきっと、自分の意志で清隆さんを守ったんです。だから、別に清隆さんがそのことで責められる筋合いはありません。」
友香のその言葉は一番清隆にとって辛い言葉だった。
許してもらえたのに辛い。どこかで巴を亡くしてしまったことを責められたかった自分がいる。むしろ、責められた方がよかった、スッキリしたと思っている。相手に辛い気持ちを抱えさせていることが気がかりだった。
「友香、姉さんの形見を渡しておくよ。」
清隆は巴が使っていた剣を友香に渡す。
「これは姉さんの・・・」
「ああ。あとこれも。」
清隆は左手の刻印をみせる。
「それは・・精霊刻印・・どうしたんですか?」
「巴が死んだ時、僕の手に刻まれたものだ。これは巴さんの刻印だ。だから、これは君が受け取るべきだ。」
「・・・いいえ、全部は受け取れません。これは姉さんが清隆さんに託したものですから。好きな精霊を選んで下さい。残りをもらいますから。」
「・・・わかった。じゃあ、影精霊と黒騎士をもらうよ。」
「えっ、二体だけですか?」
「ああ。精霊使いの素養のない僕じゃ、多くの精霊を使うことはできないからな。」
「そうですか。」
清隆は刻印に魔力をこめ、友香に刻印の大半を転送する。清隆の手に刻まれた刻印はシンプルなものになった。
「・・・・あのさ、友香、一つ提案がある。」
俺はそういった。
「提案ですか・・」
「ああ。今度の秋の魔闘会、一緒に参加しないか?」
この提案は、清隆が唯一知っている巴を蘇らせるための手段だった。
「魔闘会?どうして・・?」
「魔闘会を優勝すると願いがかなえられるだろ。」
「あっ!優勝して、姉さんを蘇らせろと願えば・・・」
「そういうこと。まあ、返事は夏休み後に聞くから、じゃあね。」
「はい、夏休み後に。」
友香との話を終える。
そして、すぐに夏休みを迎える。
清隆は空港へと向かう。日本に帰るためだ。美雪はいない。帰るところがない美雪を実家に招くつもりだったが、勝手にアメリカにいき、命の危機にあったことが原因で仲違いしてしまったのだ。
ただ、隣には静香がいた。
「ねえ、清隆、ほんとに、天夏さんを連れてこなくて良かったの?」
「・・・いいんだ。無理やり連れていく気も勇気もないよ。」
「そっか、ならいいんだ。清隆が後悔してないなら。それよりも、早くしないと、飛行機が出発するよ。」
すると、静香がいきなり手を掴んで走りはじめた。
「あ、おい、静香?」
清隆と静香は急いで日本行きの飛行機に乗り込んだのだった。