黒騎士の想い
今日は休日。
しかし、清隆は学校にきていた。ここは、学園本校舎の任務掲示板である。この掲示板には、様々な依頼が書かれた紙が張り出されていて、生徒は休日になるとここへなってきて依頼をこなすのだ。報酬目当ての者、自分を鍛えたい者、様々な目的で依頼を受けている。清隆は、後者の方であった。清隆は、ある依頼に目を落とす。
助けてください
先日、友人がS村の森に出かけたのです。その友人が帰ってきたときボロボロだったのです。彼は、言ったのです。あの森には黒い馬に乗った黒い騎士がいると。私も近いうちにあの森に用があるのですが、このままでは森に近づけません。どうか、友人を襲った騎士の正体を見破り、倒してきてくれませんか。
トーマス
という内容だった。清隆は、その紙を手にとって歩き出した。が、いきなり後ろから抱きつかれた。
「ちょっと、巴さん、みんなが見てますって。」
清隆に抱きついてきたのは、巴だった。
「いいじゃないか、別に。もうみんな、私たちが付き合っていることは知っているんだから。それに清隆。さっきの物言いだと人がいなければ、抱きついてもいいということだな。」
「違いますし、別に僕達は付き合ってないです。」
と、会話をしたあと、巴が清隆の手にある紙をみていった。
「清隆、一人で依頼を受けにいくつもりだったのか。」
「はい、そうですが。」
と、清隆は巴の質問に答える。すると、巴が悲しい目をしてこういった。
「私は、悲しいよ。チームメイトで恋人でもある私をおいて1人で依頼を受けにいく清隆を見るのがとても辛い。」
「はあ、だったら、一緒に行きますか巴さん。」
「うん!」
清隆が誘うと巴は嬉しそうに返事をした。
そして、二人でS村にいる依頼人トーマスの元へ向かうのであった。
トーマスの元を訪れた清隆と巴は、トーマスに案内され例の森へとやってきた。なんだか昼なのに不気味な感じのする森だった。
「よし、行くぞ清隆。」
巴が森の中へ入っていくのを清隆も追いかけた。森へ足を踏み入れると黒いシルエットが奥に見えた。清隆は、黒い愛刀「闇帳」と白い刀「光線剣」を肩から抜き構える。巴も剣精霊テンペストを武器化した剣と細剣「閃光剣」を構える。そして、シルエットは、どんどん近付いて姿を表す。黒い馬に黒騎士。まさしく、清隆たちの探しているそれだった。黒騎士は、突然襲ってきた。
「黒騎士の闇槍」
闇を纏う突きが清隆を襲う。しかし、清隆はその瞬間黒騎士の後ろにまわっていた。
清隆の使用魔法「瞬間移動術」は、その名の通り自分の視界に入っているところへ自分を今の位置から移動させる魔法である。
後ろにまわった清隆は、宮野剣術2の型「踊る剣術」を放つ。右打ち、左蹴り、右の後ろ蹴り、右打ち、左打ち、最後に大きく相手に飛び込んでの突きの6連続の攻撃が黒騎士に命中する。黒騎士が清隆の攻撃を受け、後ろにふらつく。
「精霊剣術、氷柱斬り‼」
巴は黒騎士にできた一瞬の隙を逃さず、氷精霊「スノー」を剣に纏わせて攻撃する。
黒騎士はそれをくらって、さらにふらふらになる。
「まだ終わらん。」
黒騎士は一瞬で体勢を立て直し、魔法陣を展開し、大きな竜巻を起こす。
「ストーム・オブ・ラグナロク‼」
竜巻は清隆と巴を襲ってきた。そこで清隆はある行動を起こす。
清隆は、闇帳を天に掲げて静かに唱える。
「我が刀よ、汝の封印されしその力を解放せよ。我が名、宮野清隆の下に」
すると、闇帳は、艶がでて、周りが紫色に光る。清隆は闇帳の封印を解いたのだ。
「闇帳」
この剣は清隆の祖父が清隆に作ったもので、魔法を破壊する魔法「魔法破壊魔法」が使えるようになっている。しかし、この剣は力を解放したままだと、使用者の魔力がすぐに尽きるので普段は力を封じている。
清隆は闇帳で竜巻を切り裂く。黒騎士はそれから、竜巻を何度も起こすが清隆によって無効化される。
「ちっ、クソ、我が主の墓を破壊する人間供が・・この森を出ていけ!」
「お前は一つ勘違いをしている。」
「なに!主の墓に埋まっている財宝を掘り当てにきたんだろう。」
巴と黒騎士の対話が始まった。
「私たちは別に財宝目当てにここにきたんじゃない。私たちはある人の依頼で森を通る人の邪魔をするお前の討伐に来たんだ。」
「なに‼詳しく聞かせろ。」
「いいだろう。私たちはお前が数日前からこの森に来る人を片っ端から傷つけていて、怖くて、このままではこの森の先の街にいけないから、お前を倒してくれという依頼のもとここにきた、それだけだ。」
「なぬ、ここを通りたいだと。それだけか。じゃあ、先月の墓荒らしは何なんだ。」
「墓荒らし?」
「そうだ。先月、墓荒らしがやってきて今は亡き我が主の墓を壊し、財宝を盗もうとしたのだ。まあ、私が全員蹴散らしてやったがな。」
「主?」
「そう、主だ。私の主は結構名の通る魔術師で、私も精霊として仕えていた。だが、ある日、魔獣に襲われ、私の力不足によって主は死んんでしまった。私はせめてもの償いにこの森に墓を立て守ると誓った。私にはそれしか存在価値がないのだから。だが、私が休んでいる間にあいつらが主の墓を壊し、主の宝であり、この世界にも一つしかない伝説の剣、エクスカリバーを盗もうとしたのだ。私は主の墓を守れなかった悔しさと怒りでそいつらを斬り倒した。そして、そいつらには仲間がいること知って、私はそいつらの仲間も来ると思い、私はこの森に来る人々を斬り倒した。私はあいつらの仲間が全員倒すまで、この森に人は通さず、この剣を守り続ける。そして、奴らを全滅させたら主の剣とともに、この世を去る。」
黒騎士は仮面の中の目を赤く光らせて、自分の心のうちを巴に明かした。
「そうか・・お前って主人に忠実ないい精霊じゃないか。」
巴は黒騎士の話に感動を覚えていた。
ドドドド
森の入口から何やら騒がしい気配がする。
「この魔力の気配は・・前に主の墓を破壊した奴らと同じ・・」
「ふふふふ」
黒騎士の反応に対し、不気味な笑い声が聞こえる。さらに人の大群が、巴たちを含む黒騎士の前に現れる。
「あなたが例の黒騎士。あなたは私の仲間を魔法使用不可能の状態まで追い込んでくれました。私たちはその復讐をあなたにしなければならないのです。そのために今回は組織の人間全員連れて来ました。いくらあなたでも、これでは私たちに勝てませんよね。覚悟なさい。あなたを倒して、財宝もいただきますよ。」
この大群のリーダーと思われる男はそう言った。
「何人いようと関係ない。」
黒騎士はやる気だ。
「お前、取引しないか。」
巴は黒騎士に取引を持ちかけた。
「こんな大群、一人では無理だ。私も手を貸す。ここでこいつらを一人残らず倒せば、お前の目的も果たせる。それでだ。この大群を全員倒したら、私と契約して、精霊として、私に仕えろ。私がお前に存在価値を与えてやる。」
「いいだろう、こいつらさえ、倒せればなんでもするさ。」
黒騎士は巴の持ちかけた取引に応じた。
巴が剣を構える。黒騎士は槍を構える。清隆も二本の剣を構えようとすると、巴はそれを止めた。
「清隆、これは私たちの戦いだ。今回は下がってくれないか。」
「・・わかりました。」
清隆は剣をしまう。
「ほほほほっ、そこのお姉さんも私たちに刃向かうのですか。なら、容赦しませんよ。総員、突撃‼」
大群は一斉に黒騎士に向かって攻撃する。近距離で戦う者、遠距離魔法で攻撃する者、様々な者がいた。
「ストーム・オブ・ラグナロク‼」
黒騎士は攻撃してくる人々を竜巻で吹き飛ばす。しかし、全員が吹き飛ばされたわけではない。
「これで終わりだ、黒いの‼」
竜巻に耐えたある男が黒騎士の不意をつき、槍で攻撃する。
「くっ・・・」
不意をつかれ、さらに巴たちとの戦闘で傷ついた黒騎士はその攻撃に反応できなかった。
しかし、
「させない。」
黒騎士に攻撃しようとしていた男を巴が剣で突き、その男は倒れる。
「う、うっ。」
「大丈夫だ、死ぬほどじゃない。」
それから、巴は大群を一人で倒した。そして、例外なくリーダーも。
「くっ、くそう。もう、こんなところ、ごめんだ。こんなところ、来ない。」
リーダーは地面に這いつくばりながら、そういった。
「それがいい。」
巴はリーダーを剣で突く。
「う、うがっ。」
リーダーは気絶する。
「死にやしないさ。」
巴はつぶやく。
そして、契約の時。
「あなたは約束を果たしてくれた。私も約束を果たそう。」
黒騎士はそういって、森の奥の黄金の剣を破壊した。
「さよなら、エクスカリバー。お前も主人のもとでおやすみ。」
「いいのか、あれは・・・」
「いいんだ。あれがあったから、主の眠るこの地に奴らのようなものたちが来たんだ。たとえ、主の形見の剣でも主の眠る地を荒らしたことに変わりはないのだから。それに主の形見があると、新しい主に仕える邪魔になるからこれで良かったんだ。」
「そうか、でははじめるぞ。契約を。」
「構わん。」
「汝、我が名、森園巴の下に仕えよ。また、契約の印に汝の刻印を刻めよ。」
黒騎士に魔法陣が展開され、巴の左手の刻印へと黒騎士は吸い込まれ、新たに刻印が刻まれた。
こうして、この森の事件は幕を閉じた。