哲也の願い
清隆は静香と途中で別れたあと、帰り道、広場の隅で哲也が何度も魔法を放っている姿を見た。清隆は哲也のもとへ駆け寄って話しかける。
「杉並先輩、何をしていたんです?」
「ああ、宮野か、ちょっと新しい魔法の特訓をな。」
哲也が魔法を放ったと思われる場所は地面が真っ二つに割れていた。
「・・・すごい魔法ですね。先輩!」
「ああ、そうだろう。でも、こうでもしなきゃ魔闘会で優勝することはできない。今回が最後のチャンスなんだ。じゃないとあいつは死んでしまう。」
「・・⁉。先輩、最後のチャンスって、あいつってなんですか。」
「ああ、いや、なんでもない。」
哲也は清隆の言葉に動揺しつつ、ごまかした。
「ごまかすなよ、先輩。僕たちはチームメイトでしょう。最後のチャンスってなんですか、あいつって誰ですか。教えてください。」
清隆の言葉を聞いた哲也は、一息ついて、語り始めた。
「俺には妹がいる。妹の名前は明日香、杉並明日香。明日香は生まれつき魔力が弱く、魔法が使えなかった。俺は明日香には魔法が使えなくてもいいから、普通の女の子として生きてくれればそれで良かった。でも、それを俺の両親は許さなかった。そして、4年前に両親は明日香にある儀式を施した。魔力増加の儀式だ。だが、俺の両親は儀式に失敗し、明日香は植物状態になった。そして俺の両親は植物状態になった明日香を殺そうとした。
それを俺はなんとかとめて、俺が幼い頃からよく俺たち兄妹の面倒を見てくれていた、おじを訪ねて家を出た。おじの家系も魔法使いの一族なので、すぐに明日香が植物状態になったわけを理解してくれた。さらにおじは魔法専門の病院を紹介してくれた。場所はイギリスのロンドン。俺はイギリスに親戚がいないし滞在面が心配なのと、明日香をどうやってイギリスに連れていくかもわからなかった。だが、それはすべておじが解決してくれた。おじがイギリスの友人を紹介してくれた。さらにおじが紹介した病院には魔法専門の病院がない国にあちらの職員が現地にやってきて患者を病院まで運んでくれるサービスがあるという。早速、おじがサービスの手続きとイギリスの友人に連絡をしてくれたおかげですべての準備が整った。半日後、イギリスの魔法専門の病院の職員のかたがやってきた。魔法の力だろうか、驚異的な速さだった。
数日後、俺はイギリスに旅立った。今でもおじには感謝しても感謝しきれない。そして、俺はイギリスに着き、おじの友人を訪ねた。
おじの友人は、マイク・デイビスといった。
マイクさん50代後半で一人ぐらしで3年前に奥さんを亡くしてしまったらしい。マイクさんは俺を温かく迎えてくれた。そして、今でもマイクさんの家で暮らしている。一方、明日香は病院で精密検査を受けたり、治療したりしたが一向に目を覚ます気配がなかった。それから、半年後、俺は魔法科高校で開かれる魔闘会のことを知った。本戦で優勝すれば願いを叶えられることも。俺は願いを叶えて、明日香の植物状態を解こうと考えた。俺はそれから、マイクさんに武器交換を教わり、魔法科高校の過酷な入学試験に合格し、今ここにいる。俺は明日香の植物状態を解くために魔闘会に参加しているんだ。だが、ドクターの話しでは明日香の余命はあと一ヶ月ちょっと。だから、この大会で優勝しないと明日香は死んでしまう。」
「・・・先輩にそんな過去が・・」
清隆はそうつぶやいて哲也に自分の手を差し伸べる。
「妹さんのために優勝しましょう、先輩!」
「ありがとう、宮野。絶対、優勝しような。」
哲也は清隆の手を握って握手をした。こうして二人は絆を深めた。