アメリカの力
現れたのは、黒い装甲、赤い装甲にそれぞれ身を包んだユウジとヴェンだった。
顔までかくれている。サイズは人間サイズ。しかし、そこから出ている頼もしさは人間の域を外れていた。
「さあ、いくぜ、景虎」
ユウジはアルシオーネのもとへ接近する。
(速い・・・・・)
そう、ユウジのスピードは人間離れしていた。いくら、MRKを装備していたことを考えてもここまでの速さだとは清隆も想像していなかった。実際、ユウジの姿はとらえられなかった。
「うおおおおおおおおおおおおおおりゃ!」
目にも止まらぬスピードでアルシオーネを翻弄していく。アルシオーネの防御は間にあっていなかった。
ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
アルシオーネは確実に弱っていく。アルシオーネは腕を振り下ろし、ユウジを潰そうと試みたが、あっさりよけられてしまう。
「その程度か?うおおおおおおおおおりゃ」
ユウジはアルシオーネに会心の一撃を与える。
ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・
さらにアルシオーネは弱っていく。その動きは最初の威勢のいい動きではなかった。
「今だ、ヴェン、トドメをさせ」
「あいよ」
戦っているユウジの後ろでヴェンが槍にエネルギーを貯めていた。槍の先は真っ赤に染まっていた。
ヴェンは空高く浮遊する。それと同時にユウジが後ろに下がる。アルシオーネの動きは止まっているも同然の状態だった。
「じゃあ、お遊びはおしまいだぜ、魔獣ちゃん。でかいの一発くらって砕け散りな、はるか昔、神をも貫いた槍の一撃よ、今こそ、再び、悪しきものを貫く力を。我に示せ、神をも貫きし槍
」
ヴェンは槍の先から大量の魔力を感じさせる焔を放つ。その焔に対応できず、モロに受けるアルシオーネ。その肉体は一部は焼け消えて、一部は砕け散った。アルシオーネは粉々だった。
「なっーーーーーー」
「っーーーーーー」
「・・・・・・・・」
「圧倒的だ・・・・」
跡形もなく消えたアルシオーネ、さっきの戦闘を見て、
清隆、哲也、巴、エドガーは各々心の声を口にしてしまう。
(勝てるのか、あいつらに。今度、戦うことになったら・・・僕たちは・・・)
(これがアメリカ・・・・)
(強すぎる・・・)
特に清隆、哲也、巴の三人はただらなぬ危機感をユウジとヴェンに感じていた。
「どうした、清隆、いつまでそこにいるつもりだ」
「あっ、いや、すぐ行く。」
清隆はユウジに声をかけられ、自分の足が動いていないことに気づく。思っていた以上に動揺していたようだ。
(とにかく、今は兄さんの救出が優先だ)
清隆はきを引き締め直して歩き出す。
しばらく歩くと、アルシオーネより巨大な魔獣らしき影とそれと戦っている一人の人間の姿が見えた。
人間のほうは、次々に瞬間移動し、魔獣を翻弄していた。
「「「あれは・・・」」」
タイムラグのない瞬間移動魔術と、黒く少し長い髪を後ろで結わえている髪型が、三人の頭に一人の人物を思い浮かばせる。
その人物は宮野義隆。清隆の兄にして、ユウジとヴェンの同級生で二人が憧れている人物だ。
(今助けに行くから、兄さん。)
(やっと見つけた・・・)
(あとはとりあえず救出するのみだ)
三人は他の三人を置いて義隆のもとへ向かった。