異変の予兆
アラスカのすぐ北の人工島、ロストヘブンにて。
「くっそ、やはり倒せないのか・・」
ウゴゴゴゴゴゴ!
紫色の甲冑に身を纏った、4mくらいの頭がドクロの魔獣が鳴く。
ドクロの魔獣は義隆に攻撃をしかける。義隆に襲いかかる六つの手。
義隆は腰につけている鞘つきの剣に手を触れる。
「リミッター解除、S 零式」
剣が鞘から離れ、義隆の手に飛んでくる。義隆はその剣を掴んで構える。
「うおおおお‼」
義隆は襲いかかる六つの手に向かっていく。そして、六つの手を華麗な剣さばきで斬り落としていく。
ウゴゴゴゴゴ
魔獣は口から魔法陣を展開させる。
「・・っ⁉」
義隆は嫌な予感を感じる。そして、義隆は足元に魔法陣を展開させ、魔獣の背後に瞬間移動する。
「形態変化!」
S零式は剣から片手用銃へと形態を変化させた。そして、放たれる一撃。
「G・f!」
銃口から紫色の光線が放たれ、魔獣に直撃する。だが、魔獣は無傷だった。
「クソ、効かないのか。」
ウゴゴゴゴ
魔獣は足から魔法陣を展開させ、赤き光線が放たれる。
「速い・・・ぐはっ・・」
義隆は対応出来ずにその光線を受ける。義隆はボロボロだ。
「・・・退却するしかないか・・」
義隆は魔獣から素早く逃げていった。
その頃の清隆と美雪は・・・
「綺麗・・・」
「気に入ってもらえたかな、この学校の屋上。僕のお気に入りの場所なんだ。この時間の夕日に照らされている時計塔が綺麗なんだ。」
「うん、とても気に入ったよ。この場所。いつまでも見ていたくなるよ。」
「ああ・・・」
やがて日が暮れる。
「美雪・・・そろそろ帰ろうか。」
「うん、そうだね。」
二人の手は自然に繋がれる。そして、二人は家路に向かっていった。
そんな二人を見ていた人物がいた。葛木静香だ。
「清隆・・良かったね。美雪ちゃんとまた過ごせるようになって・・今の清隆、生き生きしてる。清隆が明るいのは私もとても嬉しいけど・・私の気持ちは清隆に通じないのかな、もう・・」
静香は寂しいそうに帰っていく二人をいつまでも見ていた。
幸せの下には常に大きな犠牲がある。犠牲の上に幸せがある。幸せは犠牲によって生まれる。清隆の今の幸せも静香の心の痛みや魔闘会に参加して負けた人々の願いの犠牲の上に立っている。清隆はまだ、その犠牲が自分に返ってくることを知る由もなかった。