Can't forget memory(キャント フォゲット メモリー)・剣道・後編
そして、決勝戦。
部員全員が見守る。清隆と神山は試合場の中心で蹲踞していた。
「始め‼」
審判の部員の声で試合が始まる。
神山は部員全員が見る限り完璧な構え。だが、清隆は構えにわずかな隙を見つけ、面を打ちにいった。
「メエエエエン!」
スカ。
清隆の面打ちはは宙を切った。
神山は清隆の面がくる前に半歩後ろに下がっていた。
な、読まれていたのか。いや、違う。これは部長お得意の直感。相変わらずのチート能力だ。
清隆は構え直そうとするが、遅かった。
「メエエエエンー!」
神山の竹刀が清隆の面にあたる。
「面アリ。」
旗が上がり、神山の面が決まった。
まだまだあまいな、宮野。次で終わりにしよう。
「始め‼」
清隆は再び突っ込んでいく。隙を見つけて。清隆は再び面を狙う。
ふん、また同じ手か・・つまらん奴だ。
神山は再び半歩後ろに下がる。
だが、清隆は途中で一瞬止まり、神山の位置を確認してから、瞬時に間合いを詰め、神山の小手を打つ。
「コテエエエエ!」
清隆の竹刀が神山の小手にあたる。
「小手アリ。」
審判の旗が上がり、清隆の小手が決まった。
よし、一本とったぞ。
清隆は心の中でガッツポーズをした。
ふむ、あのとまってからのフェイント、速いな・・私の直感が清隆のフェイント攻撃を感じ取れないなんて・・よほどあの動き洗練されている。成長したな、宮野。それでこそ倒しがいがある。
神山は思わずにやける。
「す、すごい試合・・」
私は見とれていた。二人の戦いに。攻撃の読み合い、そして、やられたらやり返す。そんな試合展開に心にたぎる思いを私は感じていた。
「勝負‼」
審判の声で試合が再開する。
一瞬の沈黙。そして、清隆と神山は同士に動きだす。
あの動きは小手を狙っている。だったら、こっちは小手からの面で決める。だが・・部長はそれを読むはず、おそらく全力の面あたりでこっちの小手を潰してくるだろう。・・だったら、小手を止める小手じゃなくて、返し技の小手を出して決める。
清隆の読みどおり神山は小手と見せかけて、面をうってきた。清隆はそこを小手で応じようとする。
だが・・
やはり、返し技の小手か・・だが、私は胴を狙っているんだ。
神山は竹刀の軌道を変え、胴を打ちにきた。
胴・・か・・読まれていたのか。だったら、一か八か面で胴より速く面を打つ・・
清隆も小手の体制から瞬時に面を狙いにいく。
「メエエエエン!」
「ドウオオオオオ!」
清隆の面は神山の面に、神山の竹刀は清隆の胴に同時にあたる。
一瞬の沈黙。そして、
「胴アリ!」
審判が神山に旗をあげる。神山の胴が決まったようだ。部員からも歓声が湧く。
「勝負アリ!」
清隆と神山は礼をして試合場から離れる。二人はそれぞれの元に向かう。
「部長、参りました。僕の完敗です。」
「いや、お前は強くなったよ。また強くなって来い!」
「はい!次は必ず勝ちます。」
こうして、部内戦は終わった。