Can't forget memory(キャント フォゲット メモリー)・二人の出会い
私こと、天夏美雪が中学二年生の春。私は清隆と出会った。
私はこの春、この地、埼玉県、春日部市にやってきた。そう、私は編入生である。
私が道に迷い、適当に歩いていると、一人の同い年くらいの男子が目の前を通りかかる。と思ったらすぐにその男子は視界から消えた。
「ぐほっ・・」
その男子は遥か遠くの電柱にぶつかっていた。
速い・・・速すぎる・・
私はそう思った。人間の速さではない。あの男子は一瞬消えた気がする。まさかとは思うが、よくアニメに出てくる魔法とかというやつなんだろうか。なんか意外と予想があったいるかもしれない。男子はなんかばれてしまったかのような顔をしている。
「今の・・見た・・」
男子は美雪にきいてきた。美雪は素直に
「うん、見たよ。」
と答えた。
男子はますます顔が青ざめている。
「あの、君、その制服、春日部市立桜花中学校の生徒だよね。あの、このことは学校のみんなには黙ってくれないかな・・」
「このことって?」
「僕が瞬間移動の魔法を使ったこと・・はっ、しまった。」
男子は慌てて口をふさいだ。
私は「魔法」ということばが気になった。
「ねえ、魔法って?」
「うぐっ・・」
男子は辺りを見回し、誰もいないことを確認する。
「誰にも言わない?」
男子はそう聞いてくる。私は魔法っていう言葉の意味が知りたかったので即座に
「うん。」
といった。すると、男子は息を深く吸ってから話し始めた。
「僕の家族はみんな不思議な能力、すなわち、魔法が使えるんだ。当然、僕にも不思議な能力があるんだ。」
「不思議な能力?」
「そう、不思議な能力。僕は視界に入っている範囲ならどこにでも移動できるんだ。ほら。」
男子は美雪の背後に一瞬で移動する。
「えっ・・⁉」
美雪は今のできごとが信じられなかった。
「今のが、さっき君が見た現象の正体だよ。でも、さっき、電柱にぶつかってしまったようにまだこの能力、瞬間移動の魔法をコントロールできないんだ。」
「・・へえー。」
「これですべて話したからね。このことは他の人には言わないでね。」
そう言って男子はその場を去ろうとする。
ガシッ
だけど、私は男子の腕を掴み、その歩みを止めた。
「な、なに。」
「私さ、実は今日から春日部市立桜花中学校に編入なんだけど、道に迷って道がわからないんだよ、私を学校まで案内してくれないかな?」
「案内?うん、いいよ。ところで君、名前は。」
「私は天夏美雪、中学二年生。」
「僕と・・同じ学年か。僕は宮野清隆。ちなみに男子剣道部所属。」
「よろしくね、清隆。君とは何となく、いろいろと縁がありそうだし、ファーストネームで呼ばせてもらうね。」
「構わないよ、じゃあ、僕も君のことを美雪って呼んでいいかな?」
「いいよ。」
清隆は少し微笑んで、
「じゃあ、行こうか、学校へ。」
と言って歩き出した。
これが私と清隆の出会いだった。