訪問者
小鳥のさえずり、眩しい日差し。
自分の住む部屋ではない空間。
清隆は目を覚ます。
「ここは・・・」
清隆は辺りを見回す。
「ここは病院だ、宮野。」
声が聞こえる。清隆が声をする方へ向くと、そこには哲也がいた。
「杉並先輩・・」
「目が覚めたか、宮野よ。心配したぞ。三日も目を覚まさないと聞いたからな。」
「心配かけてすみません・・」
「いやいや、気にするな。」
「ところで先輩、妹さんはげんきになったんですか。」
「ああ。お陰様でな。今まで協力してくれたこと、感謝している。」
「いえいえ、僕も先輩のおかげで美雪を蘇らせることができたんですから、お互い様ですよ、先輩。」
「そうか・・じゃあ、そういうことにしておこう。で、ところで清隆、今度の魔闘会には参加するのか?」
「うーん、どうしよう。兄のことに関しては、前回、魔闘会で優勝したアメリカ校のチームが、兄を含む行方不明者をここに連れて来いっていう願い事をしたらしいんですけど、それができなかったらしいんですよ。だから、僕は目的もないので、今のところは保留です。」
「そうか・・たとえ目的がなくても参加する意味は十分あると思うぞ。楽しむって意味でな。それに俺たちは、優勝者だから、本戦のシード権もあるし、使わないのももったいないと思うが。」
「・・・考えておきます。」
「では、またな。安静にしているんだぞ。魔闘会に参加することになっても、その怪我じゃ、まともに動くこともままならないからな。」
そう言って、哲也は去って行った。
数時間後・・
病室の扉が開く。病室に入ってきたのは、美雪だった。
「清隆・・目、覚ましたの・・良かった‼」
美雪が清隆に抱きついた。
「良かったよ、清隆。このまま目を覚まさないじゃないかと思ったよ。」
「大げさだな、あれくらいじゃ死なないよ。」
「清隆・・」
美雪が清隆をさらに強く抱きしめる。
「イテテテテテ・・」
「大丈夫⁉清隆。」
美雪は清隆から離れる。
「僕は怪我人なんだから、ほどほどにな。」
「うん、ごめん。」
「ところで美雪・・」
清隆が話題を変える。
「なに?」
「この時間って、学校だろう。」
「・・・」
美雪は黙り込む。しばらく、沈黙の時間が訪れたが、美雪は少々暗そうに口を開いた。
「・・あのね、清隆。学校は魔獣の襲撃にあって、学校は半壊状態になって学校は休み。修復が終わるまで。」
清隆は唖然とする。そして、口を開く。
「教師陣もいたんだよな、その現場に・・」
「うん・・そうらしいよ。」
「教師陣がいて、学校を守れないって、学校を襲った魔獣ってそんなに強い魔獣だったのか?」
「うん・・清隆と私が戦った魔獣の親玉らしいよ。名前が確か・・
メローぺ・コバルト・エンペラーロードだったと思う。」
「メローぺ・コバルト・エンペラーロード・・」
清隆が名前をつぶやいていると、美雪がさらに話を続けた。
「でも、学校が半壊状態にあってのは、それだけじゃないんだ。」
「えっ?」
「教師陣の一部の人が、魔法による干渉を受けて、暴走して、仲間であるはずの教師たちを倒していったらしいんだ。それで教師たちをも何人かは病室送りに・・」
「人が暴走、重量級魔獣の大量出現・・これじゃあまるで、一年半前のワールドエンドと同じ・・」
二人は黙り込む。なんとなく何かを失いそうで。結局、美雪はすぐに帰っていった。
(休みか・・今のうちに怪我を治して早くアメリカ校に行ってみるか。)
清隆はなんとなく、アメリカ校にも危険がありそうで、怪我が治らないかと焦っていた。