清隆の祖父、宮野剣術奥義・始
その夜、清隆宛てに匿名での手紙が届いて、清隆はその手紙に記してあった相手との待ち合わせ場所である日本エリアのとある広場に向かっていた。
清隆が広場に着くと、驚きの人物が清隆を待っていた。その正体は清隆の祖父にして、清隆に宮野剣術を教えた人であり、宮野剣術3代継承者、宮野峰隆である。
「おお、待っていたぞ、清隆、お前もきちんと鍛錬しているようで安心したぞ。とりあえず、一回戦突破おめでとう。」
「見ていたのか、じいさん。」
「まあな。」
それから、峰隆はしばらく沈黙し、それから、表情を変えて話を始めた。
「清隆、知っているか、お前らの次の相手は両チームドローでの敗北で不戦敗だ。ということは、わかるな。」
「ああ、次の対戦相手はアメリカ代表「マシンナーズ」か。いよいよなんだな。」
「そうだな、しかし、相手は強豪アメリカ。
このままではおそらく勝つのは困難を極めるだろう。」
「じゃあ、どうするんだ。」
「ほっほっほ、だから、ワシが清隆、お前に新たな剣術を伝授しよう。」
「それって、宮野剣術か、でも、宮野剣術はすべてマスターしたはずだ。」
「確かにこれから教えるのは、宮野剣術だし、お前はすべての宮野剣術をマスターした。しかし、ワシがこれから教えるのは、ただの宮野剣術ではない。その名も宮野剣術奥義」
「宮野剣術奥義・・・」
「この剣術は魔法をしようする。また、型は一つではない。相手の両チームドローでの敗北で不戦敗のため、お前らは二回戦は不戦勝で、幸い、明日、明後日と試合はない。この期間に覚えもらう。その名も「宮野剣術奥義・始」じゃ。絶対に覚えてもらうからな。」
「いいだろう、じいさん、受けて立つぜ。」
翌日から峰隆による特訓が始まった。
「まずはワシが見本を見せよう。宮野剣術奥義・始!!」
峰隆は剣に魔力を込めて纏う。纏った魔力はだんだんと剣先に集まって一粒ほどの光となる。そして、近くにあった鋼鉄の壁を突く。すると、青い光が辺り一帯を灯し、鋼鉄の壁は簡単に砕かれる。
「始は魔力を一点に集中させ、一気に放つことで魔力を何倍にも増幅し、鋼鉄をも砕く破壊力を得る。また、この技のいいところは魔力をあまり使わないところだ。習得すればきっと、お主の力になるだろう。さあ、やってみろ!」
「はあああっ!」
清隆は愛刀、闇帳にありったけの魔力を込めて、剣先にその魔力を凝縮していく。しかし、
パンッ!
と突然魔力の塊が破裂した。
「清隆、魔力を込めすぎだ。もう少し込める量を減らしてみろ。」
「ふう~」
清隆は一息いれ、魔力の量を減らして闇帳に魔力を込めて、剣先に魔力を凝縮していく。しかし、今度は魔力の塊が途中で消えてしまった。
「清隆、魔力を減らしすぎだ。程よくだぞ、程よく。」
それから、清隆は何回も失敗し、一日がすぎ、二日目の夜になってもまだ始を習得できないでいた。
「くそっ。」
「清隆、明日は試合だ、疲れが溜まって本調子がでないなんてことがあっても困る。だから、次で最後だ。」
「わかった・・」
清隆は、様々な思いと共に魔力を込める。
この技ができなかったら、負けて終わるかもしれない。兄の行方は聞けないし、美雪の最後の言葉を受け止めることも許しも得ることなどできなくなってしまう。それに先輩の妹さんの命もかかっているんだ。負けたくない負けたくない。
「負けたくないんだあー」
清隆は剣先に一粒ほどの魔力を灯し、それを灯した闇帳で鋼鉄の壁を
突く。すると、鋼鉄の壁は砕かれる。
「やった、完成だ、じいさん。」
「よくやったな、清隆。これで明日試合も期待できそうだ。」
こうして、アメリカ代表「マシンナーズ」戦前日、清隆は宮野剣術奥義・始を習得した。