今度は私が・・
今思えば、私はずっと守られてばかりだった。身体的にも精神的にも。
美雪は静香、メアリーの両者と戦う覚悟で剣を抜く。
今回は清隆に助けて貰わなくても自分の身は自分で守る。だって私はいつか清隆を支える存在になるのだから。いつまでも守られてばかりではいけない。私は、私は、清隆を守れるくらい強くなりたい。
美雪は瞬間移動魔術を使って静香の後ろに移動し、そのまま攻撃をする。
「蒼流剣!」
美雪は剣先に蒼い光を纏わせて、渾身の突きを放つ。だが・・
「巻き戻し!」
静香が魔法を発動する。すると、美雪が剣先に纏った蒼い光は消える。そして、美雪の渾身の突きは静香の剣によって受け止められる。さらに・・
「フェザーイーグル!」
メアリーが後ろから竜巻を放ち、美雪を吹き飛ばす。美雪はコンクリートの地面に叩きつけられる。
「う、うっ・・」
美雪はそれでも立ち上がる。
攻撃が静香に通らないなら、まずはメアリーから。
美雪は瞬間移動魔術を再び使用し、今度はメアリーの背後に移動し、再び渾身の突きを放つ。しかし・・
スカ・・
美雪が突きを放ったところにメアリーはいなかった。
「バレバレよ。」
メアリーは空に浮いていた。
「メアリーが、空に浮いてる・・」
美雪は驚く。
「どう、驚いた?これがローズ一族秘伝の魔法、空中浮遊よ。ここにいれば、あなたは攻撃できないでしょ。」」
メアリーは顔色一つ変えずにそう言った。メアリーのその言葉に美雪が口を開く。
「私は空にだって移動できるよ、メアリー!」
美雪は再度瞬間移動魔術を発動する。そして、空に浮いているメアリーの元へ移動する。
だが・・美雪の考えは甘かった。空で自由に移動する術がない美雪は真っ逆さまに落ちていく。さらに・・
「はあああっ!」
メアリーは黄色い光線を放ち、美雪にぶつけた。そして、美雪は再びコンクリートの地面に叩きつけられる。
「・・・」
あまりの痛みに美雪は動けない。これは生命保護魔法のない命がけの戦い。下手をすれば死ぬ。
美雪は解せなかった。
静香もメアリーも下手をすれば死ぬことはわかっているはず。いつもの二人ならどんなことがあろうとこんなことはしない。何が二人を責めたてたのか。それに二人の様子と雰囲気がいつもと違う。先日のメローぺ・コバルト発生と言い、いったいこの地で何が起きているのかということが。
そんなことを考えていると、静香が美雪に何かを語り始めた。
「私がここにきたのはね、天夏さん、あなたを殺すことだけではないの。」
「えっ?」
「私は清隆を殺しに来たの。」
「どうして?」
美雪は静香の衝撃の発言に驚かずにはいられなかった。
「私が清隆を殺すのは、清隆が私を振ったからよ。」
美雪は静香の発言、行動の全てががいつもと違うと感じていた。
今の発言は静香の本当の意思でないはずだ。美雪は知っていた。
静香は振られてもずっと清隆のことを想っていたことを。陰からこっそり清隆美雪を見ていたことを。
美雪は確信する。
静香とメアリーは何か、魔法の干渉などを受けているに違いないと。だが、美雪には細かいことまではわからなかった。
考えてもしょうがない、今わかっているのは、清隆が殺されそうなっていること。清隆を助けるのが私の仕事・・
美雪は立ち上がろうとするが、立ち上がれない。二人は美雪の前を過ぎ、病院内へ入ろうとしている。
「こ、このままじゃ・・」
美雪が必死で立ち上がろうとしたその時。
「う、うううっ・・」
「う、ぐはっ・・」
突然、メアリーと静香の後ろに現れた黒い精霊二人を斬る。そして、何処かへ吸い込まれるようにして消えていった。
吸い込まれた先には影が二つ。
一人はロングヘアの黒髪。一人は黒髪のサイドテール。
美雪はこの二人を知っていた。
清隆が私を蘇らせるのを手伝ってくれた、森園巴先輩と、その妹の森園友香だ。
「助けにきたぞ、美雪。」
巴の発するその声はとても頼もしかった。