準決勝、哲也の戦い
いよいよ、準決勝。
対戦相手はトルコ代表「ジ・メタルメタル」。
今回のステージは草原ステージだ。
清隆たちは、控え室ににて、対戦方法を選択中だった。
「今回は 俺に戦わせてくれ。」
と哲也は言う。
「じゃあ 、1vs1を狙うんですよね。どれを選択しますか。」
「宮野、1vs1で頼む。今回はこれでいい気がする。」
清隆はボードの1vs1を選択する。数分して対戦方法が決まる。両チームの一致で1vs1に決まった。哲也はステージに向かう。
「頑張れよ、杉並。」
「負けないでくださいね。」
巴と清隆の呼びかけ。哲也もそれに応じる。
「負けないさ。この大会には、明日香の命がかかっているんだ。」
哲也は二人にそう告げ再び、歩みを進める。
ステージの中央に立ち、対戦相手と向かい合い握手を交わす。
「俺は、杉並哲也。よろしく。」
「私は、エリック・フォン・アライブだ。よろしく、哲也。」
お互いに自己紹介を済ませ、それぞれの立ち位置に向かう。
そして、カウントダウンが始まる。
「3、2、1、0。始め。」
試合が始まった。エリックが哲也に向かって走る。哲也は2丁拳銃を取り出し構え、
「光速の銃弾」
エリックに光速の銃弾を放つ。
「はああああ。」
エリックは魔法陣を自分に向かって展開する。その瞬間銃弾がエリックに直撃する。しかし、
カンカン。
エリックの体に直撃した銃弾は鈍い音を鳴らし、その場に落ちる。エリックは無傷だ。
エリックは哲也の攻撃を全く気にしないかのように哲也に向かって走る。哲也は危機感を覚え、「全てを見通す眼」を発動させると同時に、2丁拳銃を二本の剣に変える。エリックは哲也のすぐそばまでやってきて、哲也にパンチの連続攻撃を繰り出す。
「おらおらおらおら‼」
「はあああああああ‼」
哲也も、全てを見通す眼でパンチの軌道を読みすべてのパンチを剣で捌く。
しかし、ここでも不自然な点があった。
カンカン。
剣でパンチをとめているので、パンチを繰り出しているエリックの手は傷ついているはずだが、エリックの手には傷一つない。それに
ただのパンチなのに受け止める時に剣と剣を交えたような音がする。
哲也はエリックの謎の正体に気付く。
「はっ、エリック、お前、硬化の魔法を使っているな。」
「ご名答。よく気づいたな。」
お互いに言葉を交わし、それぞれ距離をとる。
「硬化」
これは自身を鋼鉄のように硬くする魔法である。また、硬さは使用者の魔力量によって、変わる。
哲也は考える。
威力のない技ではエリックに勝てない。でも威力が凄くても避けられたら意味がない。どうすればよいのか。
哲也に一つの案が浮かぶ。
哲也は一度だけ相手の魔法を封じる方法があった。それは「闇帳弾」
これは哲也が、アメリカ戦で砕けてしまった清隆の愛刀である闇帳の破片からつくった銃弾である。これを魔法の発信源に撃ち込めば、魔法破壊魔法が発動し、その魔法の発動を無効にできるものだ。しかし、弾は一発のみ。失敗は許されない。
哲也は二本の剣を2丁拳銃に戻す。そして、すぐに銃弾をエリックに撃つ。魔法を使っていないただの銃弾。
カンカン。
当然、エリックには効かない。だが、これでよかった。この銃弾はエリックを近くまでよせる囮に過ぎない。囮にわざわざ魔力を消費することはない。
「はああああああ‼」
エリックは再び哲也に襲いかかる。先ほどより拳入りが速く、哲也は拳銃を剣に変えることが出来ず、エリックのパンチの連続攻撃を拳銃でガードする。だが、
「っ・・・⁉」
拳が哲也の拳銃を砕いた。しかも、2丁同時に。哲也はエリックの拳を退ける手段を失った。そして、エリックの拳が哲也の腹をえぐる。さらに哲也は吹き飛ばされる。
「ぐはっ。」
哲也は腹をかかえながらも立ち上がる。しかし、エリックがそこに再び襲いかかる。
「おらおらおらおらあ‼」
さっき同様、パンチの連続攻撃が哲也に迫り来る。だが、哲也はパンチの軌道を読めてもそれ退く手段はなく、よけるだけの身体能力もないため、攻撃を受ける。
「ぐはっ、うっ。」
「おらおらおら、その程度かテツヤー」
「ぐへっ、ぐほっ。」
哲也は頬に拳をくらう。哲也は後ろに退く。哲也は立っているのがやっとだ。それでも、哲也は予備の拳銃を一丁取り出し、そこに闇帳弾を装填する。
「なにをしても無駄だ、これでお前は終わるんだからなあ。」
エリックの口調もすっかり変わり、哲也にとどめの一撃を与えようとする。
「灼熱の鉄拳‼」
炎を纏った拳が哲也に襲いかかる。
「まだ、俺は・・俺は・・終わらない、明日香を救うまで‼」
哲也は素手でエリックの炎の拳をとめる。さらに哲也は素手でエリックの拳をとめつつ、拳銃の銃口をエリックに向ける。
「なにをやっても無駄だ、哲也。下手な足掻きはよせ。」
「じゃあ、試してみるか、エリック。」
「ああ、やってみろよ。その攻撃が効くかをなあ。」
哲也はエリックに闇帳弾を撃ち込む。
「・・・・」
「・・・・」
一瞬の沈黙。
そして、
「うっ、なんで、攻撃が通るんだ。さほど威力のないただの銃弾なのに。何をした、テツヤー‼」
エリックに攻撃が通り、エリックは痛みで腹を抱える。
なお、このフィールドも生命保護魔法、ホーリーフィールドによって、出血もせず、ここで死ぬことはない。
「簡単なことさ。俺はお前の硬化を無効化したのさ。さっき撃ち込んだ銃弾の能力、魔法破壊によってな。もう、使えないがな。」
哲也はエリックの質問に答えた。
「なるほどな。だが、もう一度、硬化を使えばいいだけさ。お前の話が本当なら、もう、私に対抗する手段はないのだからな。」
エリックはそう言うと再び、硬化を発動させる。
「おらおらおらあ‼」
そして、エリックは哲也に拳をふるう。哲也もそれに応じるように拳銃を一本の剣に変えて、拳をとめる。哲也はさっきとは違う違和感を覚える。
「エリック、硬化が弱まっているぞ。」
「何を‼そんなことはない。」
「どうかな。」
哲也は剣の形状を変える。そして、その剣に全ての魔力を集中させる。そして、哲也の使える最大威力の魔法を発動させる。
「未来を断つ剣撃‼」
光り輝く剣がエリックを斬りつけた。さらにフィールドも地割れが起きていた。
「なぜだ・・なぜ、攻撃が通るんだ。」
エリックは斬られた腹を抱えながら、哲也に問う。
「簡単さ。お前の魔力が弱って、最初ほど硬さがなくなったからさ。」
哲也もエリックの問いに答える。そして、エリックは気絶する。エリックに瀕死判定が出される。
「この試合はソードダンサーズの勝利です。これにより、Bブロック決勝進出チームはソードダンサーズになりました。」
結果報告のアナウンスが流れる。それと同時にギャラリーからも歓声が湧く。
「杉並様、最高‼」
「哲也さん。応援してます。」
などの主に女性の黄色い声が聞こえる。哲也も手を振ってそれらに応じる。
とうとう、ソードダンサーズは決勝までやってきた。清隆、巴、哲也の三人は改めて気持ちを引き締めるのだった。