私も一緒に
周辺の家が燃えている。
ウゴゴゴゴゴ
魔獣の姿、怯える人々。清隆と美雪は悲鳴が聞こえた方へ駆けつける。清隆と美雪は改めて魔獣の姿を確認する。
「「・・・っ⁉」」
二人は慄然とする。青く艶のある固そうな皮膚に、尖った両手、顔の中心にある赤い一つの目。二人が見たのは、一年半前の大事件、ワールドエンドで二人を襲って美雪を死に追いやった魔獣だった。
「あれは・・・メローぺ・コバルト・・!」
「メローぺ・コバルトって・・何?清隆。」
「前に美雪を死に追いやった魔獣、おそらく、今目の前にいる魔獣の名前だよ・・」
「・・・」
二人にのしかかるのは、一年半前の恐怖。殺されるかもしれないという怯えだった。
「清隆、逃げよう・・」
美雪が清隆のコートの裾を引っ張ってくる。
「う、助けて、死にたくないよ。」
今にもメローぺに殺されそうな少年の助けを求める声が聞こえる。
「美雪・・ごめん、一人で逃げてくれ。僕はもう、自分の目の前で意味もなく人が死んで行くのは嫌なんだ。助けられるのに助けないのはもっと・・」
清隆は美雪の手を振りほどき、少年の元へ走っていった。
メローぺの拳が少年に襲いかかる。
「やだよ、まだ死にたくないよう。」
少年は泣き出した。だが、無情にもメローぺの拳は止まらない。メローぺの拳が少年にあたる瞬間、
キィーン
一本の剣とメローぺの鋼鉄の拳がぶつかる。
清隆が少年の前に現れる。
「大丈夫?」
清隆は少年に声をかける。
「うん、助けてくれてありがとう、お兄ちゃん。」
少年は清隆にお辞儀をしながら礼をいう。
「ここは危ないから、早く逃げて。」
「うん、本当にありがとう。」
清隆の言葉通りに少年はこの場を離れていった。
ありがとう・・この言葉で清隆は救われた気がした。一年半前、自分が守れなかった人々の分まで今ここにいる人の命を守りきろうと清隆は思った。
ウゴゴゴゴゴゴ
メローぺは清隆に拳を繰り出す。
キィーン
清隆はそれを再びSG28で受け止める。だが、メローぺの拳はどんどん重くなっていく。
「くっ、重い・・」
清隆は鞘から夜空も取り出して、二本の剣でメローぺの拳を止める。
ウゴゴゴゴゴ
メローぺの拳はまだ重みをましていく。清隆は拳を何とか止めるのに精一杯で瞬間移動魔術も使うことが出来ず、この状況は変わらない。
「くっそ、このままじゃ・・・」
二本の剣が拳におされていく。
「ブルーテンペスト‼」
ウゴゴゴゴゴ
遠方から放たれた青い閃光がメローぺに直撃し、清隆はメローぺの拳から解放される。
「もう、清隆ったら、一人で勝手にいっちゃって。さっき言ったばかりでしょ、清隆一人に命の危険にさらさせるわけにはいかないって。」
「美雪・・・こいつは危険なんだ、早く逃げて。美雪は魔獣との戦闘の経験がないだろう。そんな人が戦えるやつじゃない。」
「さっきから経験、経験って。清隆がそんなこと言ってたらいつまでたっても経験積めないよ。それに私がここにこなかったら清隆、危なかったでしょ。私は清隆一人に命をかけさせたくないの。私も一緒に戦いたい」
「・・・わかった。一緒に戦ってくれる。だけど、一つだけ。死ぬなよ。」
「わかった。清隆も無茶しないでね。」
清隆と美雪はメローぺの前にたち、剣を構える。